(旧版)がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版

 
 Ⅰ.治療編 放射線治療 CQ33

Ⅰ.治療編

放射線治療

CQ33
放射線による遅発性皮膚有害反応の毛細血管拡張症に対するレーザー治療は有用か
  推奨グレード
C1b
放射線治療後の遅発性有害反応である毛細血管拡張症に対してレーザーを用いた治療が国外では行われ,有用性が報告されており,行うことを考慮してもよい。

背景・目的

放射線治療後に認められる遅発性有害反応として毛細血管拡張がある。皮膚や皮膚に近接した病巣に対し,分割照射により60Gy以上の根治線量を照射した場合に発生することがある。乳がんの術後の胸壁や,頭頸部腫瘍の頸部に大線量を照射したときに,がんは治癒しても照射による遅発性有害反応としての毛細血管拡張が患者の精神的苦痛となることがあるため,さまざまな治療が試みられてきた。

解説

乳がんの放射線治療後の毛細血管拡張は,現在の治療ではブースト照射を行う場合や,乳房切除後の胸壁照射でボーラスを用いて照射する場合に起こる可能性がある。また,頭頸部腫瘍の根治照射例では頸部皮膚に70Gy前後の大線量が照射されるため,遅発性の毛細血管拡張を発症する可能性がある。

レーザーを用いた2件の臨床試験がある1)2)。乳がんの放射線治療後の毛細血管拡張に対するレーザーを用いた治療に関する前向き試験と,異なった波長のレーザーによる二重盲検試験である。いずれも比較試験ではないが,レーザー治療により毛細血管拡張は改善ないし消失している。波長は585nmのLPDL(long-pulsed dye laser)が良いとの報告である。

放射線治療後の遅発性有害反応としての毛細血管拡張症は,発症患者が少なく,また,患者が気にしない場合も多いことから,比較研究を行うことは難しいのが現状である。今までの報告からはレーザー治療が有用である可能性がある。

検索式・参考にした二次資料

PubMedにて,"Telangiectasis", "Lasers", "Clinical Trial"等のキーワードを用いて検索した。医中誌WebおよびJMEDPlusにて,“放射線障害”,“皮膚”,“毛細血管拡張症”,“臨床試験”等のキーワードを用いて検索した。

参考文献
1)Lanigan SW, Joannides T. Pulsed dye laser treatment of telangiectasia after radiotherapy for carcinoma of the breast. Br J Dermatol. 2003; 148(1): 77-9.(レベルⅢ)
2)Nymann P, Hedelund L, Haedersdal M. Intense pulsed light vs. long-pulsed dye laser treatment of telangiectasia after radiotherapy for breast cancer: a randomized split-lesion trial of two different treatments. Br J Dermatol. 2009; 160(6): 1237-41.(レベルⅡ)
 
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