(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)

 
ガイドライン各論

CQ1 外用剤

【CQ 1.12】
肉芽形成が不十分で肉芽形成を促進させる場合,どのような外用剤を用いたらよいか

【推奨文・推奨度】
肉芽形成促進作用を有するアルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート,トラフェルミン,トレチノイントコフェリル,ポビドンヨード・シュガーを推奨する。 [推奨度B]
アルプロスタジルアルファデクス,ブクラデシンナ トリウム,リゾチーム塩酸塩を用いてもよい。 [推奨度C1]

【解説】
アルミニウムクロロヒドロアラントイネートについて肉芽形成促進作用を検討した論文には,幼牛血液抽出物含有軟膏とのランダム化比較試験が1編1)ある。各27例の比較では,肉芽形成において対照群にくらべ有意差をもって有効であった。
トラフェルミンでは創の縮小作用に関するポビドンヨード・シュガー,GM-CSF,あるいは低濃度のFGFとのランダム化比較試験2-5)はある。しかし,褥瘡の肉芽形成促進についての結果は示されていない。ヒストリカルコントロール研究6)では,対照群と比較して有意な肉芽形成促進作用を認めており,特に治療初期にその効果を発揮し,治癒効果を促進したとしている。エビデンスレベルIVだが,ケースシリーズにおける有効性の報告やエキスパートオピニオン7,8)をふまえ推奨する。
トレチノイントコフェリルの肉芽形成促進作用を検討した論文には,リゾチーム塩酸塩,ベンダザック含有軟膏との非盲検ランダム化比較試験が2編9,10)あり,対照群との有意差を認めている。
ポビドンヨード・シュガーではリゾチーム塩酸塩との非盲検ランダム化試験がある11)。肉芽形成促進作用はポピドンヨード・シュガー使用群がリゾチーム塩酸塩使用群より優れていたとしている。
アルプロスタジルアルファデクスでは,創の縮小作用に関するリゾチーム塩酸塩とのランダム試験12)がある。しかし,肉芽形成促進に関してはエキスパートオピニオン以外に検討した論文はない。
ブクラデシンナトリウムの肉芽形成促進作用に関する論文では,リゾチーム塩酸塩,基剤のマクロゴールとのランダム化比較試験が2編13,14)ある。この報告では,リゾチーム塩酸塩とは同等の効果,基剤との比較においては有意差を持って有効であったとしているが,肉芽形成に関する記載はない。
リゾチーム塩酸塩ではベンダザック含有軟膏との非盲検ランダム化試験があり15),エビデンスレベルIIとなる。ポビドンヨード・シュガーあるいはポビドンヨード・シュガーを配合したリゾチーム塩酸塩とのランダム化試験が2編あるが16,17),肉芽形成促進作用についての有意差検定は行っていない。
以上の検討により前回ガイドラインより一部の薬剤の追加および推奨度を変更した。さらに推奨される薬剤のいずれを選択するかに関しては,各薬剤の特性と創の状態を捉えたうえで決定する必要がある。

【文献】
1) 水谷弘, 大槻利衛, 松本英一, ほか:褥創に対する外用アルミニウムヒドロキシアラントイネート製剤(ISP)の臨床効果-ソルコセリル軟膏との比較試験-. 臨床と研究, 59(6):097-2112, 1982.(レベルII)
2) 石橋康正, 添田周吾, 大浦武彦:遺伝子組み換えヒト型bFGF(KCB-1)の皮膚潰瘍に対する臨床評価, 白糖・ポビドンヨード配合製剤を対照薬とした第III相臨床試験. 臨医薬, 12(10):2159-2187, 1996.(レベルII)
3) Martin CR:Sequential cytokine therapy for pressure ulcers, clinical and mechanistic response. Ann Surg, 231:600-611, 2000.(レベルII)
4) 石橋康正, 添田周吾, 大浦武彦:KCB-1(bFGF)の各種難治性皮膚潰瘍に対する二重盲検比較試験による用量反応試験. 臨医薬, 12(9):1809-1834, 1996.(レベルII)
5) Robson MC, Phillips LG, Lawrence WT, et al:The safety and effect of topically applied recombinant basic fibroblast growth factor on the healing of chronic pressure sores. Ann Surg, 216(4):401-408, 1992.(レベルII)
6) 大浦武彦, 中條俊夫, 森口隆彦:bFGF製剤の褥瘡に対する臨床効果-新評価法に対する症例・対照研究. 褥瘡会誌, 6(1):23-34, 2004.(レベルIV)
7) 古田勝経, 三浦久幸, 遠藤英俊:褥瘡のフィブラストスプレーの有用性. 臨床と研究, 80(7):187-194, 2003.(レベルV)
8) 石橋康正, 原田昭太郎, 竹村司:皮膚潰瘍に対するKCB-1(bFGF)の効果, 12週間使用試験. 臨医薬, 12 (10):2117-2129, 1996.(レベルV)
9) L-300臨床試験研究班:L-300の皮膚潰瘍に対する臨床評価Controlled Comparative Studyによる塩化リゾチーム軟膏との比較. 臨医薬, 7(3):654-665, 1991. (レベルII)
10) L-300臨床試験研究班:L-300の皮膚潰瘍に対する臨床的有用性の検討-ベンザダック軟膏を対照薬としたControlled Comparative Study -. 臨医薬, 7(2): 437-456, 1991.(レベルII)
11) 今村貞夫, 内野治人, 井村裕夫, ほか:白糖・ポビドンヨード配合軟膏(KT-136)の褥瘡に対する有用性の検討-塩化リゾチーム軟膏を対照とした比較臨床試験-. 薬理と治療, 17(1):255-280, 1989.(レベルII)
12) 今村貞夫, 相模成一郎, 石橋康正:G-511軟膏の褥瘡・皮膚潰瘍に対する臨床試験-塩化リゾチーム軟膏を対照とした電話法による無作為割付比較試験-, 臨医薬, 10(1):127-147, 1994.(レベルII)
13) 新村眞人, 石橋康正, 今村貞夫, ほか:DT-5621 の褥瘡・皮膚潰瘍に対する臨床効果-塩化リゾチーム軟膏との無作為割付群間比較試験-. 臨医薬, 7(3): 677-692, 1991.(レベルII)
14) 新村眞人, 山本桂三, 岸本三郎, ほか:褥瘡・皮膚潰瘍に対するDT-5621(ジブチルサイクリックAMP含有軟膏)の臨床効果検討. 薬理と治療, 18(7):2757-2770, 1990.(レベルII)
15) KH101研究会:KH101(リフラップ軟膏)の皮膚潰瘍に対する治療効果の検討. 西日皮膚, 48(3):553-562, 1986.(レベルII)
16) 宿輪哲生, 岡田滋, 塚崎直子:褥瘡に対するリフラップ軟膏とポビドンヨード・シュガー軟膏及びポビドンヨード・シュガー軟膏配合リフラップ軟膏の臨床効果の比較試験. 皮膚, 32(4):564-573, 1990. (レベルIV)
17) 宮内秀明, 島田辰彦, 鹿井多美子, ほか:リフラップ軟膏とポビドンヨード・シュガー軟膏およびポビドンヨード・シュガー配合リフラップ軟膏の褥瘡に対する治療効果の比較検討. 皮膚, 32(4):547-563, 1989. (レベルIV)


 

 
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