(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)
ガイドライン各論
CQ11 患者教育
【CQ 11.1】
褥瘡発生,再発を予防するために患者やその家族(介護者)へ指導・教育をどのように行えばよいか
【推奨文・推奨度】
褥瘡発生,再発を予防するために患者やその家族(介護者)へ指導・教育をどのように行えばよいか
【推奨文・推奨度】
① | 体位変換方法,予防具の種類や使用方法に関する指導・教育を行ってもよい。 [推奨度C1] |
② | 医療者による定期的な電話コンサルテーションや遠隔操作での画像を介しての皮膚アセスメントを行ってもよい。 [推奨度C1] |
③ | 医療者からのeラーニングによる教育を行ってもよい。 [推奨度C1] |
④ | 褥瘡の病態,危険因子,褥瘡評価,創傷治癒の原則,栄養管理方法,スキンケアと皮膚観察方法,排泄管理方法に関する内容の指導・教育を行ってもよい。 [推奨度C1] |
【解説】
「患者教育」に関しては,ランダム化比較試験が1編,非ランダム化比較試験が1編,コホート試験が1編あり,多くは症例報告である。
体位変換方法では,ポジショニングや車椅子,座位の姿勢を含めた指導を行う。またその際に,体圧測定することでリスクの発見が可能となり,褥瘡予防に対する理解力の向上に効果的であったとする症例報告がある1-3)。
医療者とのコンサルテーションに関しては,医療者が患者の退院前に強化された教育を行い,退院後,毎月電話で褥瘡について確認した群と通常の教育のみ行った群を比較した結果,介入群がコントロール群よりも予防に関する知識が高くなったとするランダム化比較試験がある4)。しかし,教育内容の詳細は不明であり,統計学的有意差は示されていない。また遠隔操作によるビデオ画像を用いた介入と電話での介入,電話相談を本人の意思で行う方法を比較した非ランダム化比較試験がある5)。ビデオ画像を用いて検討した群において,褥瘡発生報告が最も多かったが有意差はなかった。これはビデオを通して医療者の観察回数が多くなったため,発見率が高まった可能性があると考察されている。発見された褥瘡もほかの群に比較して,浅い褥瘡の割合が多かったことより,褥瘡の早期発見に効果的であることが示唆される。しかしこの2つの臨床試験は海外での結果であり,わが国において電話や遠隔操作での画像を介したコンサルテーションは,現状において保険適応外であるが,訪問看護の現場などにおいてはこのようなシステムの活用が検討されている。
視覚的教育方法として,eラーニングによる教育プログラムを実施後,褥瘡についてのテスト結果が実施前より有意に高くなったとするコホート研究がある6)。褥瘡発生率や治癒率に直接結びつかないが,褥瘡に対する知識向上のための教育方法としては効果的であることが示唆される。
その他WOCNガイドライン7)では,褥瘡の病態,危険因子,褥瘡評価,創傷治癒の原則,栄養管理方法,スキンケアと皮膚観察方法,排泄管理方法に関する教育内容の項目について記載があるが,エキスパートオピニオンに基づいたものである。
以上患者教育においては,褥瘡発生率や再発率に直接結び付く具体的方法は少ない。
【文献】