有効性評価に基づく前立腺がん検診ガイドライン
文献ID:S0030644
PMID:
9915441
文献番号
48
AF
1
研究方法
時系列研究
検査法
PSA
対象数
1980年1月から1997年12月までの死亡数184人。
1983年から1995年までの罹患数687人(1983-1987年141人、1988-1992年375人、1993-1995年171人)。
対象集団の特性
男性(全年齢)
対象集団の設定条件
1980-1997年に前立腺がんで死亡・診断されたOlmsted County, Minnesotaの住民。
検診群における受診率・要精検率
1992年の受診率:60歳代43% 70歳代64%
評価指標
前立腺がん死亡率・罹患率
評価指標の把握
医療記録(Mayo Clinic, Olmsted Medical Center)、死亡票(Part1, Part2)。
結果
1980-1984年を基準値として、以後5年区切りで前立腺がん死亡率の推移を比較。最後の5年間で死亡率22%減少するも統計学的な有意差はなし。年齢調整死亡率(10万対)は、1980-1984年25.8から1989-1992年34に増加し、1993-1997年には19.4となった(RR=0.78、95%CI:0.51-1.17)年齢調整罹患率(10万対)は、1992年209から1995年132に減少した。罹患の減少は全年齢に見られた。限局性・転移性がんは、1993-1995年と比較して、1989-1992年には年12%の持続的低下傾向を示した(P=0.07)。
不利益
記載なし。
研究全般に関するコメント
1)Olmsted Countyは米国の他の地域より比較的早くPSAが導入された(Urol Oncol 2005;95:951-955によると1987年)。罹患率・死亡率共に、1980年前半に比べ、1990年前半は減少している。罹患率と死亡率の減少は、1992年以降にほぼ平行して同時に起こっており、時間差がないことについては言及していない。
2)検診そのものの普及の程度については、比較対照がないので、どの程度普及しているのかは不明。
3)同様の報告を1995年(JAMA274:1445)にしているが、この時点では70歳以上の罹患減少しか認めていない。本研究では全年齢で減少したとしている。しかし、50-69歳では92年以降減少はしているが、80年前半のレベルには達しておらず、減少割合は小さい。また、70歳以上は、1989年から減少している。
4)Olmsted Countyは、米国の他の地域よりも前立腺摘除術の試行率が高い(10万対80.4、35.8)。一方、検診受診率は60歳代で43%、70歳以上で64%(1992年)。前立腺がん死亡の減少が検診によるか診断・治療によるものかは識別できない。著者も、研究デザイン上の限界と指摘している。
5)白人のミドル・クラス以上が受診の検討対象であり、医療機関に受診する社会階層の偏りについて指摘している。