(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014

 
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧
エビデンスのまとめ

CQ ナンバー 83 担当者 遠藤平仁
カテゴリー 合併症・妊娠・授乳1
CQ 腎機能障害を合併したRA患者においてcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)やbDMARD(生物学的製剤)を投与した場合,投与しなかった場合と比べて予後は改善するか?
推奨文 合併症を有するRA患者に対するcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)やbDMARD(生物学的製剤)の投与は,リスクとベネフィットを考慮することを推奨する。
推奨の強さ 強い 同意度 4.72
解説  腎機能障害を有するRA患者の治療におけるcsDMARD(従来型抗リウマチ薬),bDMARD(生物学的製剤)の有効性,安全性は確立していない。腎機能が低下しているとき,腎排泄の薬剤はその血中濃度が上昇し,薬効の増強や副作用の頻度が増加する。腎機能が低下した慢性腎障害(chronic kidney disease;CKD)患者では原則として腎排泄薬剤を避け,腎排泄の寄与の少ない薬剤や非腎排泄性の薬剤を選択すべきである。腎機能に応じ1回投与量の減量や投与間隔を延長する必要がある。各薬剤の添付文書など最新の情報に基づいて検討し,患者ひとりひとりの個人差,脱水などの付加された病態,併用薬剤,特にNSAIDなどに注意して投与すべきである。bDMARD(生物学的製剤)である抗体製剤は腎排泄薬剤ではなく,添付文書にも腎機能に基づく投与制限はない。しかしCKDは原因疾患や血圧,貧血,骨ミネラル代謝異常を伴うため腎臓専門医との連携により薬剤投与によるリスクとベネフィットを十分考慮する必要がある。2次性アミロイドーシスによる腎機能障害に対するbDMARD(生物学的製剤)の有効性,安全性の少数の報告はあるが安全性を担保するものではない。腎機能障害合併例に関する安全性を確認できるエビデンスが期待される。
Q 腎機能障害を合併したRA患者においてcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)やbDMARD(生物学的製剤)の投与は有効かつ安全か?
A 腎機能障害を合併したRA患者に対するcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)やbDMARD(生物学的製剤)の投与に関する有効性,安全性は確立していない。


  エビデンスサマリー
エビデンスとして引用可能なコクランレビュ―はない。
 1980〜2012年までの文献を検索しPubMed62件中タイトル,アブストラクトから論文4件および医学中央雑誌19件から論文1件を選び,構造化抄録を作成した。
 腎機能障害合併例はすべてのbDMARD(生物学的製剤)の臨床治験において除外項目になっており,腎機能障害患者に対するcsDMARD(従来型抗リウマチ薬),bDMARD(生物学的製剤)の有効性について検証されたエビデンスはない。少数例の報告ではあるが,エタネルセプトの血液透析療法施行中RA 2症例の有効性,安全性を確認した報告がある(Senel S, et al. Clin Rheumatol. 2011;30:1369-1372,エビデンスレベル:very low)。アミロイドーシス腎機能障害合併RAに対するエタネルセプト介入試験の少数例の報告はあるが対照群がなくエビデン スとしては評価できない。ミゾリビンに関する少数例の血液透析患者に対する介入研究はあり,また多数例の介入観察研究がわが国でも行われている(八木信之,他.臨リウマチ.2010;22:73-78,エビデンスレベル:very low)。417例6ヵ月でのACR20の改善率は29.2%であり重篤な副作用は観察されていないが,厳密なRCTではなく組み入れにバ イアスがあるためエビデンスにはならない。また長期DMARD治療介入症例で腎機能変化を計測した報告はあるが,これもバイアスが多くエビデンスとして採用できない(Karstila KL, et al. Clin Exp Rheumatol. 2010;28:73-78,エビデンスレベル:very low)。
 腎機能障害患者へのすべてのbDMARD(生物学的製剤)投与の有効性,安全性は確立していない。またMTX併用は不可能であり,併用を必要とする薬剤は使用できない。現状では腎機能障害のあるRA患者にbDMARD(生物学的製剤)は投与すべきではない。
 一方csDMARD(従来型抗リウマチ薬)について,腎機能障害のある患者については臨床介入試験に際して除外項目になっており,ランダム化割り付けまたは大規模な介入観察研究はない。高度腎機能障害のあるRA患者に対するMTXは禁忌である。bDMARD(生物学的製剤)は腎排泄ではなく,添付文書上腎機能障害患者でも投与可能であり,サラゾスルファピリジンも同様である。したがって,利益が不利益に勝ると判断できるbDMARD(生物学的製剤)の使用法として,腎機能障害患者にはMTX併用にない bDMARD(生物学的製剤)投与は可能である。csDMARD(従来型抗リウマチ薬)ではサラゾスルファピリジンを選択することが可能である。しかし安全性,有効性のエビデンスを確認した研究はない。コクランレビューにおいてRA患者の疼痛管理に関するメタ解析を行っているが,NSAIDのみの評価である(Marks JL, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2011;(10):CD008952)。csDMARD(従来型抗リウマチ薬),bDMARD(生物学的製剤)に関する有効性,安全性について評価された研究はなく明確なエビデンスは存在しない。したがって,腎機能障害を有するRAに対する治療介入が必要な場合,明確なエビデンスに準拠した治療は現在確立していないことを念頭に置く必要がある。以上より,腎機能障害を合併したRAに対するcsDMARD(従来型抗リウマチ薬),bDMARD(生物学的製剤)に関するエビデンスは現在まで報告されていないため,リスクとベネフィットを考慮し治療法を選択する必要がある。
エビデンスの質
(GRADE)
very low
該当するコクランレビュー なし
書誌情報
DOI

 
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