(旧版)骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン

 
V 骨粗鬆症の治療

 
B.治療効果の評価と管理
c.椎体の変形と骨折

Research Question
椎体骨折の診断はどのように行うのか

通常,胸椎,腰椎のそれぞれの単純エックス線2方向(正面像,側面像。胸椎ではTh8,腰椎ではL3,それぞれをエックス線入射の中心とする)で認識する。目視で半定量的,あるいはデジタイザーなどを用いての定量的評価にて行われる。撮影条件,エックス線の入射方向,さらに患者の脊柱変形,変形性関節症,骨棘に注意することが大切である。
骨粗鬆症による圧迫骨折例では,MRI所見が骨折の新旧判定,骨転移による病的骨折との鑑別に有用である。


Research Question
椎体骨折で疼痛を伴わない例があるか

椎体骨折では通常,疼痛を伴う。しかし,疼痛を伴わず,エックス線撮影で確認される例もある。特に骨脆弱が高度な場合は,明らかな外傷なく,骨折をきたす例がある。
疼痛を伴う場合を臨床骨折,一方,疼痛を伴わない場合を形態骨折と称する。
55歳から81歳の既存骨折を有する女性,1,005例での3年間の観察結果では,痛みを伴う椎体骨折は5%,痛みを伴わず,エックス線撮影で認識できた例が15%あった34)
この方法は,椎体の形態を計測するものである。既存骨折の評価に有用である。


Research Question
既存骨折(prevalent fracture)の判定基準は

椎体骨折のエックス線での定量的な判定基準(図209)
C/A,C/Pが0.8未満
A/Pが0.75未満
扁平椎では判定椎体の上位,下位のA,C,Pより,おのおのが20%以上減少
この方法は,椎体の形態を計測するものである。既存骨折の評価に有用である。

図20 椎体骨折の判定法
図20椎体骨折の判定法


Research Question
新規骨折の定義は

新規骨折を判定するには,基準となるエックス線写真とある期間経過後のエックス線写真を比較して行う。
1 エックス線椎体側面像で目視による半定量法により,以下のグレード分類を行う93)(「II 骨粗鬆症の診断 C.椎体のエックス線写真の評価:骨粗鬆化と骨折の評価 図10 椎体変形の半定量(SQ)評価表 」参照)
  グレード0 正常,椎体高の変化がほとんどない
  グレード0.5 境界
  グレード1 軽度変形,椎体高の変化が20〜25%
  グレード2 中等度変形,椎体高の変化が25〜40%
  グレード3 高度変形,椎体高の変化が40%以上
経時的にエックス線を撮影し,椎体形態がグレード1以上増加した場合,新規骨折(incident fracture)と判定。
2 定量的測定法:椎体に6点をそれぞれデジタイズし,以下の比を算出する93)図21
anterior-posterior ratio:APR=ha/hp
anterior-posterior ratio:APR=ha/hp
posterior-posterior adjacent ratio:HPR=hp/hpa
APR,MPR,HPRで15%の差異がある場合,骨折:prevalent fractureと定義する。経時的に高さの低下が15%以上ある場合,新規骨折:incident fracture と定義する。
3 A-TOP研究会での検討
椎体高の変化率PHr:% height reduction
椎体高の変化量AHr:absolute height reduction(mm)
椎体において前縁高,中央高,後縁高のいずれかが,PHr15%減少し,かつAHr4mm減少した場合,新規骨折と判定(感度49%,特異度99%)。
4 骨粗鬆症治療薬の臨床試験で行われている新規骨折の評価方法と判定基準については「II 骨粗鬆症の診断 C.椎体のエックス線写真の評価:骨粗鬆化と骨折の評価 表14 骨粗鬆症の臨床試験と,既存椎体骨折,新規椎体骨折の判定 」を参照されたい。

図21 定量的測量法のためにデジタイズする椎体の6ポイント
図21定量的測量法のためにデジタイズする椎体の6ポイント


Research Question
治療前後での骨折判定はどのように行うべきか

上記の基準により,エックス線写真にて既存骨折,新規骨折をそれぞれ判定する。新鮮骨折または陳旧性骨折の判定ではMRIの所見も有用である。疼痛を伴わない,あるいは明らかでない骨折例もあることを考慮する。
既存骨折は,既存骨折のない症例に比して新たな骨折発生リスクが高いことから,既存骨折の有無別に分けて,それぞれにおいて,治療前後で新規骨折の発生を判定し,比較することが適切であろう。椎体骨折,非椎体骨折別に発生率への治療効果を評価する。

 

 
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