(旧版)がん患者に対するアピアランスケアの手引き 2016年版

 
 Ⅰ.治療編 化学療法 CQ3

Ⅰ.治療編

化学療法

CQ3
再発毛の促進にビマトプロストは有用か
  推奨グレード
C1b
抗がん剤による睫毛貧毛症に対し,睫毛成長を促進させる目的でビマトプロストを用いることを考慮してもよい。

背景・目的

抗がん剤による脱毛に対し,ビマトプロストを使用した場合の症状改善効果につき,その有用性を検証した。

解説

ビマトプロストは睫毛貧毛症を治療する目的で開発された薬剤である。この合成プロスタグランディン構造誘導体はプロスタマイドとして知られ,これまで開放性隅角緑内障および高眼圧症の患者の治療に用いられてきた。緑内障および高眼圧症の患者の臨床試験でビマトプロストの副作用として睫毛の成長が認められており,この機序は毛包でのビマトプロストとプロスタマイド感受性受容体との相互作用によって生じる影響とされている。ビマトプロストの使用方法は片目ごとに1日1回,1滴を専用のブラシに滴下し,上眼瞼の辺縁部に塗布する。抗がん剤による睫毛貧毛症に対するビマトプロストの効果を評価している論文は一件のみである。この試験では抗がん剤による睫毛貧毛例36例をビマトプロスト使用群,プラセボ群の2群に分け,二重盲検試験によりその有効性を日本人用画像解析数値化ガイド付き総合的睫毛評価スケール(GEA-1)を用いて評価した。結果はビマトプロスト使用群では88.9%,プラセボ群では27.8%の症例がベースラインから4カ月までにGEA-1スコアにて1段階以上の改善が認められ,両群間に有意差を認めた1)。以上の報告より,ビマトプロストは抗がん剤による睫毛貧毛症例に対し,睫毛成長を促進させる効果があることが示されたが,報告例はこの一件のみである。ビマトプロストの副作用としてはメラニンの増加による眼瞼の色素沈着,目周囲の多毛,眼瞼の瘙痒感,眼球の刺激感,虹彩色素過剰,眼瞼溝深化などが報告されている。さらに頭髪の脱毛に対してはその効果を示す報告はない。したがって睫毛と同様の効果を生じる可能性はあるが,現時点ではまだ不明である。

ビマトプロストは0.03%外用薬が睫毛貧毛症を適応症とした医療用医薬品として認可されているが,保険未収載品であり,保険適用はない。使用上の注意として,抗がん剤による睫毛貧毛症の患者では,本剤の投与はがん化学療法終了4週間後以降に開始することが望ましい(がん化学療法施行中および終了4週間後までの間における本剤投与に関する安全性および有効性は確立していないとされている)。なお,0.03%点眼薬は緑内障,高眼圧症治療薬として保険適用をもつ。

検索式・参考にした二次資料

PubMedにて,"hair loss", "Bimatoprost"等のキーワードを用いて検索した。医中誌Webにて,“脱毛”,“Bimatoprost”等のキーワードを用いて検索した。

参考文献
1)Harii K, Arase S, Tsuboi R, Weng E, Daniels S, VanDenburgh A. Bimatoprost for eyelash growth in Japanese subjects: two multicenter controlled studies. Aesthetic Plast Surg. 2014; 38(2): 451-60.(レベルⅡ)
 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す