(旧版)これで治す最先端の頭痛治療 「慢性頭痛の診療ガイドライン」市民版
|

片頭痛の病態として、セロトニンという脳内の神経伝達物質が深く関係していることは1960年代から指摘されていました。当初は血液の血小板中に存在するセロトニンが、片頭痛発作時に大量に放出され、やがてそれが消失することにより血管が拡張して頭痛が発症するという「血管説」が有力でした。
セロトニン受容体(受け皿)はいろいろな種類がありますが、最近は1Bと1Dというセロトニン受容体が片頭痛の発症に深く関係していることがわかってきました。
片頭痛の病態仮説としては「三叉神経血管説」という説が有力です(図12)。この説は1984年にモスコビッツが提唱しました。この説によりますと、なんらかの刺激で頭蓋内血管に分布する神経終末が刺激され、血管作動性物質が放出され、血管が拡張し、無菌性の炎症が引き起こされます。このような反応が次々に血管を広がっていきます。この刺激による興奮が脳に伝えられて悪心・嘔吐などの反応や頭痛を起こすという説です。
片頭痛治療薬のトリプタン系薬剤はセロトニン受容体の1Bに作用して拡張した血管を収縮させ、神経のセロトニン受容体の1Dに作用して血管作動性物質の放出を抑制することによって、片頭痛の症状を消失させる薬剤なのです。
図12 三叉神経血管説による片頭痛発生の仕組み |
![]() |