(旧版)関節リウマチ診療ガイドライン 2014
第2章 関節リウマチ診療ガイドライン2014 |
1.治療方針
本ガイドラインは,急速に進歩するRA診療における最新の情報をわが国の日常診療で活用することを主たる目的として作成された。作成にあたっては,最も新しいGRADEシステムを用いて,特に個々の治療法における推奨をまとめ,推奨度を決定した。全体の治療方針に関しては,既存のEULARリコメンデーションなどを最大限に活用し,わが国の医療事情に適応させることで策定した。また本ガイドラインはリウマチ専門医を対象にしたものである。
RAは関節炎を主徴とする慢性炎症性疾患であり,肺など多臓器にも病変が波及しうる全身性疾患でもある。関節炎が遷延すれば関節が破壊されることにより重篤な機能障害を呈して,著しいQOLの低下をきたす。さらに,RAが進行すれば,肺などの臓器病変やアミロイドー
シスの出現・進行,感染症や心血管病変の合併などによって生命予後も悪化する。
RAの主病変は滑膜炎であり,関節痛やこわばりなどの臨床症状を呈するが,滑膜炎が持続することにより破骨細胞の活性化による関節破壊と,マトリックスメタロプロテアーゼなどの過剰産生による軟骨破壊が生じ,最終的に関節変形に至る。
RA診療は過去15年間で飛躍的に進歩したが,現在の治療手段はすべてRAの病態を改善することにより臨床症状を改善させ,関節破壊の進行を防止するものである。 残念ながらRAの病因に対するアプローチはまだ十分ではなくRAを予防することは不可能であり,またRAを根治させることを目指す治療は実用化されていない。
したがって,現時点におけるRAの治療目標と治療方針を以下のように定める。
RAの主病変は滑膜炎であり,関節痛やこわばりなどの臨床症状を呈するが,滑膜炎が持続することにより破骨細胞の活性化による関節破壊と,マトリックスメタロプロテアーゼなどの過剰産生による軟骨破壊が生じ,最終的に関節変形に至る。
RA診療は過去15年間で飛躍的に進歩したが,現在の治療手段はすべてRAの病態を改善することにより臨床症状を改善させ,関節破壊の進行を防止するものである。 残念ながらRAの病因に対するアプローチはまだ十分ではなくRAを予防することは不可能であり,またRAを根治させることを目指す治療は実用化されていない。
したがって,現時点におけるRAの治療目標と治療方針を以下のように定める。
治療目標
臨床症状の改善のみならず,関節破壊の抑制を介して長期予後の改善,特に身体機能障害の防止と生命予後の改善を目指す。
治療方針
● | 関節炎をできるだけ速やかに鎮静化させて寛解に導入し,寛解を長期間維持する。 |
● | 合併病態の適切な管理と薬剤の適正使用によって有害事象の発現を予防あるいは低減し,もしも生じた場合には適切に対応する。 |
● | 関節破壊に起因する機能障害を生じた場合には,適切な外科的処置を検討する。 |
● | 最新の医療情報の習得に努め,日常診療に最大限適用する。 |
● | 治療法の選択には患者と情報を共有し,協働的意思決定(shared decision making)を行う。 |
RA治療の中心は,疾患活動性の制御と長期予後の改善を目的に投与するcsDMARD(従来型抗リウマチ薬),bDMARD(生物学的製剤),ステロイドであり,この3種類の薬剤をどの時点でどのように投与するかのRA治療アルゴリズムが治療方針では重要である。
RA治療アルゴリズムに関しては,EULARやACRに設立された特別委員会(task force)がエビデンスを検証して作成してきた。すでにガイドラインやリコメンデーションが発表されており,その多くは定期的に更新(update) されている。
本来であれば,「関節リウマチ診療ガイドライン2014」を作成するにあたって日本独自の治療アルゴリズムを構築するべきであるが,治療アルゴリズム自体は世界中の共通認識であり,わが国のみの国内事情による影響は少ないと考えられること,治療アルゴリズムに関する多くのエビデンスは日本以外で構築されたものであるために,わが国に特化した治療アルゴリズムの構築は困難であることなどから,今回の関節リウマチ診療ガイドライン作成分科会(以下,ガイドライン作成分科会)では,わが国独自の治療アルゴリズムは作成せず,既存のガイドラインやリコメンデーションを掲載して解説し,日常診療で利用することとした。
現時点で最も新しい治療推奨は,EULARリコメンデーション2013更新版1)である。“Treat to Targe(T2T)”の考え2)を取り入れたEULARリコメンデーション20103)を,基本的な考え方は同じであるが,薬剤に関するエビデンスの追加によりアップデートしたもので,より臨床に即応した具体的なものになっており,日本のRA診療に応用しうるものである。
本ガイドライン作成分科会では,この推奨を一部修正したうえで応用し,日常診療における治療方針とすることにした。
推奨文に関しては,csDMARD(従来型抗リウマチ薬)が海外と異なることを勘案して文章を改変した。特にレフルノミドの使用については,日本人における副作用リスクを強調した推奨文とした。また,日本の適応にないEULARリコメンデーション推奨9のリツキシマブを削除した。
治療アルゴリズムに関しては,日本の適応にない薬剤を除外するなどして変更を加えた。
本ガイドラインの推奨と治療アルゴリズムを次頁にまとめたので参照されたい。
なお,トファシチニブに関しては,現在日本で対照群をおいた全例市販後調査が実施中である。投与にあたってはJCRガイドラインを参照する必要がある。なお,bDMARD(生物学的製剤)無効例に対するトファシチニブの有効性,安全性は日本人で確認されていない。また,トファシチニブ無効例に対するbDMARD(生物学的製剤)の有効性,安全性は日本人で確認されていない。今後エビデンスの追加により,本ガイドラインに収載する可能性がある。
その他,EULARリコメンデーションでは,個々の薬剤の投与法に対する別個の推奨を更新しているので参考に されたい4)-6)。
RA治療アルゴリズムに関しては,EULARやACRに設立された特別委員会(task force)がエビデンスを検証して作成してきた。すでにガイドラインやリコメンデーションが発表されており,その多くは定期的に更新(update) されている。
本来であれば,「関節リウマチ診療ガイドライン2014」を作成するにあたって日本独自の治療アルゴリズムを構築するべきであるが,治療アルゴリズム自体は世界中の共通認識であり,わが国のみの国内事情による影響は少ないと考えられること,治療アルゴリズムに関する多くのエビデンスは日本以外で構築されたものであるために,わが国に特化した治療アルゴリズムの構築は困難であることなどから,今回の関節リウマチ診療ガイドライン作成分科会(以下,ガイドライン作成分科会)では,わが国独自の治療アルゴリズムは作成せず,既存のガイドラインやリコメンデーションを掲載して解説し,日常診療で利用することとした。
現時点で最も新しい治療推奨は,EULARリコメンデーション2013更新版1)である。“Treat to Targe(T2T)”の考え2)を取り入れたEULARリコメンデーション20103)を,基本的な考え方は同じであるが,薬剤に関するエビデンスの追加によりアップデートしたもので,より臨床に即応した具体的なものになっており,日本のRA診療に応用しうるものである。
本ガイドライン作成分科会では,この推奨を一部修正したうえで応用し,日常診療における治療方針とすることにした。
推奨文に関しては,csDMARD(従来型抗リウマチ薬)が海外と異なることを勘案して文章を改変した。特にレフルノミドの使用については,日本人における副作用リスクを強調した推奨文とした。また,日本の適応にないEULARリコメンデーション推奨9のリツキシマブを削除した。
治療アルゴリズムに関しては,日本の適応にない薬剤を除外するなどして変更を加えた。
本ガイドラインの推奨と治療アルゴリズムを次頁にまとめたので参照されたい。
なお,トファシチニブに関しては,現在日本で対照群をおいた全例市販後調査が実施中である。投与にあたってはJCRガイドラインを参照する必要がある。なお,bDMARD(生物学的製剤)無効例に対するトファシチニブの有効性,安全性は日本人で確認されていない。また,トファシチニブ無効例に対するbDMARD(生物学的製剤)の有効性,安全性は日本人で確認されていない。今後エビデンスの追加により,本ガイドラインに収載する可能性がある。
その他,EULARリコメンデーションでは,個々の薬剤の投与法に対する別個の推奨を更新しているので参考に されたい4)-6)。
治療原則
● | RA診療は最善のケアを目指すものであり,患者とリウマチ専門医の協働的意思決定に基づく。 |
● | リウマチ専門医はRA患者のケアを行うスペシャリストである。 |
● | RA治療は個人的,社会的,医療費的に大きな負担を生ずるものであり,リウマチ専門医はこれらすべてを勘案して治療に当たらねばならない。 |
推奨
● | csDMARD(従来型抗リウマチ薬)の治療は,診断が下ればできるだけ早く始めるべきである。 |
● | すべての患者において,寛解あるいは低疾患活動性を目指して治療すべきである。 |
● | 高疾患活動性の患者では,患者評価を頻回(1〜3ヵ月ごと)に行うべきである。もし治療開始後3ヵ月以内に改善がみられない場合,または6ヵ月以内に治療目標が達成できない場合は,治療を再考すべきである。 |
● | MTXは,活動性RA患者に対する最初の治療手段の1つに含めるべきである。 推奨 1〜5 |
● | MTXが禁忌であるか,早期に使えなくなった場合は,サラゾスルファピリジンなど他の
csDMARD(従来型抗リウマチ薬)を最初の治療手段の1つに含めるべきである。ただし,レフルノミドは日本人における副作用発現のリスクを十分に勘案し,慎重に投与する。 推奨 6〜11 |
● | DMARD未使用の患者では,ステロイド使用の有無にかかわらず,csDMARD(従来型抗リウマチ薬)を単剤で開始すべきである。有効性が得られない場合は他のcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)を追加して併用療法を考慮する。 推奨1, 2, 6〜11 |
● | 低用量ステロイドは,1つまたはそれ以上のcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)と併用していれば,最初の治療手段の1つとして治療開始後6ヵ月までは考慮すべきである。ただし臨床的に可能なかぎり早期に減量すべきである。 推奨 13 |
● | 最初のcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)治療により治療目標が達成できない場合,予後不良因子がなければ他のcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)への変更を考慮し,予後不良因子があればbDMARD(生物学的製剤)の追加併用を考慮すべきである。 推奨 2〜4, 14〜21 |
● | MTX単独または他のcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)による治療戦略で十分な効果が得られない患者に対しては,ステロイド使用の有無にかかわらず,bDMARD(生物学的製剤)(TNF阻害薬,アバタセプト,トシリズマブ)をMTXとともに開始すべきである。 推奨 14〜21 |
● | 最初のbDMARD(生物学的製剤)が奏効しない場合は,他のbDMARD(生物学的製剤)を使うべきである。最初のTNF阻害薬が奏効しない場合は,別のTNF阻害薬または作用機序の異なるbDMARD(生物学的製剤)を使ってもよい。 推奨14〜21 |
● | トファシチニブはbDMARD(生物学的製剤)治療が奏効しない場合の選択肢としてもよい。 |
● | bDMARD(生物学的製剤)投与中の患者でステロイドを減量後も寛解が維持できていれば, 特にcsDMARD(従来型抗リウマチ薬)併用例の場合にはbDMARD(生物学的製剤)の減量を考慮できる。 |
● | 長期間寛解が維持できれば,患者と医師の意思共有のうえでcsDMARD(従来型抗リウマチ 薬)の投与量を慎重に減量することを考慮してよい。 |
● | 治療を再考する場合に,疾患活動性以外の要素,構造的破壊の進行,合併症,安全性に関わる
問題なども考慮すべきである。 推奨 36, 37 |
■ 関節リウマチ診療ガイドライン2014 治療アルゴリズム
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References