特発性正常圧水頭症診療ガイドライン 第3版
第1部 第1章 Ⅱ 臨床診断 4 iNPH grading scale(iNPHGS)
重症度 歩行障害 認知障害 排尿障害
0 正常 正常 正常
1 ふらつき,歩行障害の自覚のみ 注意・記憶障害の自覚のみ 頻尿,または尿意切迫
2 歩行障害を認めるが補助器具(杖,手すり,歩行器)なしで自立歩行可能 注意・記憶障害を認めるが,時間・場所の見当識は良好 時折の失禁(1~3回/週以上)
3 補助器具や介助がなければ歩行不能 時間・場所の見当識障害を認める 頻回の尿失禁(1回/日以上)
4 歩行不能 状況に対する見当識はまったくない
または意味ある会話が成立しない 膀胱機能のコントロールがほとんど,またはまったく不可能
第1部 診療マネジメント編
第1章特発性正常圧水頭症(iNPH)の診断
Ⅱ臨床診断
4-iNPH grading scale(iNPHGS)
本ガイドライン初版を出版する際に当委員会で新たに,三徴の重症度分類尺度Japanese NPH grading scale-R(JNPHGS-R)を作成した。本尺度は,その後,信頼性・妥当性の検証が行われ,iNPHGSとして発表された(表1)1)。本尺度の特徴は,信頼性と妥当性が初めて検証された尺度であること,それぞれの症状の悪化の仕方にそった項目設定になっていること,区別しやすい段階設定になっていること(排尿障害については,失禁の頻度を具体的な数字で区別できるようにしている),広い範囲の重症度の患者に適応できるようになっていることである。また,歩行障害と認知障害に「自覚のみ」の項目を設定したことも特徴である。これはiNPH患者の初期においては,ふらつきや物忘れの自覚はあるものの,他覚的にははっきりとした異常所見を呈さない段階があるためである。iNPHGSでは,歩行障害,認知障害,排尿障害それぞれについて0~4の5段階で評価する。三徴それぞれの評価点とともに合計点も指標として用いることができる。
表1 | iNPH grading scale(iNPHGS) |
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または意味ある会話が成立しない
Dement Geriatr Cogn Disord 2008; 25(1): 37-45. Copyright © 2017 Karger Publishers, Basel, Switzerland.
(文献1より作表)
[文献]
1) | Kubo Y, Kazui H, Yoshida T, et al: Validation of grading scale for evaluating symptoms of idiopathic normal-pressure hydrocephalus. Dement Geriatr Cogn Disord 25: 37-45, 2008 |