(旧版)腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン 2011
第1章 疫学・自然経過
■ Clinical Question 1
腰部脊柱管狭窄症とは何か
要約
現在のところ,腰部脊柱管狭窄症の定義について完全な合意は得られていない.
解説
2006年1月から2008年10月までに発表された,腰部脊柱管狭窄症に関する無作為化対照試験における患者選択基準にも大きなばらつきがみられることが報告されている2).
Verbiest 5)は「患者は歩行や立位において,馬尾障害,すなわち下肢における両側性の根性痛,感覚障害および筋力低下を示す.患者が臥位になるとそれらの症状は即座に消失し,安静時の神経学的所見には異常がない.一見すると,それらの愁訴は血管性の間欠跛行と誤解されうる.脊髄造影により硬膜外からの圧迫によるブロック像を示す」と記載している.
Arnoldi 1)は,「脊柱管,神経根管椎間孔における部分的,分節的あるいは全体的な狭小化であり,骨によるものも軟部組織によるものもあり,骨性の管のみ,硬膜管のみ,あるいは両方が狭小化しているものがある」としている.神経根管とは,神経根の分岐部から椎間孔出口までの通過管であり,前面は椎間板および椎体,後面は黄色靱帯,椎弓および関節突起間部で,内側は硬膜嚢,外側は椎弓根で形成される.
日本脊椎脊髄病学会の脊椎脊髄病用語事典3)には「脊柱管を構成する骨性要素や椎間板,靱帯性要素などによって腰部の脊柱管や椎間孔が狭小となり,馬尾あるいは神経根の絞扼性障害をきたして症状の発現したもの.絞扼部によって,centralとlateralに分けられる.特有な臨床症状として,下肢のしびれと馬尾性間欠跛行が出現する」と記載されている.
North American Spine Society(NASS)のガイドライン4)では,「腰椎において神経組織と血管のスペースが減少することにより,腰痛はあってもなくてもよいが,殿部痛や下肢痛がみられる症候群と定義できる.腰部脊柱管狭窄症の特徴は,関与する因子によって症状が増悪したり軽快することである.運動や特定の体位により神経性跛行が惹起される.また,前屈位や座位の保持,あるいは安静臥床時には症状が軽快することが多い」と定義している.歴史的に腰痛のみの症例は本疾患から除外されてきた.NASSの定義で「神経性間欠跛行」ではなく「神経性跛行」という表現をしているのは,ある特定の姿勢で下肢症状がでたり,歩行にて症状がでるものの歩き続けられる患者がいるためと思われる.
腰部脊柱管狭窄症では,腰椎部の脊柱管あるいは椎間孔(解剖学的に椎間孔は脊柱管には含まれていない)の狭小化により,神経組織の障害あるいは血流の障害が生じ,症状を呈すると考えられている.しかしながら,現在のところその成因や病理学的な変化が完全には解明されておらず,定義についても上記のごとく,さまざまな意見がある.このため,腰部脊柱管狭窄症は複数の症候の組み合わせにより診断される症候群とするのが妥当である.原因が明確になれば,将来疾患として再分類あるいは再定義される可能性がある.
Verbiest 5)は「患者は歩行や立位において,馬尾障害,すなわち下肢における両側性の根性痛,感覚障害および筋力低下を示す.患者が臥位になるとそれらの症状は即座に消失し,安静時の神経学的所見には異常がない.一見すると,それらの愁訴は血管性の間欠跛行と誤解されうる.脊髄造影により硬膜外からの圧迫によるブロック像を示す」と記載している.
Arnoldi 1)は,「脊柱管,神経根管椎間孔における部分的,分節的あるいは全体的な狭小化であり,骨によるものも軟部組織によるものもあり,骨性の管のみ,硬膜管のみ,あるいは両方が狭小化しているものがある」としている.神経根管とは,神経根の分岐部から椎間孔出口までの通過管であり,前面は椎間板および椎体,後面は黄色靱帯,椎弓および関節突起間部で,内側は硬膜嚢,外側は椎弓根で形成される.
日本脊椎脊髄病学会の脊椎脊髄病用語事典3)には「脊柱管を構成する骨性要素や椎間板,靱帯性要素などによって腰部の脊柱管や椎間孔が狭小となり,馬尾あるいは神経根の絞扼性障害をきたして症状の発現したもの.絞扼部によって,centralとlateralに分けられる.特有な臨床症状として,下肢のしびれと馬尾性間欠跛行が出現する」と記載されている.
North American Spine Society(NASS)のガイドライン4)では,「腰椎において神経組織と血管のスペースが減少することにより,腰痛はあってもなくてもよいが,殿部痛や下肢痛がみられる症候群と定義できる.腰部脊柱管狭窄症の特徴は,関与する因子によって症状が増悪したり軽快することである.運動や特定の体位により神経性跛行が惹起される.また,前屈位や座位の保持,あるいは安静臥床時には症状が軽快することが多い」と定義している.歴史的に腰痛のみの症例は本疾患から除外されてきた.NASSの定義で「神経性間欠跛行」ではなく「神経性跛行」という表現をしているのは,ある特定の姿勢で下肢症状がでたり,歩行にて症状がでるものの歩き続けられる患者がいるためと思われる.
腰部脊柱管狭窄症では,腰椎部の脊柱管あるいは椎間孔(解剖学的に椎間孔は脊柱管には含まれていない)の狭小化により,神経組織の障害あるいは血流の障害が生じ,症状を呈すると考えられている.しかしながら,現在のところその成因や病理学的な変化が完全には解明されておらず,定義についても上記のごとく,さまざまな意見がある.このため,腰部脊柱管狭窄症は複数の症候の組み合わせにより診断される症候群とするのが妥当である.原因が明確になれば,将来疾患として再分類あるいは再定義される可能性がある.
文献