(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)
ガイドライン各論
CQ10 体圧分散用具
【CQ 10.9】
褥瘡(d1,d2,あるいはD3〜D5)の治癒促進には,どのような体圧分散マットレスを使用するとよいか
【推奨文・推奨度】
褥瘡(d1,d2,あるいはD3〜D5)の治癒促進には,どのような体圧分散マットレスを使用するとよいか
【推奨文・推奨度】
① | D3〜D5褥瘡または複数部位の褥瘡の治癒促進には,空気流動型ベッドまたはローエアロスベッドを使用するよう強く勧められる。 [推奨度A] |
② | d2以上の褥瘡の治癒促進には,マット内圧自動調整機能付交換圧切替型エアマットレス,圧切替型ラージエアセルマットレス,二層式エアマットレス,低圧保持用エアマットレスを使用してもよい。 [推奨度C1] |
③ | d1/2褥瘡の治癒促進には,上敷静止型エアマットレスを使用してもよい。 [推奨度C1] |
④ | 褥瘡皮弁術後には,マット内圧自動調整機能付交換圧切替型エアマットレスを使用してもよい。 [推奨度C1] |
【解説】
特殊ベッドについては,NPUAP/EPUAPガイドライン1),WOCNガイドライン2),Wound Healing Societyガイドライン3)でその使用が推奨されている。その根拠となったのは,ランダム化比較試験が5編4-6,8,9)であり,空気流動型ベッドやローエアロスベッドのほうが褥瘡治癒率や創の収縮率が高かった。マット内圧自動調整機能付交換圧切替型エアマットレスについては,筋肉や骨に達する褥瘡に対する皮弁術後の患者を対象としたランダム化比較試験7)やstage II〜IVの褥瘡を対象としたランダム化比較試験11)があった。いずれも対照群と有意な差はなかった。圧切替ラージエアセルマットレスについては,stage II〜IVの褥瘡を対象としたランダム化比較試験10)があり,対照群とくらべて有意に褥瘡治癒率が高かった。上敷静止型エアマットレスに関するstage I,IIを対象としたランダム化比較試験があり,対照群と有意な差をみとめなかった12)。
わが国のstage II〜IV褥瘡を対象とした調査には,自己対照試験が1編13),比較群のない介入研究が1編14)あった。二層式エアマットレスは,単層式圧切替型エアマットレスより面積が有意に縮小した(p<0.05)13)。低圧保持用エアマットレスは上敷静止型エアマットレスにくらべて有意に創の縮小と再上皮化を認めた(p<0.05)14)。
以上のことから,stage IIIあるいはIVのいわゆるD3〜D5の褥瘡または複数部位の褥瘡の治癒促進には,空気流動型ベッドまたはローエアロスベッドの使用が強く勧められる。ただし,わが国では空気流動型ベッドやローエアロスベッドなどの特殊ベッドは費用や管理の煩雑さから使用できる施設は限られている。また,予防と同様に体圧分散マットレスの選択は褥瘡状態のみに基づくものでなく,ほかの要素も十分に吟味して選択すべきである。
【文献】