(旧版)がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版

 
 Ⅰ.治療編 化学療法 CQ11

Ⅰ.治療編

化学療法

CQ11
化学療法による皮膚色素沈着に対してハイドロキノン外用は有用か
  推奨グレード
C2
化学療法による皮膚色素沈着に対する治療として,ハイドロキノンを外用することは,エビデンスが乏しいため基本的に勧められない。

背景・目的

化学療法治療を行うことで,皮膚の色素沈着をきたすことがある。化学療法の有害事象である皮膚の色素沈着に対してハイドロキノン外用により治療が可能かを検討した。

解説

化学療法によって,皮膚の色素沈着をきたすことがある。これは,化学療法薬が基底細胞層に存在するメラノサイトを刺激することによって起こるとされている。色素沈着を起こす薬剤は多岐にわたるものの,フッ化ピリミジン系薬剤やアルキル化薬,抗菌薬性抗がん剤などで頻度が高いと報告されている1)

検索の範囲で,ハイドロキノンが化学療法による皮膚色素沈着に対して治療効果を示すという論文報告は認められなかった。また,健常人を対象として,皮膚の色素沈着に対して,ハイドロキノンが治療効果を示したという報告はある。

肝斑に対するハイドロキノンのプラセボ対照ランダム化比較試験が1件報告されている。これは,4%のハイドロキノンとプラセボ(Sun Protection Factor 25を昼間に併用)の比較試験である。12例を対象に,左右に4%ハイドロキノンとプラセボの塗布を3カ月間施行し,ハイドロキノン塗布部で76.9%の改善を示したとの報告であった2)3)。また,副作用として,皮膚の刺激性が25%に認められたとの報告であった。

日本においては,肝斑や炎症性色素沈着,老人性色素斑などの58例に対して5%ハイドロキノン処方後,主治医評価で著効,有効,無効,悪化の4段階で評価され,27例(40.4%)で著効を示したというケースシリーズが報告されている4)。この報告においても,11.8~15.4%で刺激症状を認めたとのことであった。

上記より,肝斑をはじめとする皮膚色素沈着症に対してハイドロキノンは第一選択の治療薬となっているが,化学療法による皮膚色素沈着に対する報告はない一方,塗布による刺激症状など一定の副作用は報告されている。

現時点では,化学療法による皮膚色素沈着に対してハイドロキノンを塗布することは推奨されない。

ハイドロキノンは国内では化粧品への2%までの配合が厚生労働省から認可されているが,保険適用はない。

検索式・参考にした二次資料

PubMedにて,"hydroquinone", "Skin Pigmentation"のキーワードを用いて検索した。医中誌Webにて,“ハイドロキノン”,“色素沈着”のキーワードを用いて検索した。また,ハンドサーチでASCO年次総会の抄録から“hydroquinone”,“Skin Pigmentation”のキーワードを用いて検索した。さらに,UpToDate 2014を参考にした。

参考文献
1)Singal R, Tunnessen WW Jr, Wiley JM, Hood AF. Discrete pigmentation after chemotherapy. Pediatr Dermatol. 1991; 8(3): 231-5(レベルⅤ)
2)Haddad AL, Matos LF, Brunstein F, Ferreira LM, Silva A, Costa D Jr. A clinical, prospective, randomized, double-blind trial comparing skin whitening complex with hydroquinone vs. placebo in the treatment of melasma. Int J Dermatol. 2003; 42(2): 153-6.(レベルⅡ)
3)Shankar K, Godse K, Aurangabadkar S, et al. Evidence-based treatment for melasma: expert opinion and a review. Dermatol Ther (Heidelb). 2014; 4(2): 165-86.(レベルⅥ)
4)濱本知之,樋口則英,三宅秀明,他.院内製剤5%ハイドロキノン軟膏の使用状況とその有用性に関する調査.日病薬師会誌.2008; 44(10): 1495-8.(レベルⅤ)
 
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