(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)
ガイドライン各論
CQ2 ドレッシング材
【CQ 2.9】
褥瘡に感染・炎症を伴う場合,どのようなドレッシング材を用いたらよいか
【推奨文・推奨度】
褥瘡に感染・炎症を伴う場合,どのようなドレッシング材を用いたらよいか
【推奨文・推奨度】
① | 感染抑制作用を有する外用薬の使用を推奨する。もしくは,銀含有ハイドロファイバー®,アルギン酸Agを用いてもよい。 [推奨度C1] |
② | 滲出液が多い場合には吸収性の高いアルギン酸塩が用いられることもあるが,感染制御の機能はないため使用は勧められない。 [推奨度C2] |
【解説】
銀含有ハイドロファイバー®における褥瘡の感染・炎症に関する文献には,システマティック・レビュー1)が1編ある。急性または慢性の汚染創および感染創の治療における局所への銀使用の有効性を評価した26件のランダム化比較試験において,アウトカムとしての創感染率に有意な差がないため,感染制御にその使用を勧めるエビデンスは不足していると結論づけている。また,感染創への銀使用の有効性を評価したシステマティック・レビュー2)でも,慢性の感染創または汚染創の治療に銀含有フォーム・ドレッシング材または外用剤の使用を推奨するには十分なエビデンスがないとしている。
褥瘡の感染制御にアルギン酸Agを用いたランダム化比較試験は3編3-5)ある。銀含有アルギン酸/CMCと銀を含有しないアルギン酸/CMCを比較して,銀を含有しないアルギン酸/CMCよりも創面積が有意に縮小(p=0.017)し,4週間後の治癒率は有意に良好であった(p=0.044)3)ことから,治癒促進効果と感染制御の効果があると結論付けている。一方,アルギン酸塩と銀含有アルギン酸を比較して感染の臨床スコアに有意差がないとする報告4)や,創部感染率において銀含有アルギン酸塩33%,アルギン酸塩は46%と有意差はないが,4週間後の治癒率は銀含有アルギン酸塩のほうが有意にすぐれている(p=0.024)とする報告5)もある。これらの報告から,褥瘡に感染・炎症を伴う場合,銀含有ハイドロファイバー®,アルギン酸Agを用いてもよいが,システマティック・レビュー1,2)の結果も考慮すると感染創への使用を支持する明らかなエビデンスは不足している。また,研究で評価している製品はわが国で入手可能な製品と銀含有濃度が異なるため,感染制御作用の有効性は不明であり,推奨度はC1とした。
一方,滲出液が多い場合には吸収性の高いアルギン酸塩が用いられることもあるが,感染制御の機能はないため使用は勧められない。アルギン酸塩を感染創に使用したランダム化比較試験が1編5)ある。感染制御が必要な静脈性下腿潰瘍71例,褥瘡28例にアルギン酸塩および銀含有アルギン酸塩を使用し,両群間で創部感染について有意差はみられなかった5)。以上の報告から,滲出液が多い場合には吸収性の高いアルギン酸塩が用いられることもあるが,感染制御の機能はないため使用は勧められない。
【文献】