精巣腫瘍診療ガイドライン 2015年版
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hCG 測定には mIU/mL 表記のものを用いる
hCG 測定キットには、次のように種々のキットがある。
1. intact hCG:α鎖とβ鎖が結合した状態の intact hCG のみを測定するキット
2. free β-hCG:α鎖と解離してβ鎖のみで存在する free β-hCG のみを測定するキット
3. total hCG:intact hCG と free β-hCG およびその他の hCG 関連分子を含む total hCG を測定するキット
最も注意すべきことは、free β-hCG は ng/mL 単位で表記され、この free βhCG 値から IGCCCG 分類で用いられる mIU/mL への換算ができないことである。このため、化学療法開始前に free β-hCG のみしか測定していない場合は、理論上、IGCCCG 分類を用いることができない。特に、ng/mL 単位で表記されている場合は注意を要する。
現状において、intact hCG と total hCG のどちらが有用かについては、明確なデータはない。セミノーマで intact hCG の産生能が低く、free β-hCG のみを産生する症例があり、その意味では free β-hCG を合わせて測定する total hCG の感度がより高いことが期待される。
胚細胞腫以外の癌腫でも、低値ながら free β-hCG を産生することが報告されており1)、その意味では、total hCG の胚細胞腫特異性は intact hCG より低いと考えられる。そのため、burned out 症例や性腺外胚細胞症例で生検による組織診断が困難なため、hCG 測定値のみで胚細胞腫の臨床診断を行う場合は、intact hCG と total hCG あるいは intact hCG と free β-hCG などの複数の測定法で確認しておくことが望ましい。

文献
1) | Marcillac I, Troalen F, Bidart JM, et al. Free human chorionic gonadotropin beta subunit in gonadal and nongonadal neoplasms. Cancer Res. 1992;52:3901-7. |