(旧版)科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2006年版
CQ5 補助療法
CQ5-3 膵癌の術後(化学)放射線療法は推奨されるか?
【エビデンス】
1. | 膵癌の術後(化学)放射線療法の有用性を検討した臨床研究は,欧米およびわが国から複数報告されている。しかし,検討の多くは後ろ向きのコホート研究である。また,術中放射線療法(IORT)や5-FU をベースとした化学療法を併用しており,その内容も一定していない。有用性を支持する報告1),2),3),4),5),6),7),8) (レベルIV)が多いが,否定的な報告もみられ9),10),11)(レベルIV),一定の見解が得られていない。 |
2. | 術後化学放射線療法に関して前向きのランダム化比較試験がこの10年間に2つ行われている12),13)(レベルII)。1999年に報告されたEORTCの検討では12),1987〜1995年までに欧州の29施設で切除された膵頭部癌114例を,切除のみと術後化学放射線療法を併用した2群に割り付けて予後を比較している。治癒切除単独の54例と治癒切除に化学放射線療法を加えた60例の平均中央生存期間は12.6月と17.1カ月,2年生存率はそれぞれ23%と37%,5年生存率は10%と20%であり,いずれも両群間に有意な差を認めなかった(レベルII)。 |
3. | 2つめのランダム化比較試験であるESPAC1の報告では13),1994年2月〜2000年6月までに欧州11カ国,53施設から登録された治癒切除膵癌289例を,(1経過観察のみ,(2術後化学放射線療法を併用,(3術後化学療法を併用,(4術後化学放射線療法と化学療法の両者を併用の4群にランダムに割り付けて生命予後を比較したものである。術後化学療法を行った142例と行わなかった147例の比較では,生存中央期間はそれぞれ20.1カ月と15.5カ月,2年生存率が40%と21%,5年生存率が30%と8%であり,術後化学療法は切除膵癌症例の予後を有意に改善した。一方,術後化学放射線療法を行った145例と行わなかった144例の比較では,生存中央期間はそれぞれ15.9カ月と17.9カ月,2年生存率が29%と41%,5年生存率が10%と20%であり,術後化学放射線療法の併用は手術成績を改善せず,むしろ化学療法の併用に期待がもてる結果であった(レベルII)。 |