(旧版)科学的根拠に基づく「快適な妊娠出産のためのガイドライン」

 
Research Question

 
RQ9 ルーチンの会陰切開

研究の内容

文献名 研究デザイン 簡単なサマリー EL
Hartmann K, Viswanathan M, Palmieri R, Gartlehner G, Thorp J Jr, Lohr KN. Outcomes of routine episiotomy: a systematic review. JAMA. 2005; 293(17): 2141-8. RCTのメタアナリシス routineに行う会陰切開とrestrictiveに行う会陰切開の母体に与える影響の比較についてエビデンスを得るためにレヴューを行った。MEDLINE、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Cochrane Collaboration resources、1950年から2004年までの英文論文、の中から経膣分娩時の会陰の外傷の転帰に関して考察してあり、40例以上の症例数のあるRCTのオリジナル論文。986件の論文が抽出され、このうち26件が検討対象となった。
(1) 母体の分娩後の経過の検討にあたり、7件のrestrictiveな会陰切開とroutineの会陰切開を比較したRCT(n=5001)が対象。うち4件は本構造化抄録に収載されている。
restrictiveな会陰切開の定義は、厳格なものは胎児適応の場合のみの会陰切開としており、緩やかなものは医学的に必要と認めた場合のみの会陰切開としており、挫滅を起こしそうな場合の施行については定義も分かれている。
会陰切開の定義は、ルーチンに行われる通常のケア、または選択的に行うとしている。
1正常な会陰部が維持されている:routine vs. restrictive:RR: 0.46(0.30-0.70)
23度4度裂傷は、4件がroutine群で多く、2件がrestrictive群で多いとしている。
3直腸への外傷:routine vs. restrictive:RR:1.13(0.78-1.65)
4会陰前方の裂傷は、4件がrestrictive群で多く、1件がroutine群で多いとしている。
5縫合を要したもの:routine vs. restrictive:RR:1.26(1.08-1.48)、(前方裂傷は要しない)
(2) 疼痛に関する検討の対象となった論文は5件(うち4件は構造化抄録に収載)
他の1件の結果は、703例に対して分娩後1、2、10日後の疼痛をMcGill Pain Scaleで検討して両群間に有意差なし。
(3)治癒過程については2件の論文(構造化抄録に収載)で検討がなされ、血腫形成、感染、治癒過程での合併症に関して両群間で有意差なし。
(4)母体出血量については2件の論文(構造化抄録に収載)で検討がなされ、1件は母体ヘモグロビン値の変化で両群に有意差なし、1件はroutine群で出血量が58mL多かった。
(5)正中切開と正中側切開の比較は1件のRCTでなされた(前述の7件とは別)。
1正中切開でより多くの合併症が起こった(p<0.001)。
2肛門括約筋への創の延長は、正中側切開で9%、正中切開で24%であった。
3正中切開群では会陰部の創は小さかった(p<0.001)。
4疼痛には有意差はなし。
53ヵ月後の検討で、正中切開群の方がより早く性交渉を復活させており(p<0.01)、創の美容上の形態も良好であった(p<0.02)。
(6)尿失禁、便失禁、骨盤底脆弱化に関する検討は、16件の論文(12RCTと4コホート研究)がある。
13ヶ月または3ヵ年の研究で、尿失禁に関し有意な結果の出た研究はなかった。
2会陰切開群vs自然裂傷群で尿失禁に関する症候の有無は、RCT:RR1.02(0.83-1.26)、コホート:RR0.88(0.72-1.07)、であり、有意差はない。
3便失禁に関しても会陰切開の有無で有意な結果の出た研究はなかった。
4類似した2件の論文を併せて検討すると、会陰切開群vs非会陰切開群での便またはガス失禁の有無の比較は、RR1.91(1.03-3.56)となる。
(7)性機能に関する検討は9研究(4RCTと5コホート研究)あり。
11研究で、分娩後1か月での性交渉開始は、restrictive群で37%、routine群で27%(p<0.01)。しかし、3か月での性交渉開始、性交痛は両群間で有意差なし。
21研究で、性交渉開始はrestrictive群がroutine群に比し1週間早い。しかし3か月後の調査では両群間で差はない。
3コホート研究からは、会陰切開の有無で性機能の差はない。ただ、会陰切開群で分娩後3か月の性交渉時の痛みが多い傾向があったRR:1.53(0.93-2.51)。
結論:routineな会陰切開により母体の受ける利点は総合的にみて少ない。
1+
Dannecker C, Hillemanns P, Strauss A, Hasbargen U, Hepp H, Anthuber C. Episiotomy and perineal tears presumed to be imminent: randomized controlled trial. Acta Obstet Gynecol Scand. 2004; 83(4): 364-8. RCT 会陰裂傷が考えられる時、どのような適応に基づいて会陰正中側切開を行えば切開施行率を減らし会陰部を正常に保つことができ、かつ母児に悪影響を与えないか、を検討した。胎児適応においてのみ会陰切開を行う方針(restrictive)と、胎児適応に加えて、裂傷が起こりそうな時に切開をする方針(liberal)を比較した。対象者は146人の34週を過ぎた初産単胎産婦のうち、経膣分娩となった109人である。
Restrictive policyでのliberal policyに対するrelative risk(RR)で表示
episiotomy施行RR:0.47(95%CI:0.3-0.7)
会陰が正常に保たれるRR:2.9(95%CI:1.2-6.9)
軽微な会陰外傷を起こすRR:2.9(95%CI:1.6-10.5)
3度裂傷を起こすRR:0.43(95%CI:0.1-2.1)
外陰前方外傷を起こすRR:1.1(95%CI:0.8-1.8)
産褥5日間で最大の会陰部痛のVAS値(0-100mm)のさまざまな体勢での左右差は、
臥床時(R:22, L:39)16(95%CI:2-30)(p=0.025)
座位時(R:51, L:69)18(95%CI:5-31)(p=0.009)
歩行時(R:37, L:56)19(95%CI:6-33)(p=0.005)
排便時(R:21, L:36)15(95%CI:0-30)(p=0.048)
退院までの日数は、R:4.2、L:4.4、差は-0.22(95%CI:-0.98-0.53)(p=0.62)
ヘモグロビン値の変化に差は、どちらも1.3mg/dLで、差は0.02mg/dL(95%CI:-0.56-0.61)(p=0.94)
児の指標、1分後、2分後、5分後、10分後のアプガースコア、臍帯動脈血pH平均値、7.15未満のものの数には両者で差はなし。
結論:会陰部正中側切開を会陰裂傷が起こりそうな時に施行しても、極力回避する場合と比較して利点はなく、会陰裂傷が起こりそうな時を切開の適応とするのは不適当である。
1++
Carroli G, Belizan J. Episiotomy for vaginal birth. Cochrane Database Syst Rev. 1999; (3).: CD000081. RCTのメタアナリシス 経膣分娩における制限した会陰切開の効果をルーチンに行った場合と比較するためにCochrane Pregnancy and Childbirth Group trials registerを検索し、会陰切開を制限して用いた方法(restrictive use)とルーチンに会陰切開を行う方法(routine use)を比較したRCTを抽出した。
6件のRCTが検討対象である。
例数は、restrictive use:2441、routine use:2409であった。
会陰切開を行った例の比率は、restrictive use:27.6%、routine use:72.7%
以下、routine useに対するrestrictive useの相対リスク(95%CI)で表示
会陰後方外傷:0.88(0.84-0.92)
縫合を要した例:0.74(0.71-0.77)
治癒過程での合併症:0.69(0.56-0.85)
会陰前方外傷:1.79(1.55-2.07)
重度の膣壁または会陰の外傷:1.11(0.83-1.50)
性交痛:1.02(0.90-1.16)
尿失禁:0.98(0.79-1.20)
切開方法として正中側切開でも正中切開でも検討結果は同様であった。
結論:restrictive useは、routine useと比較して会陰後方外傷、縫合必要例、治癒過程での合併症の3点で優れており、restrictive useの方が好ましくない結果であったのは、会陰前方外傷が多かった点だけであり、routine useに比してrestrictive useの方が利点は多い。
1++
Routine vs selective episiotomy: a randomised controlled trial. Argentine Episiotomy Trial Collaborative Group. Lancet. 1993; 342(8886-8887): 1517-8. RCT 可能なかぎり会陰切開を行うことを避け、胎児に起因する理由または重度の会陰外傷が起こりそうなときだけ会陰切開をする(selective)方法と会陰切開を避けるトライアルを行う前にその病院の方針に従って会陰切開をする(routine)方法について、その効果と裂傷の出現頻度について比較する。対象者は初産または1回経産婦で、selective:1298人,routine:1308人。
会陰切開が施行された率は、selective:30.1%、routine:82.6%
以下、selective群のroutine群に対するリスク比で表示
重度裂傷:selectiveの方が少ない、RR:0.78(0.40-1.54)
3度裂傷:selectiveの方が多い、RR:1.38(0.84-2.21)
前方裂傷:selectiveの方が多い、RR:2.36(1.89-2.94)
後方裂傷修復術:selectiveの方が少ない、RR:0.72(0.68-0.75)
1分後アプガースコア(<7):selectiveの方が多い、RR:1.09(0.71-1.67)
退院時疼痛:selectiveの方が少ない、RR:0.72(0.65-0.81)
退院時血腫:selectiveの方が少ない、RR:0.96(0.65-1.42)
7日後合併症:RR:0.69(0.56-0.85)
7日後感染:RR:0.91(0.37-2.21)
7日後離開:RR:0.45(0.30-0.75)
結論:重度会陰裂傷の発生に両群間で差はなく、ルーチンに会陰切開を行う必要性は否定される。また、創治癒過程での合併症の頻度からもルーチンに行う会陰切開は否定的である。
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House MJ, Cario G, Jones MH. Episiotomy and the perineum: a random controlled trial. J Obstet Gynaecol. 1986; 7(2): 107-10 RCT control groupとして、会陰切開を胎児ジストレスの場合のほか、母体の理由によっても行うものとした。study groupとして、control groupと同様に観察するが、裂傷が起こりそうであることを理由としての会陰切開はしないものとした。
例数は、study groupが初産:50例、経産:44例、control groupが初産:48例、経産:23例であった。
会陰切開を行った例の比率は、study groupが初産:32%、経産:2%、control groupが初産:79%、経産:48%であった。
会陰無傷または1度裂傷は、初産は32% vs 4%でstudygroupが多い(p<0.001)。
経産は54% vs 26%でstudygroupが多い(p<0.05)。
2度裂傷は、初産は36% vs 17%でstudygroupが多い(p<0.05)。経産は43% vs 22%で有意差なし。
3度裂傷は、経産control groupで1例みられたのみで、比較解析は不能である。
分娩所要時間、アプガースコアには両群間で有意差なし。
出血量は、study groupが214±162mL、control groupが272±160mL、(p=0.01)
分娩3日後の疼痛は、study groupでmoderate:18%,severe:3%、control groupでmoderate:39%,severe:10%と有意差があった(p=0.001)。
6週間後、3ヵ月後は両群間で有意差なし。
結論:会陰切開を児適応に制限して行った方が会陰の裂傷の頻度が少なく、適応を広げて会陰切開を行うことに明らかな優位性は認められなかった。
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Sleep J, Grant A, Garcia J, Elbourne D, Spencer J, Chalmers I. West Berkshire perineal management trial. Br Med J (Clin Res Ed). 1984; 289(6445): 587-90. RCT 会陰切開を、胎児の緊急性のある場合に限って行う群(restrictive policy)と比較的自由な適応で行う群(liberal policy)に分け、比較した。1982年の研究期間(5ヶ月間)に、満37週以降の頭位、単胎で経膣分娩が期待される1000例が対象である。
restrictive policy:498例、liberal policy:502例であった。
実際に会陰切開が施行された率はそれぞれ、restrictive policy:10.2%、liberal policy:51.4%であり、初産、経産に分けると、それぞれの群で、17.9%,5.1%;67.1%,39.2%であった。
restrictivepolicyの方が、後方会陰裂傷を起こした例の比率と無傷であった例の比率が、liberal policyに比し有意に大きかった(p<0.0001)。また、restrictive policyでは前方陰唇裂傷がliberalpolicyに比し有意に多かった(RR:1.52,95%CI:1.19-1.94,p<0.001)。
liberal policyの方が、restrictive policyに比し、縫合を必要とする例が有意に多かった(78% vs 69%,p<0.01)。この差は初産婦で顕著。
1分後アプガースコア7点未満、10日間NICUに収容された児の比率、分娩10日後に経口鎮痛薬を服用した母体の比率、会陰部の痛みを訴えた母体の比率(10日後・3か月後)は有意差なし。
出産後1ヶ月で性交渉を開始している比率は、restrictive policyで37%、liberalpolicyで27%であり、有意差がある(p<0.01)が、3か月後の比率は全体で約90%であり、両群間で差はない。最初の1か月は会陰部無傷例の比率を反映している可能性あり。
最初の性交渉での性交痛は有意差なし。3か月後に尿漏れを認め、経産婦に多い傾向があるが、両群間では有意差はない。
したがって、liberalに会陰切開を行うことの有利性はほとんどないといえる。会陰切開等の産科手術を減らすことが産後の生活の回復につながる可能性がある。
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