(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン

 
褥瘡予防・管理ガイドライン
Quick Reference


推奨度
A 行うよう強く勧められる
B 行うよう勧められる
C1 行うことを考慮しても良いが、十分な根拠がない
C2 根拠がないので、勧められない
D 行わないよう勧められる
*根拠とは臨床試験や疫学研究による知見を指す。


慢性期褥瘡の局所治療

浅い褥瘡(d)の場合

1.発赤、水疱、びらん・浅い潰瘍の治療
項目 推奨 推奨度
CQ1 発赤にはどのような外用薬を用いたらよいか 創面保護が大切であり、創面が観察できるドレッシング材での被覆を第一選択とするが、外用薬ではアズレン、酸化亜鉛を使用してもよい。 C1
CQ2 発赤にはどのようなドレッシング材を用いたらよいか 創面保護を目的として、ポリウレタンフィルムを用いてもよい。 C1
仮に真皮に至る創傷へ移行する恐れのある発赤や周囲皮膚の損傷が危惧される場合には、機能別分類Aの透明で薄いハイドロコロイドも選択肢として考慮してもよい。 C1
CQ3 水疱の場合にはどのような外用薬を用いたらよいか 水疱は破らずそのまま、破れたときにはドレッシング材による被覆を第一選択とするが、外用薬では創の保護目的にアズレン、酸化亜鉛を使用してもよい。 C1
CQ4 水疱の場合にはどのようなドレッシング材を用いたらよいか 水疱は破らずそのままにし、創面保護を目的として、ポリウレタンフィルムを用いてもよい。 C1
機能別分類Aの透明で薄いハイドロコロイドを用いてもよい。 C1
CQ5 びらん・浅い潰瘍にはどのような外用薬を用いたらよいか 創面が観察できるドレッシング材での被覆を第一選択とするが、外用薬では創面保護を目的にアズレン、酸化亜鉛を用いてもよい。 C1
上皮形成促進を期待して塩化リゾチーム、ブクラデシンナトリウム、プロスタグランジンE1を用いてもよい。 C1
CQ6 びらん・浅い潰瘍にはどのようなドレッシング材を用いたらよいか 保険適用のある機能別分類Aのハイドロコロイド、キチン、ハイドロジェルのシートタイプで潰瘍周囲の健康な皮膚面を含めて被覆してもよい。 C1
機能別分類B1のハイドロコロイド、ハイドロポリマー、ポリウレタンフォーム、キチン、ハイドロジェルを使用してもよいが保険適用外である。 C1


深い褥瘡(D)の場合

1.Nをnにする 壊死組織の除去
項目 推奨 推奨度
CQ1 外科的デブリードマンはどのように行えばよいか 壊死組織と周囲の健常組織との境界が明瞭となった時期に外科的デブリ-ドマンを行ってもよいが、事前の全身状態をよく評価してから行うようにする。 C1
CQ2 どのような外用薬を用いたらよいか 壊死組織除去作用を有するカデキソマー・ヨウ素、デキストラノマー、フィブリノリジン・デオキシリボヌクレアーゼ配合剤、ブロメライン、スルファジアジン銀、硫酸フラジオマイシン・トリプシンを用いてもよい。 C1
CQ3 どのようなドレッシング材を用いたらよいか 適切な時期を選んだ外科的切除、壊死組織除去作用を有する外用薬の使用を第一選択とするが、これらの選択が難しい場合には、自己融解作用により壊死組織除去環境を創に形成する機能別分類B2のハイドロジェルを使用してもよい。 C1
CQ4 どのように洗浄を行えばよいか 創傷の処置を行う際には洗浄を行う。洗浄液は、消毒薬などの細胞毒性のある製品の使用は避け、生理食塩水または蒸留水、水道水を使用してもよい。 C1
創傷表面の壊死組織や残留物等を除去するために圧をかけて行ってもよい。 C1
創傷表面から壊死組織や残留物等を除去するために十分な量を用いて行ってもよい。 C1
[ポケットのある場合]ポケット内部の壊死組織や残留物等を除去するために十分な圧をかけて行ってもよい。 C1
CQ5 どのような物理療法があるか 外科的切除、壊死組織除去作用を有する外用薬の使用を第一選択とするが、付加価値のある物理療法として水治療法を行ってもよい。 C1
電気刺激療法を行ってもよい。 C1


2.Gをgにする 肉芽形成の促進
項目 推奨 推奨度
CQ1 どのような外用薬を用いたらよいか 肉芽形成促進作用を有するアルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート、トレチノイントコフェリルを推奨する。 B
塩化リゾチーム、トラフェルミン、ブクラデシンナトリウム、プロスタグランジンE1、幼牛血液抽出物を用いてもよい。 C1
CQ2 どのようなドレッシング材を用いたらよいか 湿潤環境形成により肉芽形成を阻害する要因を排除し、自然な肉芽形成を助長するハイドロコロイド、ポリウレタンフォーム、キチン、ハイドロポリマーを使用してもよい。 C1
過剰な滲出液を吸収し肉芽組織形成環境を創面に保持するアルギン酸塩、ハイドロファイバー®(銀含有製材を含む)を使用してもよい。 C1


3.Sをsにする 創の縮小
項目 推奨 推奨度
CQ1 どのような外用薬を用いたらよいか 創の縮小作用を有するアルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート、トラフェルミン、ブクラデシンナトリウム、プロスタグランジンE1を推奨する。 B
塩化リゾチーム、アズレン、酸化亜鉛、幼牛血液抽出物を用いてもよい。 C1
CQ2 どのようなドレッシング材を用いたらよいか 創からの滲出液を吸収し、創に適切な湿潤環境を形成するアルギン酸塩の使用を推奨する。 B
ハイドロコロイド、ハイドロジェル、ハイドロポリマー、ポリウレタンフォーム、キチン、ハイドロファイバー®(銀含有製材を含む)を創からの滲出液の程度により選択し使用してもよい。 C1
CQ3 どのような場合に外科的治療を行えばよいか [手術適応について]深さが、皮下組織以上に及ぶときには外科的治療(手術療法)を考慮してもよい。 C1
[手術時期について]感染が鎮静化しているときに外科的治療(手術療法)を行うことを考慮してもよい。 C1
CQ4 どのような物理療法があるか 電気刺激療法を推奨する。 B
陰圧閉鎖療法を行ってもよい。 C1
光線療法(近赤外線あるいは紫外線)を行ってもよい。 C1
水治療法を行ってもよい。 C1
高圧酸素療法を行ってもよい。 C1


4.Iをiにする 感染・炎症の制御
項目 推奨 推奨度
CQ1 どのような外用薬を用いたらよいか 感染抑制作用を有するカデキソマー・ヨウ素、スルファジアジン銀、ポビドンヨード・シュガーを推奨する。 B
ポビドンヨード、ヨードホルム、硫酸フラジオマイシン・トリプシンを用いてもよい。 C1
CQ2 どのようなドレッシング材を用いたらよいか 感染抑制作用を有する外用薬の使用を推奨する。もしくは、銀含有のハイドロファイバー®を使用してもよい。 C1
滲出液が多い場合に吸収性の高いアルギン酸塩が用いられることもあるが、感染制御の機能はない。 C2
CQ3 消毒は必要か 洗浄のみで十分であり、通常は必要ないが、明らかな創部の感染を認め、滲出液や膿苔が多いときには洗浄前に消毒を行ってもよい。 C1
CQ4 どのように洗浄を行えばよいか 洗浄液は、消毒薬などの細胞毒性のある製品の使用は避け、生理食塩水または蒸留水、水道水の使用を推奨する。 B
創傷表面の壊死組織や残留物等を除去するために圧をかけて行ってもよい。 C1
創傷表面から壊死組織や残留物等を除去するために十分な量を用い、創傷の深さや面積に応じて調整して行ってもよい。 C1
洗浄液の温度は、体温程度に温めて使用してもよい。 C1
CQ5 どのような場合に外科的治療を行えばよいか 膿汁や悪臭、あるいは骨髄炎を伴う感染創には、外科的デブリードマンを行うことを考慮してもよい。 C1
CQ6 どのような物理療法があるか 電気刺激療法を行ってもよい。 C1


5.Eをeにする 滲出液の制御
項目 推奨 推奨度
CQ1 どのような外用薬を用いたらよいか 滲出液吸収作用を有するカデキソマー・ヨウ素、ポビドンヨード・シュガーを推奨する。 B
デキストラノマーを用いてもよい。 C1
CQ2 どのようなドレッシング材を用いたらよいか ドレッシング材は滲出液を減少させる効果はない。そのため、過剰な滲出液を吸収保持し、創面の湿潤を保ち周囲皮膚の浸軟予防が可能なドレッシング材であるポリウレタンフォームを推奨する。 B
機能別分類B1、Cのキチン、ハイドロファイバー®(銀含有製材を含む)、アルギン酸塩を使用してもよい。 C1


6.Pをなくす ポケットの解消
項目 推奨 推奨度
CQ1 どのような外用薬を用いたらよいか ポケット内に壊死組織が残存する場合はまず創面の清浄化を図る。また、滲出液が多ければポビドンヨード・シュガーを用いてもよい。 C1
少なければトラフェルミン、トレチノイントコフェリルを用いてもよい。しかし、改善しなければ、外科的治療あるいは物理療法を検討する。 C1
CQ2 どのようなドレッシング材を用いたらよいか 残存する壊死組織の融解排除を促進させ、肉芽形成を助長させるドレッシング材を使用する。滲出液が多ければアルギン酸塩、ハイドロファイバー®(銀含有製材を含む)を使用してもよい。なお、ポケット内にドレッシング材を深く挿入したり、圧迫するような用い方にならないように注意する。また、壊死組織が残存する場合はデブリードマンを優先する。 C1
CQ3 どのような場合に外科的治療を行えばよいか 保存的治療を行って改善しないポケットは、外科的に切開することを考慮してもよい。 C1
CQ4 どのような物理療法があるか ポケット内に壊死組織がない場合には、前後壁を接着させる目的で陰圧閉鎖療法を行ってもよい。 C1

 

 
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