(旧版)不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)
II.臨床心臓電気生理検査 |
(2)頻脈性不整脈
治療効果判定を目的とした心臓電気生理検査
Class I:
- 持続性単形性心室頻拍における薬効及び催不整脈作用の評価
- 心室頻拍に対するカテーテルアブレーション後の慢性期評価が必要な場合
- 房室結節リエントリー性頻拍または房室回帰頻拍の薬効判定
- 洞結節リエントリー性頻拍,心房頻拍,心房粗動症例の薬効判定
- 上室性頻脈性不整脈に対するカテーテルアブレーション後の慢性期評価が必要な場合
電気生理検査における薬効評価は,頻拍の誘発阻止作用を有効指標とした効果判定が行われ,電気生理検査ガイド治療と呼ばれる.電気生理検査ガイド治療の予防効果判定法としての意義は,ホルター心電図や運動負荷試験などの非侵襲的な評価法に比して高いと考えられる.
器質的心疾患のない,右室流出路または左室中隔起源の特発性持続性単形性心室頻拍ではカテーテルアブレーションの成功率が高いが,その他の器質的心疾患を有する心室頻拍,特に血行動態が悪化した経過を有する症例では植込み型除細動器による発作停止が第一選択となる.単形性心室頻拍においては,電気生理検査ガイドによる予防治療薬選択も有用であり39,40,41,42),また多形性心室頻拍や心室細動誘発性評価による催不整脈作用の予知にも有用である43,44).電気生理検査ガイド治療によりI群の抗不整脈薬が有用とされた症例では心室頻拍の再発は低いが, 有効なI群薬が見つからない例も多い.ESVEM(Electrophysiological Study Versus Electrocardiographic Monitoring)試験では電気生理検査ガイド治療とホルター心電図を用いた薬効評価に差がないとされ45),電気生理検査ガイド治療の限界も指摘されている46).一方アミオダロンは経験的投与が行われているが,電気生理検査ないしホルター心電図ガイド治療の有用性も報告されている47).しかし,AVID(Antiarrhythmics Versus Implantable Defibrillators)研究48)などにおいて,心室頻拍/心室細動の二次予防においては,薬物による予防治療よりも植込み型除細動器治療の方が予後改善に寄与することが示されており,現在では電気生理検査ガイド治療は発作頻度を減少させるなど,植込み型除細動器治療の補助的な意義が強いと言える.
房室結節リエントリー性頻拍または房室回帰頻拍に対する薬効評価はVaughan Williams分類のI群,II群,IV群を用いて行われていたが,QOL,副作用の問題等で最近では薬効解析を行わずにカテーテルアブレーションを選択する場合が多い.また,洞結節リエントリー性頻拍,心房頻拍,心房粗動症例の薬効判定に関する有用性の報告は少ない.
カテーテルアブレーションの効果判定ではその再発は上室性頻拍では1〜3%と少なく,動悸発作の再発を認めない限り必要無いが,他の頻拍が新たに出現する場合もある.心室頻拍では再発率は高く致死的となる場合もあり,慢性期評価を行うことが必要である41,42,43).