(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011
5章 治療
3.精神科的アプローチによる治療の導入
3.精神科的アプローチによる治療の導入
5.線維筋痛症における治療構造の重要性
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前項にて,「合併」という考え方が最も実地臨床に即しているとしたが,そのような治療構造にしたからといって,精神科の治療導入がうまくいくとは限らない。それは,たとえば整形外科の線維筋痛症専門医が診察して線維筋痛症と診断した後に,精神科受診が必要であると判断しそのように説明しても患者が偏見のため拒否すれば受診しない。患者は精神疾患患者というレッテルを貼られることを恐れたり,それに怒りを感じたりする。また,実際にある精神疾患を認めたくないという心性が働き否認したりするなど,精神科受診を嫌がる理由は多数あり,それは個々に異なる。 |
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そこで問題となるのは,その線維筋痛症専門医が患者に最もよい治療を行うために必要なことができないまま,診療を続けることとなり,精神科的な治療ができないために精神症状が悪化し,重症化していくことである。主治医の勧めを受け入れないこのような線維筋痛症患者は,治療構造を破壊することがしばしば認められ,自分の思い通りの治療を要求し,その結果として医原性に薬物依存となったり,初めは身体表現性障害であったものが,虚偽性障害に発展し,最終的に詐病として,生活保護などを受け生活の糧を得る手段となってしまうことがある。このように病態が進んだ後の治療は大変困難であり,そのようにならないためには,最初の治療構造の構築が最も重要であると思われる。この点を克服するためには,精神科を最初に受診するシステムが最もよいと思われる。精神科受診を線維筋痛症の診断全体における一評価部門と位置づけることで,その心理的な抵抗を軽減することができる。 |