(旧版)科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2006年版
CQ2 化学療法
CQ2-4 切除不能膵癌に対して推奨される二次化学療法は何か?
【エビデンス】
塩酸ゲムシタビンは切除不能膵癌に対する一次化学療法として位置づけられているが,塩酸ゲムシタビン無効例や奏効後再燃例を対象として二次化学療法の臨床試験も開始されている。これまでに得られている二次化学療法についてのエビデンスを検証した。
検索範囲内で塩酸ゲムシタビン治療後の二次化学療法の論文報告は6本のみであった。いずれも少数例を対象とした研究であり,6本中5本は対照を伴わない臨床試験またはケースシリーズ報告であった1),2),3),4),5)(レベルIII〜V)。残る1本は,組織学的に診断された遠隔転移を有する膵癌例に対し,thymidylate synthase(TS)阻害剤であるraltitrexedとイリノテカンの併用療法とraltitrexed単独療法とを比べたランダム化比較第II相試験であり,併用群は単独群より奏効率(主要評価項目)が有意に良好であり,progression free survival,生存期間,症状緩和効果(副次評価項目)も良好な傾向であることが報告されている6)(レベルII)。さらに2005年ASCO(米国癌治療学会)では,5-FU,フォリン酸,オキサリプラチンの併用療法と無治療のランダム化比較試験が報告され,併用療法治療群の有意に良好な生存期間が報告された7)(レベルII)。しかし,いずれの試験も1群20例前後の小規模なものであり,大規模な第III相試験による検証が必要と考えられた。2004年ASCOではtopoisomerase I 阻害剤であるrubitecan とphysicians' best choice(医師が最良と考える治療)とを比較するランダム化比較試験が報告されており,両群間の生存期間には有意差を認めていない8)(レベルII)。
以上より,標準的二次治療はいまだ確立しておらず,二次化学療法を推奨するだけの根拠は乏しいと判断した。