(旧版)科学的根拠に基づく「快適な妊娠出産のためのガイドライン」
Research Question
RQ10 ルーチンの点滴
科学的根拠(文献内容のまとめ)
欧米では、産婦が分娩時に氷片程度しか摂取しなかった時代があり、そのため分娩時のルーチンの点滴の主な目的は水分補給だった。日本では分娩時の大量出血に備えて予防的に血管確保するリスク管理の目的でルーチンに実施されている。従って、分娩時の点滴の有無による比較研究、あるいはルーチンで点滴をする場合と選択的に点滴をする場合とを比較して検証した文献はなかった。
分娩時の出血量について、日本の1次〜2次分娩施設における数施設のデータを見ると、500mL未満が約78〜89%(文献2はハイリスク施設で58%)、500mL以上の出血が11〜22%(文献2は43%)、1000mL以上の出血が2.3〜4.1%(文献2は15.6%)であった。
今回の本研究班の母親を対象とした全国調査によれば、分娩時に点滴を受けたのは全数3852名中2275名(65.7%)、施設別では大学病院で82.8%、一般病院71.1%、診療所67.3%、助産所3.5%の産婦に点滴が行われていた。このうち、経膣分娩正期産単胎例の62.3%、陣痛誘発・促進例を除くと55.8%の産婦に点滴を実施していた。この全国調査による帝王切開率15.8%、母親の回答による分娩時出血多量は全数の9.2%、分娩時特に異常無かったとの回答65.8%であった。
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