(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン

 
第1章 褥瘡の概要


褥瘡の深達度分類

現在用いられる分類の原型である1975年Sheaの分類以降、褥瘡の深達度分類は多種類が発表されている。日本褥瘡学会ではこれらの分類を総合的に比較検討した結果、2002年版DESIGN分類の「深さ」項目においてd0からD5に至る6段階評価を採用し、さらに2008年改訂版のDESIGN-Rにおいては判定不能例を“U”として独立追加した計7段階評価に変更された。
一方、国際的には現在、米国褥瘡諮問委員会(National Pressure Ulcer Advisory Panel:NPUAP)のステージ分類12、ヨーロッパ褥瘡諮問委員会(European Pressure Ulcer Advisory Panel:EPUAP)のグレード分類34が一般的に使用されている()。それぞれステージ、グレードI-IVまでは日本のDESIGNのd1-D4ともきわめて似通った内容である一方、定義としては微妙に異なる点もある。例えばステージIVとグレードIVでは、全層欠損の有無の点で明らかな相違がある。また、NPUAPステージ分類の最新の2007年改訂版では、前章に述べた「DTI」と「判定不能」が追加されているのも他の分類と大きく異なる点である。このように分類の定義の差異がある以上、本書のエビデンス解説部分では引用文献がいずれの分類を使用したかに基づくべきと考え、深達度の表記は「ステージ」「グレード」を原典に応じて使い分けている。

表 DESIGN-R深さ項目、NPUAPステージ分類(2007年改訂版)、EPUAPグレード分類の比較
  space DTI疑い d1 d2 D3 D4と5 U
DESIGN-R
深さ
(2008)
d0
皮膚損傷・発赤なし
 d1
持続する発赤
d2
真皮までの損傷
D3
皮下組織までの損傷
D4
皮下組織を越える損傷
D5
関節腔・体腔に至る損傷
U
深さ判定が不能な場合
NPUAP
分類
(2007改訂版)
   DTI疑い
圧力および/またはせん断力によって生じる皮下軟部組織の損傷に起因する、限局性の紫または栗色の皮膚変色、または血疱
ステージI
通常骨突出部位に限局する消退しない発赤を伴う、損傷のない皮膚。暗色部位の明白な消退は起こらず、その色は周囲の皮膚と異なることがある
ステージII
スラフを伴わない、赤色または薄赤色の創底をもつ、浅い開放潰瘍として現れる真皮の部分欠損。破れていないまたは開放した/破裂した血清で満たされた水疱として現れることがある
ステージIII
全層組織欠損。皮下脂肪は確認できるが、骨、腱、筋肉は露出していないことがある。スラフが存在することがあるが、組織欠損の深度が分からなくなるほどではない。ポケットや瘻孔が存在することがある
ステージIV
骨、腱、筋肉の露出を伴う全層組織欠損。黄色または黒色壊死が創底に存在することがある。ポケットや瘻孔を伴うことが多い
判定不能
創底で、潰瘍の底面がスラフ(黄色、黄褐色、灰色または茶色)および/またはエスカー( 黄褐色、茶色、または黒色)で覆われている全層組織欠損
EPUAP
分類
(1998)
  グレードI
損傷のない消退しない皮膚の発赤。特に、より暗い皮膚を持つ人においては、皮膚の色の変化、暖かさ、浮腫、硬結あるいは硬さは指標として使えるかもしれない
グレードII
表皮、真皮あるいはその両方を含む部分層皮膚欠損。潰瘍は表在的で、臨床的には表皮剥離や水疱として存在する
グレードIII
筋膜下には達しないが、皮下組織の損傷あるいは壊死を含む全層皮膚欠損
グレードIV
全層皮膚欠損の有無にかかわらず、広範囲な破壊、組織の壊死、あるいは筋肉・骨あるいは支持組織に及ぶ損傷
 


文献
1. NPUAPホームページ http://www.npuap.org/pr2.htm 参照
2. 日本褥瘡学会編:褥瘡の深達度分類.在宅褥瘡予防・治療ガイドブック.日本褥瘡学会.2008;26-7.
3. EPUAPホームページ http://epuap.org/gltreatment.html 参照
4. 真田弘美:褥瘡予防・治療レポート EPUAP褥瘡予防・治療ガイドライン EPUAP褥瘡予防・治療ガイドラインを翻訳するにあたって.Expert Nurse. 2004;20(11):125-30.

 

 
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