(旧版)ED診療ガイドライン 2012年版
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診断
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特殊診断検査
本項の検査は性機能専門医が行うもので,前出のフローチャートの範囲外である。
1)夜間勃起現象(nocturnal penile tumescence: NPT)の評価

リジスキャンプラス®(図4)の測定で,陰茎遠位で10分以上持続する少なくとも60% 以上の硬度が得られれば正常と判定する9)。心因性EDと器質性EDの鑑別に有用である。リジスキャンプラス® は高価であるので,簡易型のNPT 測定装置としてエレクトメーター®(日本メディカルプロダクツ株式会社)が市販されている。これは陰茎周径の最大増加幅を計測するテープ状の装置であるが,リジスキャンプラス® の結果とよく相関するとされている10)。
なお,労働災害によるEDの認定には,リジスキャンプラス® による夜間勃起現象の評価と次に述べるプロスタグランジンE1海綿体注射による血管系の評価が必須とされている11)。
2)PGE1 の陰茎海綿体注射(intracavernous injection test: ICI)
プロスタグランジンE1(PGE1)を陰茎海綿体に注射するもので,通常5〜20μgを生理食塩水1 mL に溶解して使用する。なるべく細い注射針(27〜30G)を用いて左右いずれかの陰茎海綿体内に注入する(図5)。血管系の機能が正常であれば,注射後10分以内に勃起が発現し,30分以上持続する12)。勃起反応は以下の5段階に分類する(表7)。
反応が不十分な場合は,動脈血流入不全または静脈閉鎖不全の存在を示唆する12)。(注:日本では2011年2月23日に注射用プロスタンディン® 20が「勃起障害の診断」の効能・効果を取得し,EDの診断薬として保険診療が可能となった。しかし,治療薬としてはいまだ認可に至っておらず,自主臨床研究として施行されているのが現状である13)。)
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3)カラードプラ検査(color doppler ultrasound: CDU)
PGE1 を海綿体注射し,10分後までのCDU において,収縮期最大血流速度が30cm/sec 以上で,抵抗係数(resistance index)が0.8以上の場合に正常と判断する14)。図6にPGE1 海綿体注射後の結果を示す。
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4)造影CT,血管撮影,海綿体造影
血行再建手術を考慮している患者に行う検査である15)。5)精神医学的評価
精神疾患を有する疑いのある患者は,精神科医に紹介するべきである。また,以下のような場合は精神科医もしくは心療内科医に紹介するべきである16)。
①明らかな器質的原因が見あたらず,最初の性交機会からEDである場合,②神経/血管などの障害を思わせる病歴がないにもかかわらず,PDE5阻害薬が無効な場合,③ 性的虐待や性的外傷体験が患者本人やパートナーにある場合,④ うつ症状(付録4にスクリーニングの問診票:DSM-IV-TR によるうつ病の診断基準)。