急性胆管炎・胆嚢炎 Minds版ガイドライン解説

手術・重症外傷熱傷経静脈栄養などである。また悪性腫瘍肝門部転移肝動注療法糖尿病・特定の薬剤・特殊な感染症なども、無石胆嚢炎と関連するといわれる。わが国の急性無石胆嚢炎の報告は腹部手術後に多い。

ガイドライン作成委員より患者さんへ
胆石なしで急性胆嚢炎が起こる原因としては、手術を受けた場合、重症のケガ、火傷、経静脈栄養など、長期間食事ができない場合です。また、そのほかに、がんの転移、肝動注療法などで胆嚢の血流が悪くなる場合や、糖尿病、薬剤、特殊な感染症などが原因となることもあります。胆石がなくても胆嚢炎になる場合があることを覚えておきましょう[Q88、89、90、91も参考にしてください]。
 


医学用語解説
急性無石胆嚢炎
(きゅうせいむせきたんのうえん)
急性胆嚢炎の中でも、その原因が胆石の詰まりではないもののことです。急性胆嚢炎の原因の多くは胆石の詰まりによるものですが、胆石以外にも2〜15%の割合で胆嚢炎が起こることがあります。胆石が原因でない胆嚢炎の原因としては、手術や重症外傷、熱傷、点滴による栄養摂取、がんの転移などがあります。
危険因子
(きけんいんし)
特定の病気の発症に関係し、その発症の確率を高める要因のことです。
重症外傷
(じゅうしょうがいしょう)
外からの力が加わってケガをした中でも、症状が重いもののことです。このような場合にも胆嚢炎が起こることがあり、最も一般的な胆石によるものではないため、急性無石胆嚢炎といいます。胆嚢炎を起こす原因となるケガの中で一番多いのは、脊髄損傷です。
熱傷
(ねっしょう)
やけどのことです。急性胆嚢炎は、胆石の詰まりが原因となることがほとんどですが、なかには胆石が原因でない場合もあります。その一つに、やけど後に起こることがあります。やけどは皮膚の表面だけが赤くなるような軽いものから、皮膚の層すべてに及んだり、面積が広くなったりするものまであります。
経静脈栄養
(けいじょうみゃくえいよう)
点滴で栄養を摂り入れることです。腸管を安静にする必要があったり、口から食事が摂れずに栄養が不足したりする場合に行われる方法で、中心静脈から点滴で、高濃度の栄養剤である輸液を投与します。
悪性腫瘍
(あくせいしゅよう)
細胞が分裂する際に、形が変化して勝手に増えていき、正常な細胞を破壊していく腫れもののことです。代表的なものにがんがあり、最初に発生した場所から周囲の臓器やリンパ節、やがては遠隔臓器へも転移して生命に危険を及ぼします。胆管内にがんができると胆管が狭くなって胆汁の流れが滞り、胆管炎を発症する危険性が高まります。
肝門部転移
(かんもんぶてんい)
肝臓の中央下にあり、肝動脈や門脈、神経などの出入り口になっている部分にがんが移って増殖することです。胆石を原因としない急性胆管炎の中には、がんによって胆汁の流れが滞り、細菌感染を引き起こすものがあります。
肝動注療法
(かんどうちゅうりょうほう)
肝臓の動脈にカテーテルを入れ、抗癌剤を直接注入する治療方法のことです。酸素や栄養を送り込む働きをしている動脈に直接抗癌剤を入れることで、正常な細胞への影響が少なく、がんに対しては、より効果的に抗癌剤を投与することができる治療法です。この治療の際に、胆嚢の血流が悪くなり、急性胆嚢炎が起きることがあります。
糖尿病
(とうにょうびょう)
インスリンというホルモンの分泌が不足することで、血液中のブドウ糖濃度が上昇する病気のことです。インスリンは食事から摂り込まれたブドウ糖をエネルギーに変える役割を果たしており、膵臓でつくられています。膵臓の細胞が壊れることで起こるI型と、生活習慣によって引き起こされるII型糖尿病があります。血液中のブドウ糖値が高い状態が続くと、腎臓や網膜、血管などに影響が及び、全身にさまざまな合併症が起こります。 この合併症の一つに、急性胆嚢炎があります。
特殊な感染症
(とくしゅなかんせんしょう)
細菌やウイルスに感染する病気の中でもまれなもののことです。急性胆嚢炎を引き起こす原因の多くは胆石ですが、なかには胆石が原因ではない胆嚢炎もあります。その一つとして、カンジタ属の細菌や、レプトスピラという微生物が持つ細菌、結核菌、AIDSという後天性免疫不全症候群などを引き起こすウイルスへの感染などがあります。
無石胆嚢炎
(むせきたんのうえん)
胆石が詰まること以外の原因で起こる胆嚢炎のことです。手術後やケガ、やけどなど、症状が重い病気の治療中に発症しやすい胆嚢炎で、その割合は急性胆嚢炎の2〜15%程度です。


関連する医療提供者向けガイドラインの表示はこちら
(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン  Q8 急性無石胆嚢炎の危険因子は?
 
 
 
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