(旧版)ED診療ガイドライン 2012年版

 
5 EDと心血管疾患

EDは心血管疾患の前兆と考えられている。

性行為は中等度の身体的運動であり,性的に活動的であれば寿命が延長する可能性がある。
〔推奨グレードB〕
性行為が心筋梗塞のトリガーとなる少数の患者群は存在するが,そのリスク上昇はきわめて小さく,心虚血を負荷心電図で予測できる。ただし,婚外性交はリスクが高い。
〔推奨グレードB〕
心血管リスクのある患者はプリンストン・コンセンサス・パネルの勧告に従って管理する。
〔推奨グレードB〕
血管外科疾患の症状として,かつ再建手術の合併症としてEDは重要である。大動脈-腸骨動脈の再建手術の際に神経温存手技を用いれば,術後のEDを回避できる可能性があるし,また血行再建によりEDを回復させる可能性もある。
〔推奨グレードC1〕
リスクファクターの章で述べたように,加齢,喫煙,高血圧,糖尿病,肥満/運動不足,うつ,慢性腎臓病(CKD),睡眠時無呼吸症候群(SAS)はEDのリスクファクターであるが,これらすべては心血管疾患のリスクファクターでもある。すなわち,EDと心血管疾患はリスクファクターを共有している1)。これらのリスクファクターのうち,喫煙,高血圧,糖尿病は全身の血管内皮細胞を障害する要因とされている1)。したがって,全身の内皮障害(endothelial dysfunction: ED)の一部として勃起障害(erectile dysfunciton: ED)をとらえる必要がある1)
心血管事故に対するEDの相対リスクを調べたメタアナリシスがある2)。それによれば,5つの前向きコホート研究と2つの後ろ向きコホート研究が抽出され,対象人数は45,558名(すべて欧米人),ED患者の非ED患者に対する心血管事故の補正相対リスクは1.47(95% 信頼区間:1.29〜1.66,p<0.001)であった。
明らかな冠動脈疾患がないED患者に負荷心電図を施行すると,8〜56%3-9)で陽性所見が報告されている(表3)。これらの研究結果のうち川西らの論文は,25〜78歳までの日本人を対象にしたもので,その15% の陽性率は他の欧米の結果と比べてそれほど低くはない4)
さらに,明らかな冠動脈疾患がある患者のED罹患率は高く(42〜75%)10-13),しかも冠動脈疾患の発現の2〜3年前にEDが自覚されることが多いので(表410,13-16),EDは冠動脈疾患の重要なマーカーとなりうると考えられている1)。その理論的根拠として,近年広く受け入れられている仮説が血管サイズ説である(図217)。すなわち,同じような動脈硬化が全身に起こっても,目標臓器に血流を供給する動脈サイズに差があるために,虚血の影響は細い血管から顕在化してくるという考え方である。
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