メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン2020年版
27.メニエール病非定型例の治療
27.メニエール病非定型例の治療
メニエール病非定型例(蝸牛型)は,めまい発作を伴わずに聴覚症状の増悪,軽快を反復する。ほとんどが急性低音障害型感音難聴として発症する。急性低音障害型感音難聴の約70%が治癒するが,再発が多い1)。厚生労働省急性高度難聴に関する調査研究班による2000年の全国調査(大学病院)の症例の長期経過では,約40%で低音障害型感音難聴が再発し,メニエール病非定型例(蝸牛型)に移行すると報告されている2)。また,急性低音障害型感音難聴からメニエール病非定型例(蝸牛型)に移行した症例の1/4が,メニエール病確実例に移行すると報告されている3)。メニエール病非定型例(蝸牛型)の治療は,メニエール病の発作予防の段階的治療の保存的治療が行われることは多いが,有効性に関するエビデンスはない。
メニエール病非定型例(前庭型)は,聴覚症状を伴わずにめまい発作を反復する。内リンパ水腫による反復性めまいの可能性が高いと判断された場合にメニエール病非定型例(前庭型)と診断すべきであるが,内リンパ水腫以外の病態による反復性めまい症との鑑別が困難な場合がある。そのため,非内リンパ水腫が病態のめまい疾患,すなわち脳幹・内耳循環障害,神経血管圧迫症候群によるめまいが含まれる可能性は否定できない4)。メニエール病非定型例(前庭型)の約15%がメニエール病確実例に移行するとされている5)。メニエール病非定型例(前庭型)の治療は,メニエール病の発作予防の段階的治療の保存的治療が行われることは多いが,有効性に関するエビデンスはない。
参考文献
1) | 佐藤宏昭:急性低音障害型感音難聴をめぐる諸問題.Audiol Jpn 53: 241-250, 2010. |
2) | 佐藤宏昭,村井和夫,岡本牧人,星野知之:急性低音障害型感音難聴の平成12年全国疫学調査結果.Audiol Jpn 45: 161-166, 2002. |
3) | 平山方俊,設楽哲也,岡本牧人,佐野肇:低音障害型感音難聴長期観察例の検討.Audiol Jpn 37: 142-149, 1994. |
4) | 武田憲昭:難治性めまいへの対応.日耳鼻 116:1185-1191, 2013. |
5) | 武田憲昭:急性低音障害型感音難聴 vs メニエール病 類似点と相違点 メニエール病の立場から.Equilibrium Res 77: 194-200, 2018. |