(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011
4章 鑑別診断
2.線維筋痛症と整形外科的疾患の鑑別
2.線維筋痛症と整形外科的疾患の鑑別
7.複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome:CRPS)
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CRPSの歴史:アメリカ南北戦争時Weir Mitchellは末梢神経の損傷後焼け付くような激しい痛みを訴える患者の存在があることを観察し,これをカウザルギーと命名した。 |
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その後神経損傷のみならず軽微な外傷や心筋梗塞,脳梗塞後の肩手症候群でも同様の症状が出現することが報告され,これらに対して交感神経系が関与しているとの報告のもとに国際疼痛学会(IASP)は1986年これらの病態を反射性交感神経ジストロフィー(RSD)と命名した。しかしこの範疇には必ずしも交感神経が関与していない病態があることも判明し1990年IASPにてCRPSと改訂された。CRPSのTypeIは神経障害を持たないものであり,CRPSのTypeIIは神経損傷を有するもので従来のカウザルギーにあたるものである。 |
CRPSの診断と線維筋痛症 | |
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CRPSは強い疼痛やしびれ,アロディニア(触刺激が疼痛を誘発する状態),浮腫や発汗の異常を呈し進行すると関節拘縮をきたす原因不明の疼痛症候群である。 |
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CRPSと線維筋痛症の関係は激しい疼痛という類似の症状を有していることで,このことから両者を鑑別することは重要である。線維筋痛症とCRPSとの関係も線維筋痛症と整形外科,リウマチ性疾患の場合と同じように考えると理解しやすい。すなわち,①線維筋痛症がCRPSの症状を惹起または増強している場合,②CRPSの局所の刺激で線維筋痛症が惹起されている場合,③CRPSが全身に拡大し線維筋痛症を呈している場合, ④両者が合併している場合である。表5に本邦におけるCRPSの診断指標を記す。 |
表5 ![]() ![]() |
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(柴田政彦:CRPSの診断(判定指標).複合性局所疼痛症候群CRPS(complex regional pain
syndrome).眞下 節,柴田政彦,編,真興交易(株)医書出版部.2009;p65-71より転載)
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