(旧版)科学的根拠に基づく「快適な妊娠出産のためのガイドライン」
Research Question
RQ7 医師や助産師の継続ケアを受けているか
科学的根拠(文献内容のまとめ)
産科医または助産師による継続ケアに関する研究は、地域密着型のプライマリー施設での医師と助産師との協働による継続ケアの有無に関するRCT、第3次医療機関(病院内)で助産師の継続ケアの有無に関するRCTで、いずれも病院内での様々な医師や助産師・産科スタッフによる標準的ケアを対照としている。日本では本研究班の疫学調査の他には一般化できる文献は検索できなかった。
日本における疫学調査では、同一の医師や助産師に継続的なケアをうけた女性は心身の理解、安心感、尊重された感覚、および満足度が有意に高かった。医療介入の実施率は医師による継続診療の有無による差はないが、助産師に継続ケアを受けた女性(全数、ローリスクでも)では、医療介入が有意に少なく、自然分娩、助産ケア、早期授乳等が有意に多かった。母子の妊娠・分娩経過、生後1か月の母乳率など臨床結果は継続ケアの有無による差は無かった。
RCTのシステマティックレビューは、日本は含まれていないが先進国数カ国の研究を含み、多くの分析がされていた。このレビューによると、妊娠全期にわたって継続ケアを受けた女性は、分娩期においても医療介入がより少なく、継続ケアは女性によって高く評価されている。オーストラリアの2つのRCTがある。
1つは、地域密着型の助産師と医師の協働による継続的なチームケアのRCTである。地域の6人の助産師が地域の2クリニックで各々助産師2名と産科医1名がチームで妊娠から産後まで継続ケアを行い、病院での産科医と助産師との標準的な周産期ケアと比較した。その結果、地域での継続ケアは帝王切開を減少させ、その他の出産時と出生児(周産期死亡および新生児の入院率)の臨床結果には有意な差は認められなかった。従って、プライマリー施設での助産師と医師の協働による継続ケアの安全性を否定する証拠は見いだせなかった。地域での継続ケアモデルは自分で陣痛をコントロールできた感じと出産体験への評価が高い。
2つ目は、第3次医療機関(病院内)で助産師が継続的なチームケアを行ったRCTである。当病院内で7人の助産師が産科スタッフと協力して妊娠から産褥期までチームで継続ケアを行い、妊娠中定期的にMedical checkする以外は助産師が毎回診察し、一方、同じ院内で医師と助産師による標準ケア(8割が医師)と比較した。その結果、継続ケアグループの女性は分娩促進、CTG、麻薬もしくは硬膜外麻酔の使用が少なかった。継続チームケアの女性の方が会陰切開は少なかったが、縫合を必要としない程度の裂傷が多かった。標準的なケアの子どもは早産でNICUに5日間有意に長く入院し、チームケアの子どもはIUGRで保育室に5日間長く入院したが、特別なケアをする育児室への入院の合計数、早産、IUGR、周産期死亡に有意差はなかった。助産師チームによるケアは、妊娠中の満足度が有意に高く、分娩時、産褥期のケアの満足度も高く、肯定的な評価をしていた。
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