(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン
第1章 褥瘡の概要
DESIGN(デザイン)ツールについて
II.DESIGN-R(2008年版DESIGN-R 褥瘡経過評価用)
3.DESIGN-Rとは
両調査症例を併せたコックスハザード分析により、項目ごとの重みの順位は、ポケット、大きさ、炎症/感染、肉芽組織、滲出液、壊死組織となった。また、滲出液、大きさ、肉芽組織、壊死組織、ポケットの5項目では、重症になるに従いその重みが上昇する正の相関がみられた5(表3)。
その症例背景の解析では、高齢者が多く、また、施設では大学病院が多い反面在宅が少ないという特徴があったが、これらを調整変数としてコックスハザード分析を行っても重み値は変化しなかった。すなわち、年齢、施設の種類などの偏りは、算出された重みに影響を及ぼさない5。
統計的に算出された重みを臨床において使いやすい数値にすることを目的に、重み得点の簡略化を行った。具体的には、算出された重み値を10倍し、かつ整数表記とし、それぞれの重みが3の倍数になるように調整した。また、2002年版DESIGNのカテゴリーが統合されてなくならないよう、s3、s4とG3、G4、G5は、それぞれ8点、9点と4点、5点、6点にした。さらには、炎症/感染のI2の3点はエキスパートオピニオンにより決定した5。
簡略化前後の重みの点数の相関係数は0.991と高く、重み得点の簡略化を行っても重症度判定には影響を及ぼさなかった5。また、深さ以外の6項目から重み得点を導き出したのが2002年版DESIGNの改訂版であり、日本褥瘡学会学術教育委員会では評価あるいは評点(rating)の頭文字RをつけたDESIGN-Rと命名し2008年に公表した(表4)。
その症例背景の解析では、高齢者が多く、また、施設では大学病院が多い反面在宅が少ないという特徴があったが、これらを調整変数としてコックスハザード分析を行っても重み値は変化しなかった。すなわち、年齢、施設の種類などの偏りは、算出された重みに影響を及ぼさない5。
統計的に算出された重みを臨床において使いやすい数値にすることを目的に、重み得点の簡略化を行った。具体的には、算出された重み値を10倍し、かつ整数表記とし、それぞれの重みが3の倍数になるように調整した。また、2002年版DESIGNのカテゴリーが統合されてなくならないよう、s3、s4とG3、G4、G5は、それぞれ8点、9点と4点、5点、6点にした。さらには、炎症/感染のI2の3点はエキスパートオピニオンにより決定した5。
簡略化前後の重みの点数の相関係数は0.991と高く、重み得点の簡略化を行っても重症度判定には影響を及ぼさなかった5。また、深さ以外の6項目から重み得点を導き出したのが2002年版DESIGNの改訂版であり、日本褥瘡学会学術教育委員会では評価あるいは評点(rating)の頭文字RをつけたDESIGN-Rと命名し2008年に公表した(表4)。
表3 前向き調査と後ろ向き症例集積研究を統合したコックスハザード分析(n =3,601、文献5より引用)
現行DESIGNの重み | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 | 0 | |
滲出液 | 重み | 0.543 | 0.386 | 0.052 | ||||
有意確率 | 0.001 | 0.000 | 0.482 | 0.000 | ||||
n | 212 | 981 | 1358 | 1050 | ||||
大きさ | 重み | 1.573 | 1.243 | 0.985 | 0.925 | 0.560 | 0.190 | |
有意確率 | 0.002 | 0.007 | 0.000 | 0.000 | 0.000 | 0.020 | 0.000 | |
n | 36 | 31 | 134 | 287 | 903 | 1537 | 673 | |
炎症/感染 | 重み | 0.778 | -0.106 | 0.141 | ||||
有意確率 | 0.061 | 0.517 | 0.013 | 0.015 | ||||
n | 51 | 144 | 960 | 2446 | ||||
肉芽組織 | 重み | 0.682 | 0.579 | 0.433 | 0.521 | 0.098 | ||
有意確率 | 0.000 | 0.000 | 0.000 | 0.000 | 0.166 | 0.000 | ||
n | 555 | 239 | 245 | 213 | 432 | 1917 | ||
壊死組織 | 重み | 0.529 | 0.223 | |||||
有意確率 | 0.000 | 0.002 | 0.000 | |||||
n | 298 | 864 | 2439 | |||||
ポケット | 重み | 2.289 | 1.177 | 0.873 | 0.668 | |||
有意確率 | 0.000 | 0.000 | 0.001 | 0.002 | 0.000 | |||
n | 67 | 58 | 84 | 66 | 3326 |
カルテ番号( ) 患者氏名( ) | ||||||||||||
表4 DESIGN-R 褥瘡経過評価用 | 月日 | / | / | / | / | / | / | |||||
Depth 深さ 創内の一番深い部分で評価し、改善に伴い創底が浅くなった場合、これと相応の深さとして評価する | ||||||||||||
d | 0 | 皮膚損傷・発赤なし | D | 3 | 皮下組織までの損傷 | |||||||
4 | 皮下組織を越える損傷 | |||||||||||
1 | 持続する発赤 | |||||||||||
5 | 関節腔、体腔に至る損傷 | |||||||||||
2 | 真皮までの損傷 | |||||||||||
U | 深さ判定が不能の場合 | |||||||||||
Exudate 滲出液 | ||||||||||||
e | 0 | なし | E | 6 | 多量:1日2回以上のドレッシング交換を要する | |||||||
1 | 少量:毎日のドレッシング交換を要しない | |||||||||||
3 | 中等量:1日1回のドレッシング交換を要する | |||||||||||
Size 大きさ 皮膚損傷範囲を測定:[長径(cm)×長径と直交する最大径(cm)] | ||||||||||||
s | 0 | 皮膚損傷なし | S | 15 | 100以上 | |||||||
3 | 4未満 | |||||||||||
6 | 4以上 16未満 | |||||||||||
8 | 16以上 36未満 | |||||||||||
9 | 36以上 64未満 | |||||||||||
12 | 64以上 100未満 | |||||||||||
Inflammation/Infection 炎症/感染 | ||||||||||||
i | 0 | 局所の炎症徴候なし | I | 3 | 局所の明らかな感染徴候あり(炎症徴候、膿、悪臭など) | |||||||
1 | 局所の炎症徴候あり(創周囲の発赤、腫脹、熱感、疼痛) | 9 | 全身的影響あり(発熱など) | |||||||||
Granulation 肉芽組織 | ||||||||||||
g | 0 | 治癒あるいは創が浅いため肉芽形成の評価ができない | G | 4 | 良性肉芽が、創面の10%以上50%未満を占める | |||||||
1 | 良性肉芽が創面の90%以上を占める | 5 | 良性肉芽が、創面の10%未満を占める | |||||||||
3 | 良性肉芽が創面の50%以上90%未満を占める | 6 | 良性肉芽が全く形成されていない | |||||||||
Necrotic tissue 壊死組織 混在している場合は全体的に多い病態をもって評価する | ||||||||||||
n | 0 | 壊死組織なし | N | 3 | 柔らかい壊死組織あり | |||||||
6 | 硬く厚い密着した壊死組織あり | |||||||||||
Pocket ポケット 毎回同じ体位で、ポケット全周(潰瘍面も含め)[長径(cm)×長径と直交する最大径(cm)]から潰瘍の大きさを差し引いたもの | ||||||||||||
p | 0 | ポケットなし | P | 6 | 4未満 | |||||||
9 | 4以上16未満 | |||||||||||
12 | 16以上36未満 | |||||||||||
24 | 36以上 | |||||||||||
部位 [仙骨部、坐骨部、大転子部、踵骨部、その他 ( )] | 合計 |
※深さ(Depth:d,D)の得点は合計点には加えない。 | ©日本褥瘡学会/2008 |