(旧版)大腸癌治療ガイドライン

 
II.治療法の種類と治療方針の解説

 
1.Stage 0〜Stage III大腸癌の治療方針
1)内視鏡治療
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(1) 内視鏡的摘除は摘除生検であり,切除標本の組織学的検索によって治療の根治性と外科的追加腸切除の妥当性を判定する。
(2) 術前内視鏡診断におけるpSM深部浸潤癌の診断指標として,「緊満感,びらん,潰瘍,ヒダ集中,変形・硬化像」などがあげられる。必要に応じて,X線造影検査,拡大観察,内視鏡超音波検査所見なども参考にする。
(3) 術前診断の精度の限界を考慮すると,内視鏡治療に際しては,摘除標本の緻密な組織学的検索が必須である。そのため,
 
ポリペクトミー標本では切除断端に墨汁などによるマーキングを施し,切除断端を含む最大割面を観察する。
EMR標本では摘除標本を伸展固定し(下図),粘膜筋板と垂直な割面を作製する。
治療内容(切除法,併用療法の有無,一括切除か分割切除か,その選択理由など)と切除標本の肉眼所見を記載することが望ましい。
(4) 切除断端および最深部の癌浸潤状況を正確に診断するには,一括切除が望ましい。
 
ポリペクトミーやスネアEMRで無理なく一括切除できる限界は2cmである。
大腸のESDは手技の難度が高く,合併症(穿孔)の危険性が高いので,まだ一般的治療法とはいえない。
EMRC法は,結腸病変に用いると穿孔の危険性が高い。
術前診断で粘膜内癌と確信できれば分割切除を行ってもよい。しかし,一般的に分割切除では不完全切除率が高く,局所再発率が高いことに留意する4),5)
(5) 内視鏡的摘除後は,切除局所を詳細に観察し遺残病変の有無を確認する。
 
遺残病変の診断には拡大観察が有用である。
粘膜内病変の遺残があれば追加治療(内視鏡的追加切除,ホットバイオプシー,焼灼など)を加える。
(6) 摘除病変がpSM癌の場合,外科的追加腸切除を考慮する条件5),6),7),8)
 
癌が切除断端に露出していなくても,癌から切除断端までの距離が500µm未満であれば断端陽性とする。
浸潤距離が1,000µm以上でのリンパ節転移率は11.1%であった(表13),4)
脈管侵襲とは,リンパ管侵襲または静脈侵襲どちらかが陽性の場合をいう。
主組織型が低分化腺癌,未分化癌以外でも,pSM浸潤先進部に簇出所見があればリンパ節転移の危険性が高いという報告がある9)
(7) pSM浸潤距離の実測は,(下図)に示す方法に基づいて行う。
 
粘膜筋板の走行が同定あるいは推定可能な症例は,病変の粘膜筋板下縁から測定する。粘膜筋板の走行が同定・推定できない症例は病変表層から測定する。
有茎性病変でも粘膜筋板が同定できる場合は,粘膜筋板からの浸潤距離を測定する。
有茎性病変で粘膜筋板が同定できない場合は,pSM浸潤距離は頸部を基準とし,頸部から茎部への浸潤距離を測定する。
有茎性病変の頭部内の浸潤は「head invasion」として記載する。
(8) 内視鏡治療後の経過観察
 
pM癌で切除断端の評価が困難な場合には,半年から1年後に大腸内視鏡検査にて局所再発の有無を調べる。異時性多発病変に関しては,その後も定期的に大腸内視鏡による経過観察を行う。
pSM癌で経過観察する例では,局所再発のみでなくリンパ節再発や遠隔転移再発の検索も必要であるが,現時点では明確なサーベイランス方法や期間についてのコンセンサスは得られていない。ただし,pSM癌内視鏡治療後の再発は1〜3年以内に発症することが多い。
 
 
〔内視鏡的摘除標本の取扱い―pSM浸潤距離の実測〕
内視鏡的摘除標本の取扱い―sm浸潤距離の実測
 
 
表1 sm癌浸潤距離とリンパ節転移(文献7より改変)
表1 sm癌浸潤距離とリンパ節転移
大腸癌取扱い規約第6版による
1,000µm以上の浸潤症例のリンパ節転移率は11.1%であった。
head invasion例でリンパ節転移陽性であった3例はいずれもly陽性であった。

 

 
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