(旧版)これで治す最先端の頭痛治療 「慢性頭痛の診療ガイドライン」市民版

2 片頭痛はどのように診断するのですか

推奨 片頭痛の診断は国際頭痛分類第2版の診断基準に従って行うように勧められます
  グレードA:行うよう強く勧められる

解説
片頭痛もこまかい種類がありますが、主要な片頭痛サブタイプは〈1.1 前兆のない片頭痛〉と〈1.2 前兆のある片頭痛〉です。
「前兆のある片頭痛」は〈1.2.1 典型的前兆に片頭痛を伴うもの〉が文字どおり典型的です。
「前兆のない片頭痛」は、長年にわたり発作を繰り返すのが特徴で、中等度〜重度の痛みが4〜72時間持続します。片側性、拍動性(ズキズキする)の頭痛で、日常生活動作で痛みが増強し、悪心・嘔吐、光・音過敏を伴うため、生活に支障をきたすことが多い頭痛です。
ただし、両側性のこともありますし、ズキズキしないことも少なくありません。片頭痛はズキズキする片側の頭痛であるという誤解から、片頭痛のかなりが「片頭痛ではない」と誤解されています。
診断基準は皆さんでも十分に理解できると思いますので掲載しておきます。片頭痛の診断基準のE項目「その他の疾患によらない」は重要です。脳腫瘍や感冒など二次性頭痛がある場合は、いくら頭痛が片頭痛に似ていても、片頭痛とは診断できない、ということを意味します。

表4 〈1.1 前兆のない片頭痛〉の診断基準
A    B〜Dを満たす頭痛発作が5回以上ある
B   頭痛の持続時間は4〜72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
C   頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす
    1    片側性
  2    拍動性
  3    中等度〜重度の頭痛
  4    日常的な動作(歩行や階段昇降などの)により頭痛が増悪する、あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける
D   頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす
  1    悪心または嘔吐(あるいはその両方)
  2    光過敏および音過敏
E   その他の疾患によらない
 
表5 〈1.2.1 典型的前兆に片頭痛を伴うもの〉の診断基準
A    B〜Dを満たす頭痛発作が2回以上ある
B    少なくとも以下の1項目を満たす前兆があるが、運動麻痺(脱力)は伴わない
    1    陽性徴候(例えばきらきらした光・点・線)および・または陰性徴候(視覚消失)を含む完全可逆性の視覚症状
  2    陽性徴候(チクチク感)および・または陰性徴候(感覚鈍麻)を含む完全可逆性の感覚症状
  3    完全可逆性の失語性言語障害
C    少なくとも以下の2項目を満たす
    1    同名性の視覚症状または片側性の感覚症状(あるいはその両方)
  2    少なくとも1つの前兆は5分以上かけて徐々に進展するかおよび・または異なる複数の前兆が引き続き5分以上かけて進展する
  3    それぞれの前兆の持続時間は5分以上60分以内
D    〈1.1 前兆のない片頭痛〉の診断基準B〜Dを満たす頭痛が、前兆の出現中もしくは前兆後60分以内に生じる
E    その他の疾患によらない

サイドメモ
片頭痛はその病名が示すように片側性と思われがちですが、両側性の例が4割あります。また片頭痛は血管の頭痛だからズキズキする頭痛と思われてきましたが、ズキズキしない(非拍動性)場合も約5割あります。ズキズキや片側性を診断のよりどころにすると片頭痛を見落としてしまいます。
また、片頭痛も肩こりから始まることが多いことや(75%)、ストレスと関係することが多い(72%)ことが知られています。要するに、ときどき生活に支障のある、つらい頭痛がある場合は、片頭痛の可能性があるということをおぼえておいてください。
 

図11 片頭痛の前兆の例(患者さん自身のスケッチ)
図11 片頭痛の前兆の例(患者さん自身のスケッチ)
視野にギザギサした稲妻様の閃輝(せんき)が現れ、これが徐々に拡大していきます。その後視覚消失があらわれ、やがて頭痛がはじまります。これを閃輝暗点といいます。

イラスト

 

 
 
 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す