(旧版)高尿酸血症・痛風 Minds版ガイドライン解説
エビデンスとは科学的な根拠のことです。一般的にエビデンスというと、研究者の主観が入り込まないように実施方法を工夫したランダム化比較試験や、複数のランダム化比較試験の結果を統計学の手法を用いて統合したメタアナリシスなど、信頼性の高いデータから得られた根拠のことを指します。しかし、患者さんの数が少ない特殊な病気や、病態が重い患者さんの場合は、ランダム化比較試験が実施できないこともあるため、その場合は、症例報告や専門医の意見などがエビデンスとして用いられることもあります。
エビデンスレベル
エビデンス1a | ランダム化比較試験[RCT]のメタアナリシスがあるか、複数のRCTの結果がほぼ一致している。 |
エビデンス1b | 少なくとも1つのRCTがある。 |
エビデンス2a | よくデザインされた比較研究[非ランダム化]がある。前向きコホート研究を含む。 |
エビデンス2b | よくデザインされた準実験的研究がある。後ろ向きコホート研究を含む。 |
エビデンス3 | よくデザインされた非実験的記述研究がある。ケースコントロールを含む。 |
エビデンス4 | 症例報告、対照群のない研究、質の低いコホート研究、横断的研究などに基づく。 |
エビデンス5 | 専門家の報告・意見・経験に基づく。 |
医学用語解説 | ||
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ランダム化比較試験 (ランダムかひかくしけん) |
複数の治療法の効果を比べるときに、患者さんをくじ引きや乱数表など、ランダム化と呼ばれる手法を用いて、グループ分けを行う試験のことです。グループ分けに研究者の主観が入り込まないため、得られた結果は信頼性が高いとされています。randomized controlled trial、または無作為化比較試験とも呼ばれます。 |
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RCT (アールシーティー) |
randomized controlled trialの略です。ランダム化比較試験、無作為化比較試験と訳されます。複数の治療法の効果を比べるときに、患者さんをくじ引きや乱数表など、ランダム化と呼ばれる手法を用いて、グループ分けを行う試験のことです。グループ分けに研究者の主観などが入り込まないため、得られた結果は信頼性が高いとされています。 |
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メタアナリシス | メタ解析と訳されます。過去に行われた複数の臨床試験の結果を、統計学の手法を用いてまとめ、全体としてどのような傾向が見られるかを解析する研究手法です。一つ一つの試験では、はっきりとした結果が得られない場合でも、複数の試験の結果を統合すると、一定の傾向が見えてくることがあります。信頼性が高いランダム化比較試験を選んでメタ解析を行うことで、非常に信頼性の高い結果を得ることができます。 |
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比較研究 (ひかくけんきゅう) |
特定の性質や条件を満たした人々を対象にして、治療や生活指導など何らかの介入が行われるグループと、その介入が行われないグループを設けます。そして、一定の期間観察を続け、その期間に起きた出来事を比較して分析する研究法のことです。対象者に行われた介入と、ある病気の発症、またはある病気の経過などとの関連について分析が行われます。 |
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非ランダム化[比較試験] (ひランダムかひかくしけん) |
治療法の効果を比較するために患者さんをグループ分けする際、くじ引きや乱数表など、作為性を排除するためのランダム化の手法を採用しない試験のことです。対象者のグループ分けに試験実施者の作為性が入り込む可能性があるため、得られた結果の信頼性はランダム化比較試験よりも低くなります。 |
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前向きコホート研究 (まえむきコホートけんきゅう) |
特定の性質や条件を満たした人の集団のことをコホートといいます。このような集団を対象にして、一定の期間、観察を続けて集めた情報を基にして、その期間に起きた出来事に関する調査を行う研究のことをいいます。対象となった集団の特定の性質や条件と、ある病気の発症、またはある病気の経過などとの関連について分析が行われます。 |
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準実験的研究 (じゅんじっけんてきけんきゅう) |
特定の集団を対象にして、治療などの介入が行われるグループと、介入が行われないグループを設け、一定の期間観察を続け、その期間に起きた出来事を比較して分析する研究法のことです。対象者に行われた介入と、ある病気の発症、またはある病気の経過などとの関連について分析が行われます。患者さんを対象にした場合など、研究を目的として介入を行うグループと介入を行わないグループに分けることが難しい場合に用いられる方法です。 |
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後ろ向きコホート研究 (うしろむきコホートけんきゅう) |
特定の性質や条件を満たした人の集団のことをコホートといい、このような集団を対象にして、診療記録などの情報を基に、過去の出来事に関する調査を行う研究法のことをいいます。対象となった集団の特定の性質や条件と、ある病気の発症、またはある病気の経過などとの関連について分析が行われます。 |
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非実験的記述研究 (ひじっけんてききじゅつけんきゅう) |
実験的な介入を行わず、「ある患者さんにある薬を投与したら、症状が改善した」というように、患者さんの経過を記述して報告する研究のことです。 |
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ケースコントロール | 病気や特徴が似通った患者さんに対する治療法の効果を、カルテなどの医療記録を基に比較する研究です。偏りが生じないように、年齢、性別、病気の特徴などが一致した患者さんを選びますが、完全に偏りを排除することは難しいため、信頼度はランダム化比較試験に比べて低くなります。症例比較研究、症例対照研究ともいいます。 |
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症例報告 (しょうれいほうこく) |
ある病気の患者さんについて、一例から数例の治療経過や結果をまとめて報告したもので、記述研究の一つです。まれな病気、あまり見られない症状や経過などを示した症例、通常は行わない特別な治療が有効だった症例などが報告の対象となります。 |
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コホート研究 (コホートけんきゅう) |
ある病気にかかる危険性の高い集団と、そうではない集団を長期間観察して、病気の発症率や進行の程度、死亡率などを調べ、病気の原因を明らかにするための研究手法です。研究対象である集団のことをコホートと呼ぶことから、コホート研究の名があります。未来に向かって観察してデータをとることがほとんどですが、カルテなどの過去の医療記録などに基づいて実施されることもあります。 |
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横断的研究 (おうだんてきけんきゅう) |
同時期に多くの人々を対象として、健康状態などの特性を比較検討する方法です。時間の経過による症状の進行状況や予後を調べることはできませんが、病気にかかっている人の割合などを調べることができます。 |
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(旧版)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版 凡例