(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011

 
 
5章 治療
3.精神科的アプローチによる治療の導入

2.線維筋痛症と精神疾患の疫学
arrow 海外の研究によると線維筋痛症においては,精神疾患の合併率が高いことが知られている。線維筋痛症の診断時点でのうつ病や不安障害の合併がそれぞれ20〜35%と報告されている。また,線維筋痛症患者のうつ病や不安障害の罹患率は,それぞれ60〜70%と非常に高い。また,パーソナリティー障害が10%程度認められると報告されている。
arrow これらの海外の研究は,米国リウマチ学会の1990年の分類・診断基準に従って合併という概念で扱っているが,日本においてはそのような研究報告自体がなく,日本の線維筋痛症患者における実態はまだ不明である。自験例においては,線維筋痛症患者に精神疾患の診断を行うと約9割の患者に精神疾患が認められる。半数程度に身体表現性障害が認められ,次に1/4程度に気分障害(うつ病または気分変調性障害が半数ずつ),パーソナリティー障害が1割程度認められる。これらのデータは,海外の報告とほぼ一致するものであるが,日本においては不安障害の合併が非常に少ないことや1割程度に広汎性発達障害が認められること,解離性障害も5%程度存在し,時に統合失調症も認められることが特徴であると言える。自験例が日本の線維筋痛症として一般化できるかという問題点が存在するが,本邦においても線維筋痛症患者の大部分に精神疾患が認められるため,精神科的な関与が必要であると思われる。

 

 
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