(旧版)線維筋痛症診療ガイドライン 2011

 
 
4章 鑑別診断
2.線維筋痛症と整形外科的疾患の鑑別

3.線維筋痛症を随伴しやすい整形外科疾患
arrow 筆者が経験した比較的線維筋痛症が随伴しやすいと思われる整形外科疾患を列記する(表1)。頸部疾患を例に挙げると,たとえば頸椎捻挫の場合,時間的な経過とともに頸部の疼痛が胸背部から腰部にかけて拡大していく症例が存在する。また頸肩腕症候群と診断された症例でも同様な傾向を呈するものがある。頸椎症,特に頸椎症性脊髄症ではそれ自体上肢のみならず下肢にも症状を呈し線維筋痛症を合併しやすい。頸椎症性神経根症,脊髄症の場合,MRIで診断が可能であるが比較的他覚所見に乏しい症患,たとえば頸椎X-Pでのストレートネックの存在を含めた頸椎アライトメントの異常,下垂肩症候群(droopy shoulder)は頸肩腕痛や牽引型胸郭出口症候群の症状を呈し,徐々に疼痛が全身に拡大していく場合がある。その他胸郭出口症候群は画像所見に乏しく,主として臨床所見より診断し,必要なら血管造影,腕神経叢造影で確定診断を行う。胸腰椎の疼痛に関しては若年者では血清リウマトイド因子陰性脊椎関節症として代表的な強直性脊椎炎,胸肋鎖骨異常骨化症を,中高年では変形性脊椎症,強直性脊椎骨増殖症,高齢者では骨粗鬆症(胸腰椎圧迫骨折),ピロリン酸カルシウム沈着症(CPPD沈着症)の随伴に,また腰部では腰椎椎間板ヘルニア,腰部脊椎管狭窄の随伴に注意する。なお,上肢(手)の腫脹,拘縮をきたす疾患として反射性交感神経ジストロフィーやカウザルギーにも考慮が必要である。

表1 線維筋痛症に随伴しやすい筋骨格系疾患
表1


 

 
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