(旧版)科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン 2006年版
序
1.本ガイドラインの目的
膵癌(膵癌取扱い規約2002年4月(第5版)日本膵臓学会編の浸潤性膵管癌を対象)は21世紀に残された消化器癌といわれ,近年,増加傾向にあって,その診断法や治療成績の改善が急務とされている。従来,膵癌に対しても種々の診断法,治療法が開発されてきたが,その客観的な評価は十分にはなされておらず,診療における標準化はなされていないのが現状である。そこで,前述の組織によりガイドラインが作成されることとなった。
本ガイドラインの目的は,膵癌の診療にあたる臨床医に実際的な診療指針を提供するために,膵癌に関してEBMの手法に基づいて効果的・効率的な診断・治療法を体系化し,効果的保険医療を確立し,ひいては豊かな活力ある長寿社会を創造するための一翼を担うことである。わが国には,膵癌診療の全領域を網羅した,EBMに基づいた膵癌診療ガイドラインといった体系化されたものがないのが現状であった。本ガイドラインではEBMの手法により,膵癌に対して多方向から,各関係学会や各領域の第一人者によって文献を十分に検討し,体系化されたガイドラインを作成することに努めた。ただし,膵癌治療の現状は非常に厳しく,エビデンスレベルの高い論文は少ないため,エビデンスは現在ないが,将来につながりそうな試みなどを小委員会の判断で加えた。本ガイドラインの対象は,膵癌診療にあたる臨床医である。一般臨床医が膵癌に効率的かつ適切に対処することの一助となり得るよう配慮した。さらに患者,家族をはじめとした一般市民にも膵癌の理解を深めていただき,医療従事者と医療を受ける立場の方々の相互の納得のもとに,より好ましい医療が選択され実行されることをも意図した。ガイドライン作成にあたっては,日本各地より,内科,放射線科,外科の専門家よりなる作成小委員会が設置された。作成小委員会名簿は別項に掲載した。膵癌のステージ分類は欧米とわが国で異なる。本ガイドラインでは日本膵臓学会が2002年4月に発表した膵癌取扱い規約(第5版)に準じた。