メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン2020年版
参考資料
1.他のメニエール病診断基準
メニエール病の診断基準は,1974年にメニエール病が厚生省によって特定疾患に指定された際に「メニエール病診断の手引き」として作成され,2008年度の厚生労働省難治性疾患克服研究事業前庭機能異常に関する調査研究班の研究活動の一環として改訂された2)。この改訂基準の特徴は,メニエール病の病態を内リンパ水腫と位置づけ,メニエール病確実例の定義を簡潔化し,さらに1974年の診断基準のメニエール病疑い例を,メニエール病非定型例(蝸牛型)とメニエール病非定型例(前庭型)とし,その診断基準を明確にした点である3)。さらに,日本めまい平衡医学会により2017年に改訂された。本ガイドラインのメニエール病の診断基準は,日本めまい平衡医学会のメニエール病診断基準2017年を用いる。
参考として,『メニエール病診療ガイドライン2011年版』およびバラニー学会(Barany Society)によるメニエール病診断基準を1.1および1.2に示す。『メニエール病診療ガイドライン2011年版』は,2008年度の厚生労働省難治性疾患克服研究事業前庭機能異常に関する調査研究班の研究活動の一環として改訂された改訂基準をもとに作成された診断基準である。この改訂基準の特徴は,メニエール病の病態を内リンパ水腫と位置づけ,メニエール病確実例の定義を簡潔化し,さらに1974年の診断基準のメニエール病疑い例を,メニエール病非定型例(蝸牛型)とメニエール病非定型例(前庭型)とし,その診断基準を明確にした点である。バラニー学会により,2015年にメニエール病診断基準が作成され,AAO-HNS(American Associateion of Otorhinolaryngology-Head and Neck Surgery)の診断基準も2015年にバラニー学会の診断基準に一致された。
1.1 『メニエール病診療ガイドライン2011年版』のメニエール病診断基準
1)メニエール病確実例
難聴,耳鳴,耳閉感などの聴覚症状を伴うめまい発作を反復する。
メニエール病の病態は内リンパ水腫と考えられており,下記のような症状,所見の特徴を示す。
めまいの特徴
1)めまいは一般に特別の誘因なく発生し,嘔気・嘔吐を伴うことが多く,持続時間は10分程度から数時間程度である。なお,めまいの持続時間は症例によりさまざまであり,必ずしも一元的に規定はできないが,数秒~数十秒程度のきわめて短いめまいが主徴である場合,メニエール病は否定的である。2)めまいの性状は回転性が多数であるが,浮動性の場合もある。3)めまい発作時には水平回旋混合性眼振が観察されることが多い。4)めまい・難聴以外の意識障害,複視,構音障害,嚥下障害,感覚障害,小脳症状,その他の中枢神経症状を伴うことはない。5)めまい発作の回数は,週数回の高頻度から年数回程度まで多様である。また,家庭・職場環境の変化,ストレスなどが発作回数に影響することが多い。
聴覚症状の特徴
1)聴覚症状は,主にめまい発作前または発作と同時に発現・増強し,めまいの軽減とともに軽快することが多い。2)聴覚症状は難聴,耳鳴,耳閉感が主徴で,これらが単独,あるいは合併してめまいに随伴,消長する。また,強い音に対する過敏性を訴える例が少なくない。3)難聴は感音難聴で,病期により閾値が変動する。また,補充現象陽性を示すことが多い。発症初期には低音域を中心とし可逆性であるが,経過年数の長期化とともに次第に中・高音域に及び,不可逆性となることが多い。4)難聴は初期には一側性であるが,経過中に両側性(メニエール病の両側化)となる症例がある。この場合,両側化は発症後1~2年程度から始まり,経過年数の長期化とともに症例数が増加する。
診断にあたっての注意事項
1)メニエール病の初回発作時には,めまいを伴う突発性難聴と鑑別できない場合が多く,上記の特徴を示す発作の反復を確認後にメニエール病確実例と診断する。2)メニエール病と同様の症状を呈する外リンパ瘻,内耳梅毒,聴神経腫瘍,神経血管圧迫症候群などの内耳・後迷路性疾患,小脳,脳幹を中心とした中枢性疾患など原因既知の疾患を除外する必要がある。これらの疾患を除外するためには,十分な問診,神経学的検査,平衡機能検査,聴力検査,CTやMRIの画像検査などを含む専門的な臨床検査を行い,症例によっては経過観察が必要である。3)難聴の評価はメニエール病の診断,経過観察に重要である。感音難聴の確認,聴力変動の評価のために頻回の聴力検査が必要である。4)グリセロール検査,蝸電図検査,フロセミド検査などの内リンパ水腫推定検査を行うことが推奨される。
2)メニエール病非定型例
下記の症候を示す症例は,内リンパ水腫の存在が強く疑われるのでメニエール病非定型例と診断する。
(1)メニエール病非定型例(蝸牛型)
難聴,耳鳴,耳閉感などの聴覚症状の増悪・軽快を反復するが,めまい発作を伴わない。
1)聴覚症状の特徴は,メニエール病確実例と同様である。2)グリセロール検査,蝸電図検査などの内リンパ水腫推定検査を行うことが推奨される。3)除外診断に関する事項は,メニエール病確実例と同様である。4)メニエール病非定型例(蝸牛型)は,病態の進行とともに確実例に移行する例が少なくないので,経過観察を慎重に行う必要がある。
(2)メニエール病非定型例(前庭型)
メニエール病確実例に類似しためまい発作を反復する。一側または両側の難聴などの聴覚症状を合併している場合があるが,この聴覚症状は固定性で,めまい発作に関連して変動することはない。
1)この病型は内リンパ水腫以外の病態による反復性めまい症との鑑別が困難な場合が多い。めまい発作の反復の状況,めまいに関連して変動しない難聴などの聴覚症状を合併する症例ではその状態などを慎重に評価し,内リンパ水腫による反復性めまいの可能性が高いと判断された場合にメニエール病非定型例(前庭型)と診断すべきである。2)前項において難聴が高度化している場合に,めまいに随伴した聴覚症状の変化を患者が自覚しない場合がある。十分な問診と,必要であれば前庭系内リンパ水腫推定検査であるフロセミド検査を行うなどして診断を確実にする必要がある。3)除外診断に関する事項は,メニエール病確実例と同様である。4)メニエール病非定型例(前庭型)の確実例に移行する症例は,蝸牛型と異なって少ないとされている。この点からも,この型の診断は慎重に行うべきである。
3)メニエール病診断基準(簡易版)
この簡易版は,著述などの際に簡略に記載できるように,メニエール病診断基準の解説部分を省略したものである。簡易版を利用する場合は,必ず診断基準の全文を参照し,内容を十分理解する必要がある。
Ⅰ.メニエール病確実例
難聴,耳鳴,耳閉感などの聴覚症状を伴うめまい発作を反復する。
Ⅱ.メニエール病非定型例
下記の症候を示す症例をメニエール病非定型例と診断する。①メニエール病非定型例(蝸牛型)聴覚症状の増悪,軽快を反復するがめまい発作を伴わない。②メニエール病非定型例(前庭型)メニエール病確実例に類似しためまい発作を反復する。一側または両側の難聴などの聴覚症状を合併している場合があるが,この聴覚症状は固定性でめまい発作に関連して変動することはない。この病型の診断には,めまい発作の反復の状況を慎重に評価し,内リンパ水腫による反復性めまいの可能性が高いと判断された場合にメニエール病非定型例(前庭型)と診断すべきである。
原因既知の疾患の除外
メニエール病確実例,非定型例の診断にあたっては,メニエール病と同様の症状を呈する外リンパ瘻,内耳梅毒,聴神経腫瘍,神経血管圧迫症候群などの内耳・後迷路性疾患,小脳,脳幹を中心とした中枢性疾患など原因既知の疾患を除外する必要がある。
1.2 バラニー学会およびAAO-HNSのメニエール病の診断基準2015年
1) | メニエール病確実(definite)例 | |
A. | 20分から12時間続く,2回以上の回転性めまい発作 | |
B. | 発作の前,最中,後に少なくとも一度は純音聴力検査で低音から中音の感音難聴が片側にあること。 | |
C. | 変動する耳症状(難聴,耳鳴りや耳閉感)があること | |
D. | 他の前庭疾患に該当しない | |
2) | メニエール病疑い(probable)例 | |
A. | 20分から24時間続く,2回以上の回転性めまい発作 | |
B. | 変動する耳症状(難聴,耳鳴りや耳閉感)が患側にあること | |
C. | 他の前庭疾患に該当しない | |
1) | Definite Meniere’s disease | |
A. | Two or more definite spontaneous episodes of vertigo, each lasting 20 min to 12 h. | |
B. | Audiometrically documented low- to midfrequency sensorineural hearing loss in one ear, defining the affective ear on at least one occasion before, during, or after 1 of the episodes of vertigo. | |
C. | Fluctuating aural symptoms (hearing, tinnitus or fullness) in the affected ear. | |
D. | Not better accounted for by another vestibular diagnosis. | |
2) | Probable Meniere’s disease | |
A. | Two or more definite spontaneous episodes of vertigo, each lasting 20 min to 24 h. | |
B. | Fluctuating aural symptoms (hearing, tinnitus or fullness) in the affected ear. | |
C. | Not better accounted for by another vestibular diagnosis. |
2.鑑別疾患の診断基準
2.1 良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo)診断基準(日本めまい平衡医学会 2017年)
1)後半規管型良性発作性頭位めまい症(半規管結石症) | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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診断 | |||||||
後半規管型良性発作性頭位めまい症(半規管結石症)確実例(Definite) | |||||||
A.症状の5項目とB.検査所見の4項目を満たしたもの。 | |||||||
良性発作性頭位めまい症寛解例(Probable) | |||||||
過去にA.症状の5項目を満たしていたが,頭位・頭位変換眼振を認めず,良性発作性頭位めまい症が自然寛解したと考えられるもの。 | |||||||
良性発作性頭位めまい症非定型例(Atypical) | |||||||
A.症状の5項目とB.検査所見の4の項目を満たし,B.検査所見の1~3の項目を満たす眼振を認めないもの。 |
注:良性発作性頭位めまい症非定型例には,前半規管型発作性頭位めまい症(半規管結石症),後半規管型良性発作性頭位めまい症(クプラ結石症),多半規管型良性発作性頭位めまい症などが含まれる。
2)外側半規管型良性発作性頭位めまい症(半規管結石症) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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診断 | |||||||
外側半規管型良性発作性頭位めまい症(半規管結石症)確実例(Definite) | |||||||
A.症状の5項目とB.検査所見の3項目を満たしたもの。 | |||||||
良性発作性頭位めまい症寛解例(Probable) | |||||||
過去にA.症状の5項目を満たしていたが,頭位・頭位変換眼振を認めず,良性発作性頭位めまい症が自然寛解したと考えられるもの。 | |||||||
良性発作性頭位めまい症非定型例(Atypical) | |||||||
A.症状の5項目とB.検査所見の3の項目を満たし,B.検査所見の1と2の項目を満たす眼振を認めないもの。 |
注:良性発作性頭位めまい症非定型例には,前半規管型発作性頭位めまい症(半規管結石症),後半規管型良性発作性頭位めまい症(クプラ結石症),多半規管型良性発作性頭位めまい症などが含まれる。
3)外側半規管型良性発作性頭位めまい症(クプラ結石症) | ||||||||||||||||||||||||||||
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診断 | |||||||
外側半規管型良性発作性頭位めまい症(クプラ結石症)確実例(Definite) | |||||||
A.症状の4項目とB.検査所見の3項目を満たしたもの。 | |||||||
良性発作性頭位めまい症寛解例(Probable) | |||||||
過去にA.症状の4項目を満たしていたが,頭位・頭位変換眼振を認めず,良性発作性頭位めまい症が自然寛解したと考えられるもの。 | |||||||
良性発作性頭位めまい症非定型例(Atypical) | |||||||
A.症状の4項目とB.検査所見の3の項目を満たし,B.検査所見の1と2の項目を満たす眼振を認めないもの。 |
注:良性発作性頭位めまい症非定型例には,前半規管型発作性頭位めまい症(半規管結石症),後半規管型良性発作性頭位めまい症(クプラ結石症),多半規管型良性発作性頭位めまい症などが含まれる。
2.2 前庭神経炎(vestibular neuritis)診断基準(日本めまい平衡医学会2017年)
A.症状 | |
1. | 突発的な回転性めまい発作で発症する。回転性めまい発作は 1回のことが多い。 |
2. | 回転性めまい発作の後,体動時あるいは歩行時のふらつき感が持続する。 |
3. | めまいに随伴する難聴,耳鳴,耳閉感などの聴覚症状を認めない。 |
4. | 第Ⅷ脳神経以外の神経症状がない。 |
B.検査所見 | |
1. | 温度刺激検査により一側または両側の末梢前庭機能障害(半規管機能低下)を認める。 |
2. | 回転性めまい発作時に自発および頭位眼振検査で方向固定性の水平性または水平回旋混合性眼振を認める。 |
3. | 聴力検査で正常聴力またはめまいと関連しない難聴を示す。 |
4. | 前庭神経炎と類似のめまい症状を呈する内耳・後迷路性疾患,小脳,脳幹を中心とした中枢性疾患など,原因既知の疾患を除外できる。 |
診断 | |||||||
前庭神経炎確実例(Definite vestibular neuritis) | |||||||
A.症状の4項目を満たし,B.検査所見の4項目を満たしたもの。 | |||||||
前庭神経炎疑い例(Probable vestibular neuritis) | |||||||
A.症状の4項目を満たしたもの。 |
2.3 突発性難聴(sudden deafness)診断基準*1)
主症状 | |||
1. | 突然発症 | ||
2. | 高度感音難聴 | ||
3. | 原因不明 | ||
参考事項 | |||
1. | 難聴(純音聴力検査での隣り合う3周波数で各30dB以上の難聴が72時間以内に生じた) | ||
(1) | 急性低音障害型感音難聴と診断される例を除外する | ||
(2) | 他覚的聴力検査またはそれに相当する検査で機能性難聴を除外する | ||
(3) | 文字通り即時的な難聴,または朝,目が覚めて気付く様な難聴が多いが,数日をかけて悪化する例もある | ||
(4) | 難聴の改善・悪化の繰り返しはない | ||
(5) | 一側性の場合は多いが,両側性に同時罹患する例もある | ||
2. | 耳鳴 | ||
難聴の発症と前後して耳鳴を生じることがある | |||
3. | めまい,および吐気・嘔吐 | ||
難聴の発症と前後してめまい,および吐気・嘔吐を伴うことがあるが,めまい発作を繰り返すことはない | |||
4. | 第8脳神経以外に顕著な神経症状を伴うことはない |
診断の基準 | |||||||
主症状の全項目を満たすもの |
2.4 急性低音障害型感音難聴(acute low-tone sensorineural hearing loss)診断基準*2)
主症状 | |||
1. | 急性あるいは突発性に耳症状(耳閉塞感,耳鳴,難聴など)が発症 | ||
2. | 低音障害型感音難聴 | ||
3. | めまいを伴わない | ||
4. | 原因不明 | ||
参考事項 | |||
1. | 難聴(純音聴力検査による聴力レベル) | ||
① | 低音3周波数(125,250,500Hz)の聴力レベルの合計が70dB以上 | ||
② | 高音3周波数(2000,4000,8000Hz)の聴力レベルの合計が60dB以下 | ||
2. | 蝸牛症状が反復する例がある | ||
3. | メニエール病に移行する例がある | ||
4. | 軽いめまい感を訴える例がある | ||
5. | 時に両側性がある |
確実例 | |||||||
主症状の全て,および難聴基準の①と②を満たすもの | |||||||
準確実例 | |||||||
主症状の全て,および難聴基準の①を満たし,かつ高音3周波数の聴力レベルが健側と同程度のもの |
*1) | 日本聴覚医学会編『急性感音難聴診療の手引き2018年版』p.46より引用 |
*2) | 日本聴覚医学会編『急性感音難聴診療の手引き2018年版』p.67より引用 |
3.中耳加圧装置の適正使用指針(日本めまい平衡医学会)
http://www.memai.jp
[1]対象患者 | |||
保存的治療に抵抗してめまい発作を繰り返す総合的重症度がStage4のメニエール病確実例および遅発性内リンパ水腫確実例であって,外耳道損傷,耳垢塞栓および鼓膜穿孔がない患者。 | |||
語注 | |||
1) | メニエール病確実例 日本めまい平衡医学会のメニエール病診断基準のメニエール病確実例の診断基準(資料1)を満たすもの(確定診断例を含む)。 | ||
2) | 遅発性内リンパ水腫確実例 日本めまい平衡医学会の遅発性内リンパ水腫診断基準の遅発性内リンパ水腫確実例の診断基準(資料2)を満たすもの。 | ||
3) | 保存的治療に抵抗してめまい発作を繰り返す総合的重症度Stage4 メニエール病診療ガイドライン(資料3および資料4)に基づき,メニエール病及び遅発性内リンパ水腫確実例で,生活指導のみの保存的治療を2週間(Stage1),生活指導と与薬のみの保存的治療を2週間(Stage2),生活指導と与薬のみの保存的治療をさらに4週間(Stage3)行ってもめまい発作を繰り返すもので,メニエール病診療ガイドラインの重症度分類に基づく総合的重症度Stage4「進行し,外科的治療が考慮される時期」を満たすもの。ただし,保存的治療期間は前医の保存的治療期間を含む。 | ||
[2]実施医基準 | |||
耳鼻咽喉科専門医 | |||
[3]実施方法及び治療効果評価方法 | |||
1) | 保存的療法に抵抗するか否かを判別する際に,中耳加圧治療開始前の月平均発作回数を評価する。 | ||
2) | 中耳加圧療法を実施する前には,患者指導資料に基づき中耳加圧療法機器を1回3分間,1日2回使用するなど在宅での使用方法を指導し,中耳加圧療法機器を患者に貸し出す。また,「月間症状日誌」を患者に手渡し,めまいのレベル,自覚的苦痛度,日常生活支障度等を,自宅で記載させる。 | ||
3) | 在宅での中耳加圧療法の効果については,原則,4週間毎に外来で評価を行う。「月間症状日誌」の記述などに基づき,めまいの月平均発作回数からめまい係数を算出する。めまい係数により著明改善,改善,軽度改善,不変,悪化のいずれであるか判定する(資料5)。 | ||
[4]治療期間 | |||
中耳加圧療法の中止や継続は,中耳加圧療法開始後1年後の月平均発作回数を開始前の月平均発作回数と比較して評価する。著明改善の場合に寛解と判断し,中耳加圧療法を中止する。 | |||
なお,治療開始から1年以内の月平均発作回数の比較により寛解に至ったと判断できる場合は,医師の判断により中耳加圧療法の中止を選択しても良い。 | |||
また,メニエール病はストレス病であり,治療中止後にめまい再発の不安によるストレスが再発作の引き金となる可能性があるため,寛解後に6ヶ月間程度の地固めのための中耳加圧治療を継続できる。その際は,患者に説明をした上で,適宜,併用薬剤の減量をはかる。 | |||
寛解に至って中耳加圧療法を中止する場合は,再発時には中耳加圧療法を再開することが可能であることを伝え,患者を心理的にサポートする。また,寛解に至らず中耳加圧療法を中止した場合には,メニエール病診療ガイドラインに基づき,次の段階的治療法である内リンパ嚢開放術や選択的前庭機能破壊術を検討する。 |