CQ39 切除不能胆道癌に放射線治療は有用か?

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CQ39 切除不能胆道癌に放射線治療は有用か?
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推奨/回答

切除不能胆道癌症例に対して放射線治療を行うことを考慮しても良い。

推奨の強さ

推奨度2:実施することを提案する

エビデンスの確実性

C:質の低いエビデンス(Low)

切除不能胆道癌に対する放射線治療の目的は,延命(姑息的治療)あるいはステント開存性維持,減黄,疼痛緩和(対症的治療)などである。全身状態良好な切除不能例は 5-FU 系薬剤やゲムシタビンを単剤,あるいは併用療法とした臨床試験が多数実施され,特にゲムシタビンとシスプラチン併用療法(GC 療法)は第Ⅲ相試験で延命効果が示された標準治療である。放射線治療は他の姑息的治療あるいは支持療法と比較して延命効果があるとする報告は多いが,大規模なランダム化比較試験は実現していない(表 3)。主症状の閉塞性黄疸に対して,照射による減黄も試みられるが縮小効果は即効性でないため,胆道ドレナージが優先され,長期間の減黄維持にはステント留置が必要である。Shinchi らは減黄単独群の生存期間中央値(MST)4.4ヵ月,ステント群 MST6.4ヵ月に比して放射線治療を加えた群の MST が 10.6ヵ月に延長したことより,放射線治療はステント開存・予後延長に有用であるとした。Shinohara らは米国の疫学調査データベース SEER(Surveillance,Epidemiology,and End Results database)を解析し,放射線治療群 475 例の MST は 9ヵ月と無治療 2,210 例の MST 4ヵ月に比して有意な延長を示した。同様の報告は多く,放射線治療により予後の延長とともにステント開存期間が延長する傾向にある。(エビデンスレベル C)
胆道癌に対しては一般的に外照射が行われているが,消化管や脊髄等の周囲臓器耐容線量を考慮して,通常分割照射では総線量 50 Gy 程度が用いられる。一方放射線治療で腺癌を制御するには高線量が必要とされ 55 Gy を越えると制御率が向上するという報告がある。Alden らは 55 Gy 未満では 2 年生存率 0%であったが,外部照射 45 Gy に腔内照射 24~26 Gy 程度を加え,55 Gy を超える線量群では 2 年生存率 48%だったとしている。腔内照射は周辺正常組織の線量を減じつつ,病変部に高線量を照射でき,副作用を少なく効果をあげることが期待される。Válek らは前向きランダム化比較試験を行い,ステント留置後に放射線治療(外部照射+腔内照射)を加えた 24 例で MST 387.9 日と,ステントのみ 24 例の MST 298 日と比較して生存率の向上,およびステント開存期間延長を示した。前向きランダム化試験であるが少数例,かつステントのみ群に 8 例ほど腔内照射が加わっており解釈を難しくしている。Takamura らは外部照射 50 Gy と腔内照射 27~50 Gy(平均 39.2 Gy)を併用し MST 11.9ヵ月(5 年生存率 4.3%)を得た。SEER データベースを用いた大規模疫学調査でも 193 例の腔内照射群では MST 11ヵ月と 6,859 例の放射線治療無施行群の MST 4ヵ月に比較して良好な成績が示されており,腔内照射の併用はおおむね肯定的に考えられている。このように腔内照射併用で奏効率の改善,再発期間や生存期間の延長をみたという報告がある一方,Bowling らはステント留置のみの MST 7ヵ月が外部照射と腔内照射の併用で 10ヵ月へと 3 月の延長を見たが,治療期間を考えると,患者にとって有用性に乏しいとしている。また腔内照射の線量投与方法や,線量分割にも定まったものはなく,胆管炎や消化管障害等に注意が必要で標準的な放射線治療は確立していない。(エビデンスレベル C)外部照射や化学療法の進展に伴い国内では腔内照射の施行数が減少している。
正常組織への線量を抑えつつ病巣に高い線量を与えるために腔内照射の他,術中照射等も行われてきた。近年 CT を用いた 3 次元治療計画が一般的になり,さらに定位照射,強度変調放射線治療(IMRT)や粒子線治療等の研究が行われている(表 4)。
なお,治療法選択の際,主に生存期間(率)について議論されることが多いが,放射線治療では,局所制御によるステント開存性の維持,疼痛緩和等が期待できることも利点のひとつである。根治切除不能例で,高齢等で化学療法の適応とならない場合,治療方針決定の際には,放射線治療について説明すべきである。



(本文,図表の引用等については,エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン改訂第 2 版の本文をご参照ください。)

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