(旧版)がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版

 
 Ⅰ.治療編 化学療法 CQ8

Ⅰ.治療編

化学療法

CQ8
化学療法による皮膚色素沈着に対する予防としてビタミンC内服は有用か
  推奨グレード
C2
化学療法による皮膚色素沈着に対する予防として,ビタミンCを内服することは,エビデンスが乏しいため基本的に勧められない。

背景・目的

化学療法治療を行うことで,皮膚の色素沈着をきたすことがある。化学療法の有害事象である皮膚の色素沈着に対してビタミンC内服により予防が可能かを検討した。

解説

化学療法によって,皮膚の色素沈着をきたすことがある。これは,化学療法薬が基底細胞層に存在するメラノサイトを刺激することによって起こるとされている。色素沈着を起こす薬剤は多岐にわたるものの,フッ化ピリミジン系薬剤やアルキル化薬,抗菌薬性抗がん剤などで頻度が高いと報告されている1)。通常は治療を終了すると改善することが多いが,フッ化ピリミジン系の爪の色素沈着やシクロホスファミドの歯肉辺縁の色素沈着は長年継続するという報告がある2)3)。手足などに限局して色素沈着を起こす薬剤が多いが,ブスルファン,メトトレキサート,ドキソルビシン塩酸塩リポソーム(注射剤),ハイドロキシウレア,プロカルバジンによる色素沈着は全身性である1)4)~6)。ブスルファンでは,副腎機能低下をきたすことでACTHの産生亢進を促して,同時にメラノサイト刺激ホルモンを増加させることで皮膚色素沈着を起こす機序も報告されている7)

検索の範囲で,ビタミンCが化学療法による皮膚色素沈着に対して予防効果を示すという論文報告は認められなかった。また,健常人を対象として,皮膚の色素沈着に対して,ビタミンCが予防効果を示すという論文も認められなかった。

よって,ビタミンC内服により,皮膚の色素沈着が予防できるという根拠はない。

一方で,大量摂取すると,1~10%の頻度で急性尿細管間質性腎炎の原因である,高シュウ酸尿症をきたす。また,1%未満の頻度であるが,めまい,倦怠感,頭痛を感じることがある。

治療薬との相互作用では,ボルテゾミブの効果を減じる可能性があり,シクロスポリンの血中濃度を低下させる可能性があり,エストロゲンの血中濃度を増加させる可能性があるとされている。

基礎実験レベルでは,メラノーマ培養細胞に対してビタミンCを投与するとUVA誘導性のメラニン産生を抑制するという報告がある8)。また,褐色モルモットに対する研究では,背部の除毛後皮膚にUVBを照射した場合,ビタミンC投与で対象群と比較して皮膚色の明度の悪化が抑えられたとの報告がある9)。また,ラットを対象とした比較対象研究で,ミノサイクリンによる皮膚色素沈着に対して,ビタミンCが予防効果を示したという報告もある10)。ミノサイクリンによる皮膚色素沈着には,真皮内にミノサイクリンがキレートした鉄の沈着による場合と,表皮のメラニン産生が亢進して認められる機序が混在しており,一部が化学療法による色素沈着の機序と同じである11)。ただし,これら基礎研究の結果を臨床に応用するにはさらなる研究が必要な状況であり,現状では勧められない。

なお,医療用ビタミンC内服薬の適応症には,ビタミンC欠乏または代謝障害が関与すると推定される薬物中毒,ならびに炎症後の色素沈着がある。ただし,効果がないにもかかわらず月余にわたって漫然と使用しないこととされている。

検索式・参考にした二次資料

PubMedにて,"Ascorbic Acid", "Vitamin C", "Skin Pigmentation"のキーワードを用いて検索した。医中誌Webにて,“アスコルビン酸”,“ビタミンC”,“色素沈着”のキーワードを用いて検索した。また,ハンドサーチでASCO年次総会の抄録から“Ascorbic Acid”,“Vitamin C”,“Skin Pigmentation”のキーワードを用いて検索した。さらに,UpToDate 2014を参考にした。

参考文献
1)Singal R, Tunnessen WW Jr, Wiley JM, Hood AF. Discrete pigmentation after chemotherapy. Pediatr Dermatol. 1991; 8(3): 231-5.(レベルⅤ)
2)Piraccini BM, Tosti A. Drug-induced nail disorders: incidence, management and prognosis. Drug Saf. 1999; 21(3): 187-201.(レベルⅤ)
3)Piraccini BM, Iorizzo M. Drug reactions affecting the nail unit: diagnosis and management. Dermatol Clin. 2007; 25(2): 215-21, vii.(レベルⅤ)
4)Hendrix JD, Greer KE. Cutaneous hyperpigmentation caused by systemic drugs. Int J Dermatol. 1992; 31(7): 458-66.(レベルⅤ)
5)Bronner AK, Hood AF. Cutaneous complications of chemotherapeutic agents. J Am Acad Dermatol. 1983; 9(5): 645-63.(レベルⅤ)
6)Lotem M, Hubert A, Lyass O, et al. Skin toxic effects of polyethylene glycol-coated liposomal doxorubicin. Arch Dermatol. 2000; 136(12): 1475-80.(レベルⅤ)
7)Bandini G, Belardinelli A, Rosti G, et al. Toxicity of high-dose busulphan and cyclophosphamide as conditioning therapy for allogeneic bone marrow transplantation in adults with haematological malignancies.Bone Marrow Transplant. 1994; 13(5): 577-81.(レベルⅥ)
8)Xiao L, Matsubayashi K, Miwa N. Inhibitory effect of the water-soluble polymer-wrapped derivative of fullerene on UVA-induced melanogenesis via downregulation of tyrosinase expression in human melanocytes and skin tissues. Arch Dermatol Res. 2007; 299(5-6): 245-57.(レベルⅥ)
9)藤原葉子,秋元浩二,二宮伸二,坂口靖江,脊山洋右.モルモットに経口摂取させたビタミンC,L-システイン,ビタミンEの併用による色素沈着抑制効果.日栄・食糧会誌.2003; 56(4): 221-8.(レベルⅥ)
10)Bowles WH. Protection against minocycline pigment formation by ascorbic acid (vitamin C). J Esthet Dent. 1998; 10(4): 182-6.(レベルⅥ)
11)堀川達哉.異物沈着症.日皮会誌.2005; 115(9): 1310-3.(レベルⅥ)
 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す