(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014
第4章 ガイドライン作成に用いた資料一覧 |
エビデンスのまとめ |
CQ ナンバー | 67 | 担当者 | 小嶋俊久,松下 功 |
カテゴリー | 手術1 | ||
CQ | 人工肩関節置換術はRA治療において有用か? | ||
推奨文 | RA患者に対する人工肩関節置換術は除痛効果が優れており推奨する。 | 推奨の強さ | 弱い | 同意度 | 4.42 |
解説 | RAの手術の目的の1つは除痛である。これが長期により維持されることは,手術治療にとって重要なアウトカムである。人工関節自体が長期にわたり問題なく生存することも重要である。人工肩関節の再置換術をエンドポイントとした10年生存率は90%以上で,疼痛に対する効果は高い。長期間除痛が得られるという意味で,コストベネフィットは高いといえる。ただし,X線学的に肩甲骨コンポーネントのゆるみの発生頻度は少なくなく,問題といえる。また,関節機能にとって関節可動域は重要であるが,これには骨性の関節適合性のみならず関節の安定性など軟部組織も機能することが不可欠である。肩関節においては腱板が損傷している場合の可動域獲得には問題がある。すなわち,人工肩関節はデザインを含めて課題を残しているともいえる。したがって,軟部組織バランスの獲得のために,単純な人工骨頭(NeerⅡが代表的)から,より個々の患者において解剖的に適合させるため,頸体角,ネック長を調節できるものに変遷,改良が続いており,発展途上にある。以上の効果と課題より,除痛効果に対する長期的効果からRA患者に対する人工肩関節置換術を推奨するが,可動域を含む関節機能の獲得の再現性,人工関節の長期安定性の課題もあり弱い推奨とした。 | ||
Q | 人工肩関節置換術はRAの肩関節障害に対して有用か? | ||
A | 人工肩関節置換術は除痛効果に優れ有用であるが,可動域獲得については安定した成績ではない。 |
エビデンスサマリー
人工関節の生存率,臨床効果として疼痛の軽減を重要なアウトカムとし,RAに対する人工肩関節置換術について,1995年以降の論文のなかから対象症例の50%以上がRA(もしくはRA 症例のみを抽出してサブ解析している),7年以上の経過観察期間という選択基準により,コクランレビューを含む9論文を選出した。したがって,7年の経過観察期間のない最近の機種についての成績は含まれていない。手術は侵襲性のきわめて高い治療介入であり,RA手術療法の適応の原則は,既存の薬物療法で改善しない疼痛,機能障害に対して行うということである。したがって,手術をしない群との比較などのRCTは存在しない。また患者選択,手術の選択自体のランダム化割り付け,盲検化も困難であり,RCTを基準としたエビデンスレベルは低い。RAに対する人工肩関節置換術(人工骨頭置換術または全置換術)の再置換術をエンドポイントとした10年生存率は90%以上で,疼痛に対する効果は高い。しかしながら,試験の数も限られており,X線学的に肩甲骨コンポーネントのゆるみの発生頻度は少なくない(40%程度)。また,腱板が損傷されている場合には,可動域獲得にもばらつきがある。デザインの相違(セメントレス,セメント固定)による成績の相違などもさらなる検証を要する。現在も人工肩関節の開発は続いている。それぞれの機種について長期成績を検証していく必要がある。RA患者の全身的な身体機能(HAQ),疾患活動性,QOL指標に対する長期的効果のエビデンスについても今後の課題である。
エビデンスの質 (GRADE) |
low |
該当するコクランレビュー | あり |
書誌情報 | Christie A, Dagfinrud H, Engen Matre K, Flaatten HI, Ringen Osnes H, Hagen KB. Surgical interventions for the rheumatoid shoulder. Cochrane Database of Systematic Reviews 2010, Issue 1 . |
DOI | 10.1002/14651858.CD006188. pub 2 |