(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン (改訂第2版)
第5章 予後
■ Clinical Question 2
保存的治療と手術的治療による予後の差はあるか
要約
【Grade B】
保存的治療と手術的治療を比較すると,臨床症状に関しては手術的治療のほうが長期的にも良好な成績を示すが,10年後にはその差は減少する.
【Grade B】
数週間疼痛が持続した症例を対象として,保存的治療を継続してみた群と早期に手術をすすめた群とを比較すると,長期的には差が認められない.
背景・目的
腰椎椎間板ヘルニア患者で手術にいたる大多数は,急性馬尾麻痺を呈した場合のような絶対的な適応ではなく,腰痛や下肢痛が遷延し治療期間が長期にわたった場合などの相対的な手術適応の場合である.したがって,保存的治療と手術的治療を選択した場合の長期成績の差を明確にしておく必要がある.
解説
保存的治療と手術的治療とを比較した最初のRCTの報告(DF04151,EV level 2)では,比較的軽症な126例を2週間の臥床の後,保存的治療と手術的治療の2群に分けている.保存的治療割り付け群66例のうち17例(28%)が疼痛のために1年以内に手術が施行され,手術割り付け群60例のうち1例(2%)は手術を拒否していた.割り付けどおりに比較しても,術後1年の患者満足度における良好例の比率は手術的治療では65%,保存的治療では36%であり,手術群が有意に優れていた.しかし4年後では手術群のほうがやや良好であるが有意差はなく,10年後ではほぼ同等であり,長期的には手術的治療と保存的治療に差がなかったとしている.しかし1970年に施行された古典的なRCTであり,術式,保存的治療内容,評価法も現代とは異なっている.
前向きコホート研究でも同様な結果が出ている[(DF00294,EV level 5),(D2F01932,EV level 5)].3ヵ月以内の初期治療として手術選択例と保存的治療選択例との成績を比較した報告によれば,手術的治療群のほうが当初の症状が重く機能的にも低いにもかかわらず,腰痛と下肢痛のうち主たるものの改善する頻度は5年後では手術的治療70%,保存的治療56%で手術的治療のほうが良好であったが,10年後には手術群で69%,保存群で61%であり有意差はなく,経年的には差がなくなる傾向があったとしている.しかし,著しく改善,または完全に消失した頻度は手術群で56%,保存群で40%であり,また現状に対する満足度も手術群の71%,保存群の56%が満足と回答しており手術群が有意に良好であったとしている.最近の多施設前向きコホート研究でも同様に,手術的治療群のほうが当初の症状が重症であるにもかかわらず,長期的には保存的治療より成績良好であった(D2F01309,EV level 5).
手術には即効性があり,経年的には保存的治療との差が減少するものの長期的にも保存的治療よりは成績良好といえる[(D2F01977,EV level 3),(DF01998,EV level 1),(D2F02248,EV level 2)].しかし,短期間の保存的治療が無効であった場合には手術をすすめるべきとまではいえない.数週間の保存的治療で軽快しない症例を対象として保存的治療継続と早期手術とを比較した3つのRCTでは,長期的には早期手術割り付け群と保存的治療継続群との差はなく,保存的治療継続割り付け群には治療効果が乏しく結果的に手術を選択した症例が約半数存在したが,これらと早期手術割り付け群との差も認められないとしている[(D2F02248,EV level 2),(D2F00806,EV level 2),(D2F01977,EV level 3)].手術成績は下肢症状の期間と関連するとした報告は数多く存在するものの,保存的治療の効果の見極めを短期間で行い手術を急ぐ恩恵は小さいと考えられる[(D2F00613,EV level 5),(DF00394,EV level 5),(D2F00613,EV level 5),(D2F00821,EV level 5),(D2F01977,EV level 3)].
前向きコホート研究でも同様な結果が出ている[(DF00294,EV level 5),(D2F01932,EV level 5)].3ヵ月以内の初期治療として手術選択例と保存的治療選択例との成績を比較した報告によれば,手術的治療群のほうが当初の症状が重く機能的にも低いにもかかわらず,腰痛と下肢痛のうち主たるものの改善する頻度は5年後では手術的治療70%,保存的治療56%で手術的治療のほうが良好であったが,10年後には手術群で69%,保存群で61%であり有意差はなく,経年的には差がなくなる傾向があったとしている.しかし,著しく改善,または完全に消失した頻度は手術群で56%,保存群で40%であり,また現状に対する満足度も手術群の71%,保存群の56%が満足と回答しており手術群が有意に良好であったとしている.最近の多施設前向きコホート研究でも同様に,手術的治療群のほうが当初の症状が重症であるにもかかわらず,長期的には保存的治療より成績良好であった(D2F01309,EV level 5).
手術には即効性があり,経年的には保存的治療との差が減少するものの長期的にも保存的治療よりは成績良好といえる[(D2F01977,EV level 3),(DF01998,EV level 1),(D2F02248,EV level 2)].しかし,短期間の保存的治療が無効であった場合には手術をすすめるべきとまではいえない.数週間の保存的治療で軽快しない症例を対象として保存的治療継続と早期手術とを比較した3つのRCTでは,長期的には早期手術割り付け群と保存的治療継続群との差はなく,保存的治療継続割り付け群には治療効果が乏しく結果的に手術を選択した症例が約半数存在したが,これらと早期手術割り付け群との差も認められないとしている[(D2F02248,EV level 2),(D2F00806,EV level 2),(D2F01977,EV level 3)].手術成績は下肢症状の期間と関連するとした報告は数多く存在するものの,保存的治療の効果の見極めを短期間で行い手術を急ぐ恩恵は小さいと考えられる[(D2F00613,EV level 5),(DF00394,EV level 5),(D2F00613,EV level 5),(D2F00821,EV level 5),(D2F01977,EV level 3)].
文献