(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン(第3版)
DESIGNスケールからDESIGN-Rへ
2002年に日本褥瘡学会学術教育委員会は,褥瘡の重症度を分類するとともに治療過程を数量化することのできる褥瘡状態判定スケールDESIGNを発表した。このスケールの命名は,深さ(Depth),滲出液(Exudate),大きさ(Size),炎症・感染(Inflammation/Infection),肉芽組織(Granulation),壊死組織(Necrotic tissue)の各観察項目の頭文字をとっている。
Bates-Jansenによる褥瘡状態判定ツール(PSST)1),NPUAPによる褥瘡治癒判定スケール(PUSH)2),PSSTをもとにした大浦の褥瘡経過評価法(PUHP)3)がすでに実用化されていたが,それぞれのスケールには幾つか課題もあった。このようななか,①褥瘡の重症度診断,治癒過程の数量化が可能であること,②項目ごとの治療への介入や創面の変化をモニタリングできること,③臨床現場で統一した簡便ツールとして機能すること,④国際的に通用することを目的に,エキスパートオピニオンのもとDESIGNスケールが開発された4)。
こうして開発されたスケールが優れたものとして評価されるには,評定者間信頼性および内容妥当性,併存妥当性,構成概念妥当性と予測妥当性について検証する必要がある。DESIGNスケールが開発された際,予測妥当性の検討が見送られていた5-8)。その結果,個々の褥瘡がよくなったか悪くなったかの評価は可能であるが,患者間の重症度評価に疑義が生じた。
そこで,褥瘡経過の評価だけでなく,その重症度も予測できる,つまり予測妥当性のあるDESIGNスケールを目指し,2005年からDESIGNスケールの改訂検討がスタートした。すでにDESIGNスケールが臨床で浸透していたことから,改訂検討にあたってDESIGN-P(Pはポケットを示す)の7項目として検討すること,カテゴリーを変更しないことが前提とされた。まず,大規模な後ろ向き症例集積研究(対象症例2598)が行われ,その後に前向き症例集積研究(対象症例1003)が行われた。両調査においては,治癒群・非治癒群ともに多数の対象を扱い,ともにコックスハザード分析によって解析が進められた。
検討の結果,項目の重みづけ順位は,ポケット,大きさ,炎症/感染,肉芽組織,滲出液,壊死組織となった。また,滲出液,大きさ,肉芽組織,壊死組織,ポケットの5項目では,重症になるにしたがいその重みが上昇する正の相関が確認された9-11)。対象症例において高齢者が多く,施設では大学病院が多いが在宅症例が少ないという特徴があった。しかし,これらの要因を調整変数としてコックスハザード分析を行っても重みづけ値が変化しないことから,年齢・施設の種類の偏りは算出された重みに影響を及ぼさないことも明らかにされた9)。
統計学的に算出された重みを臨床において使いやすい数値になるよう重み得点の簡略化の検討が行われ,重みが3の倍数となるよう調整が図られた。簡略化前後の重み点数の確認においても相関係数は0.991と高く,重み得点の簡略化を行っても重症度判定には影響を及ぼさないことも確認されている。最終的に,深さの数値は重み値に関係しないことから,深さは褥瘡の状態を代表するものとし,合計点に加えないこと,さらに重みづけが可能となった点を強調できるように,評点(rating)の頭文字RをとってDESIGN-Rスケールと命名された。2008年にDESIGN-Rが発表され,その後予測妥当性のある褥瘡状態判定スケールとして国内で広く使用されている。
【文献】
Bates-Jansenによる褥瘡状態判定ツール(PSST)1),NPUAPによる褥瘡治癒判定スケール(PUSH)2),PSSTをもとにした大浦の褥瘡経過評価法(PUHP)3)がすでに実用化されていたが,それぞれのスケールには幾つか課題もあった。このようななか,①褥瘡の重症度診断,治癒過程の数量化が可能であること,②項目ごとの治療への介入や創面の変化をモニタリングできること,③臨床現場で統一した簡便ツールとして機能すること,④国際的に通用することを目的に,エキスパートオピニオンのもとDESIGNスケールが開発された4)。
こうして開発されたスケールが優れたものとして評価されるには,評定者間信頼性および内容妥当性,併存妥当性,構成概念妥当性と予測妥当性について検証する必要がある。DESIGNスケールが開発された際,予測妥当性の検討が見送られていた5-8)。その結果,個々の褥瘡がよくなったか悪くなったかの評価は可能であるが,患者間の重症度評価に疑義が生じた。
そこで,褥瘡経過の評価だけでなく,その重症度も予測できる,つまり予測妥当性のあるDESIGNスケールを目指し,2005年からDESIGNスケールの改訂検討がスタートした。すでにDESIGNスケールが臨床で浸透していたことから,改訂検討にあたってDESIGN-P(Pはポケットを示す)の7項目として検討すること,カテゴリーを変更しないことが前提とされた。まず,大規模な後ろ向き症例集積研究(対象症例2598)が行われ,その後に前向き症例集積研究(対象症例1003)が行われた。両調査においては,治癒群・非治癒群ともに多数の対象を扱い,ともにコックスハザード分析によって解析が進められた。
検討の結果,項目の重みづけ順位は,ポケット,大きさ,炎症/感染,肉芽組織,滲出液,壊死組織となった。また,滲出液,大きさ,肉芽組織,壊死組織,ポケットの5項目では,重症になるにしたがいその重みが上昇する正の相関が確認された9-11)。対象症例において高齢者が多く,施設では大学病院が多いが在宅症例が少ないという特徴があった。しかし,これらの要因を調整変数としてコックスハザード分析を行っても重みづけ値が変化しないことから,年齢・施設の種類の偏りは算出された重みに影響を及ぼさないことも明らかにされた9)。
統計学的に算出された重みを臨床において使いやすい数値になるよう重み得点の簡略化の検討が行われ,重みが3の倍数となるよう調整が図られた。簡略化前後の重み点数の確認においても相関係数は0.991と高く,重み得点の簡略化を行っても重症度判定には影響を及ぼさないことも確認されている。最終的に,深さの数値は重み値に関係しないことから,深さは褥瘡の状態を代表するものとし,合計点に加えないこと,さらに重みづけが可能となった点を強調できるように,評点(rating)の頭文字RをとってDESIGN-Rスケールと命名された。2008年にDESIGN-Rが発表され,その後予測妥当性のある褥瘡状態判定スケールとして国内で広く使用されている。
【文献】