(旧版)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版

 
第3章 高尿酸血症・痛風の治療
3.合併症・併発症を有する患者の治療

2.尿路結石

●ステートメント
飲水指導は,尿量を2,000mL/日以上確保することが目標である。
エビデンス2bコンセンサス2推奨度B

尿路結石を合併する高尿酸血症の治療薬は,尿酸生成抑制薬が第一選択である。
エビデンス3コンセンサス1推奨度B

尿酸排泄促進薬は尿酸結石の形成を促進させるため,原則として尿路結石を合併している症例には使用しない。
エビデンス3コンセンサス2推奨度B

尿アルカリ化はクエン酸製剤を中心とし,尿pH は6.0~7.0 の維持を目標とする。並行してプリン体摂取制限などの食事療法が必要である。
エビデンス3コンセンサス2推奨度B

高尿酸尿(症)を伴うシュウ酸カルシウム結石の再発防止には,尿酸生成抑制薬や尿アルカリ化薬が有効である。
エビデンス1bコンセンサス1推奨度A

尿酸結石の治療は,体外衝撃波砕石術(ESWL)が中心となるが,尿アルカリ化薬や尿酸生成抑制薬による結石溶解療法も選択肢となる。
エビデンス2bコンセンサス1推奨度B


   尿路結石の既往のある高尿酸血症や痛風を有する患者を治療する際,尿路管理として,①どのように新たな尿路結石の発生を防止するか,②どのように既存の尿路結石を治療するか,に大別される。

1.尿路結石の発生防止
尿酸結石の発生予防がその中心である。尿酸結石の主な危険因子として,①尿量低下あるいは水分摂取不足,②尿中尿酸排泄量の増加,③酸性尿の存在,が挙げられる1)2)。これに食事性の要因であるプリン体過剰摂取が加わると尿酸結石の発生リスクがさらに上昇する。したがって,これらを是正することにより,尿酸結石の形成を阻止することは可能である。
   飲水指導は,尿中に排出される尿酸の飽和度を減じることが目的であり,実際には2,000~2,500mL/日程度の水分摂取により,尿量を2,000mL/日以上確保することが目標である3)。水分の補給源として,アルコール,糖分やプリン体を多く含むものは避ける。
   高尿酸血症が尿酸産生過剰型で,尿中尿酸排泄量の増加をきたしている場合は,尿酸生成抑制薬(アロプリノールもしくはフェブキソスタット)の使用が適応となる。尿酸生成抑制薬は,ヒポキサンチンをキサンチンに分解するための酵素(キサンチンオキシダーゼ)を抑制する。結果として尿中にキサンチンが多く排出されるものの,臨床的に問題とはならないと考えられているが,アロプリノールの長期投与や大量投与により,稀にキサンチン結石の発生をみるため注意を要する4)
   高尿酸尿(症)を惹起させる薬剤,特に尿酸排泄促進薬(プロベネシド,ブコローム,ベンズブロマロン)は,尿アルカリ化やプリン体摂取制限が不十分だと尿酸結石の形成を促進させる5)。したがって,尿路結石を合併している症例には,原則として尿酸排泄促進薬を使用すべきではない。一方,尿路結石の既往がある症例で,高尿酸血症の是正のためにやむなく尿酸排泄促進薬を選択せざるを得ない場合は,尿pH と尿量に留意しながらきわめて慎重に投与する。
   尿中尿酸の溶解度は,尿pH5.0では15mg/dL,尿pH7.0では200mg/dL であり4),pH の上昇に伴い,飛躍的に溶解度が増す。そのため,高尿酸血症や痛風の尿路管理において,尿アルカリ化は必須の事項である。
   尿アルカリ化薬は,かつては重炭酸ナトリウム(重曹)が使用されたが,ナトリウム過剰負荷の危険性があるため,現在はクエン酸製剤(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物)を使用することが多い。実際,重炭酸ナトリウムとクエン酸製剤の臨床検討において,クエン酸製剤が優れた尿アルカリ化効果を有することが示された6)。尿酸結石患者における検討でも,クエン酸カリウム,クエン酸ナトリウムともに尿pH を上昇させ,尿中クエン酸排泄量が増加した7)。体内でのクエン酸動態として,クエン酸は摂取後,肝臓で速やかに代謝され,重炭酸イオンを生成,腎尿細管からの排泄に伴って尿のアルカリ化効果を発揮すると考えられている8)
   本邦で使用可能なクエン酸製剤はカリウムを含むため,血清カリウム値には留意する。過度の尿アルカリ化(尿pH7.5以上)は,リン酸カルシウムや尿酸ナトリウムの析出を促進するため,尿pH は6.0~7.0の維持を目標とする。
   なお食事療法については後述するが,動物性蛋白質摂取の制限,特にプリン体摂取の制限が有効である。
   高尿酸尿(症)を伴うシュウ酸カルシウム結石症の再発予防としては,尿酸生成抑制薬が有効である。高尿酸血症,または高尿酸尿(症)を有する多発性カルシウム結石患者に,アロプリノール(200mg/日)を約2年間投与すると,結石再発はアロプリノール投与前に比し,有意に減少した9)。プラセボとの二重盲検試験では,アロプリノール投与(300mg/日)によりシュウ酸カルシウム結石の再発率が有意に低下した10)。一方,尿アルカリ化薬については,クエン酸カリウムの投与でシュウ酸カルシウム結石の再発を抑制したと報告されている11)


2.既存の尿路結石の治療
1.積極的治療
現在,尿路結石の破砕と摘除は,体外衝撃波砕石術(extracorporeal shock wave lithotripsy ; ESWL)と経皮的腎・尿管砕石術,経尿道的尿管砕石術などの内視鏡的治療が第一選択である。尿酸結石も例外ではないが,尿酸結石はX 線陰性であるため,そのイメージングには工夫を要する。ESWLの際,尿アルカリ化を併用した良好な治療成績12)も報告されている。

2.結石溶解療法
   なんらかの事情でESWL などの積極的治療が選択できないときには,十分な水分摂取の下,尿アルカリ化薬の内服により,既存の尿酸結石を溶解させることも可能である13)14)。その際,尿酸生成抑制薬が併用されることも多い。ただし結石の完全溶解には,通常,長期間を要し,尿の過度のアルカリ化はリン酸カルシウム結石の発生を,もしナトリウムなどが尿中に多ければ尿酸塩の析出を促進するため注意が必要である。

文献
1)Shekarriz B, Stoller ML : Uric acid nephrolithiasis ; Current concepts and controversies. J Urol 168 :1307-1314,2002エビデンス3
2)Low RK, Stoller ML : Uric acid-related nephrolithiasis. Urol Clin North Am 24 :135-148,1997エビデンス3
3)Rodman JS, Sosa RE, Lopes MA : Diagnosis and treatment of uric acid calculi. in Kidney stones ; Medical and surgical management, ed by Coe FL, Favus MJ, Pak CYC, et al. Philadelphia, Lippincott-Ravens Publishers,980-982,1996エビデンス3[SY追加]
4)Klinenberg JR, Goldfinger SE, Seegmiller JE : The effectiveness of the xanthine oxidase inhibitor allopurinol in the treatment of gout. Ann Intern Med 62 :639-647,1965エビデンス3[SY追加]
5)Gutman AB, Yü TF : Uric acid nephrolithiasis. Am J Med 45 :756-779,1968エビデンス3
6)上田泰,御巫清允,熊谷朗,他:尿アルカリ化剤CG-120(ウラリットU)の臨床評価;重曹を対照とした多施設非盲検 Well-controlled traial. Clin Evol 9:421-433,1981エビデンス2a[SY追加]
7)Sakhaee K, Nicar M, Hill K, et al : Contrasting effects of potassium citrate and sodium citrate therapies on urinary chemistries and crystallization of stone-forming salts. Kidney Int 24 :348-352,1983エビデンス3
8)小川由英,宇治康明:CG-120投与の健常人に及ぼす影響;単回投与試験.薬理と治療14:5251-5272,1986エビデンス2a[SY追加]
9)Coe FL, Raisen L : Allopurinol treatment of uric-acid disorders in calcium-stone formers. Lancet 1 :129-131,1973エビデンス3
10)Ettinger B, Tang A, Citron JT, et al : Randomized trial of allopurinol in the prevention of calcium oxalate calculi. N Engl J Med 315 :1386-1389,1986エビデンス1b[SY追加]
11)Pak CY, Fuller C, Sakhaee K, et al : Long-term treatment of calcium nephrolithiasis with potassium citrate. J Urol 134 :11-19, 1985エビデンス3[SY追加]
12)Ezzat MI : Treatment of radiolucent renal calculi using ESWL combined with urine alkalinization. Int Urol Nephro 22 :319-323,1990エビデンス3
13)Kursh ED, Resnick MI : Dissolution of uric acid calculi with systemic alkalization. J Urol 132 :286-287,1984エビデンス3[SY追加]
14)Moran ME, Abrahams HM, Burday DE, et al : Utility of oral dissolution therapy in the management of referred patients with secondarily treated uric acid stones. Urology 59 :206-210,2002エビデンス3


本ページは、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第2版[2012年追補版]』にもとづいて作成しています。

 
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