(旧版)科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2006年版
CQ1 診断法
CQ1-6 確定診断法とは何か?
【エビデンス】
(1)細胞診
1.超音波ガイド下穿刺吸引細胞診(US-FNAB)およびCTガイド下穿刺吸引細胞診(CT-FNAB)
US-FNABおよびCT-FNABの膵腫瘤性病変に対する膵癌診断の感度はそれぞれ74〜87%1),2),3)および78〜98%4),5),6),7)で,特異度は共に100%である(レベルV)。合併症は1.6〜4.9%に発生しており,そのほとんどが施行時の疼痛であり,その他に急性膵炎,迷走神経反射,嚢胞出血,無症候性血腫などがある1),4),7)。
US-FNABおよびCT-FNABの適応は画像診断で膵癌が疑われる膵腫瘤性病変であり,良悪性の鑑別を目的に施行される。非腫瘤病変に対しては感度17%8)と低下し,有用とはいえない(レベルV)。
2.超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNAB)
EUS-FNABの膵腫瘤性病変に対する膵癌診断の感度は80〜97%9),10),11),12),13),特異度は82〜100%である(レベルV)。
合併症は1.2〜6.3%に発生しており,急性膵炎,誤嚥性肺炎,腹痛,消化管出血などを認めたが,重篤な合併症は認めていない11),12),13),14)(レベルV)。
US-FNAB,CT-FNABとの診断能の比較においてEUS-FNABの評価はまだ確定していないが,CT-FNAB陰性例やUS,CTで捉えることが困難な病変に対する診断能ではEUS-FNABが優れている15),16),17)(レベルV,IV,IV)。
3.その他
術中FNAB18),ERCP下細胞診19),膵管ブラッシング細胞診19),経口膵管内視鏡細胞診20),PTCD下胆汁細胞診21)などさまざまなアプローチによる細胞診が行われており,感度は53〜93%であるが,評価はまだ確定していない(レベルV)。
(2)遺伝子検索
膵癌の診断において,採取された検体に対しK-ras遺伝子変異2),8),9),22),23),24)の検索を加えることで感度が上昇し,診断能の向上に寄与すると考えられる(レベルV)。その他,MUC125),p5319),26),膵液テロメラーゼ活性27)などが診断に有用であるとの報告があるが,評価はまだ確定していない(レベルV)。
遺伝子診断の適応は検体量が少ない場合や細胞診陰性例において補助診断として有用である9),24)(レベルV)。ただし,良性疾患においても陽性を示すことがあるため,その扱いに注意が必要である8),24),28)。
(3)最終病理診断
膵癌が疑われ膵切除を施行された症例でも,5〜10%は切除標本に膵癌が証明されず,炎症性疾患などであったという報告がある29),30),31)(レベルIV)。