(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011

 
 
5章 治療
4b.薬物療法:向精神薬などの精神科的治療

2.セロトニン選択的再取込み阻害薬(SSRI)
arrow 線維筋痛症に有効なSSRI(selective serotonin reuptake inhibitor)の報告があるのは,シタロプラム,フルオキセチン,パロキセチンである。この中で本邦での使用可能な薬剤は,パロキセチンのみである。

パロキセチン*
エビデンスIIa 推奨度B
arrow 海外での線維筋痛症への服用量は12.5〜62.5mg/日で12週間投与し有効であったとのランダム化試験の報告がある。116名の線維筋痛症の症例において,FIQが25%改善し,プラセボ対照群の改善率33%に対して,パロキセチンは57%と有意に改善していた6)。うつ病症例へのSSRI投与初期に,activation syndromeとして,不安,焦燥感,不眠,易刺激性が増加するとの報告がある。発生率は約4%程度と低いがSSRI投与初期にはactivation syndromeが衝動行為や自殺などと関連することもあるので注意を要する7)。特に18歳以下の若年者では自殺率が上昇するとの報告があり,投与初期の易刺激性,衝動性には特に注意を要する。やはり少量からしだいに増加することが望ましいと思われる。


arrow SSRI,SNRIともに副作用として最も多く認められるのは,嘔気,食欲低下などの消化器症状である。出現頻度はパロキセチン6%,フルボキサミン12%,ミルナシプラン5%であるが,症例により副作用の出る人と出ない人にわかれる。消化器症状は出現しても大部分が1〜2週間以内で,服用を継続していても症状が軽快するため,一時的にドンペリドンなどの制吐剤を併用し,消化器症状の副作用が軽快することも多い。ミルナシプランのその他の副作用としては抗コリン作用で起こる口渇,排尿障害などが数パーセント認められるが,以前の抗うつ薬に認められた眠気,ふらつきなどの鎮静作用はほとんど認められない。したがってミルナシプランは高齢者にも使用可能な抗うつ薬である。下降性痛覚抑制のメカニズムから考察すると,セロトニンだけでなく,ノルアドレナリンも疼痛軽快に関与しているとの報告があり,一般的にはSSRIよりSNRIのほうが疼痛軽快に有効であると思われる。

 

 
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