(旧版)軟部腫瘍診療ガイドライン 2012
第6章 分子生物学的診断
■ Clinical Question 1
診断に有用な免疫組織化学的検査は
要約
【Grade B】
免疫組織化学的検査は,軟部腫瘍の鑑別のために有用なものもあるが,必ずしも特異的でないことを念頭に置いて判断する必要がある.
解説
免疫組織化学的診断に使用される主なマーカーと軟部腫瘍の関連をまとめると表1のようになる.ただし,病理組織診断と一致しないものも少なくないので,あくまで病理組織診断の補助として用いるべきである.
上皮性腫瘍と非上皮性の軟部腫瘍との鑑別にはvimentinやcytokeratin,EMAなどが用いられることが多い.Vimentinは多くの軟部腫瘍が陽性を呈し,上皮性腫瘍では陰性となる.CytokeratinとEMAは上皮性腫瘍で陽性になるが,軟部腫瘍では上皮様の性格をもつ滑膜肉腫,類上皮肉腫が陽性を呈しやすい.
筋原性組織のマーカーとしてはdesmin,myoglobin,myogenin,MyoD1,α-smooth muscle actin,HHF-35などが用いられる.Desmin,HHF-35は横紋筋,平滑筋の両者で陽性となり,平滑筋肉腫や横紋筋肉腫,良性の平滑筋腫,結節性筋膜炎などでも陽性となることが多い.myogenin,MyoD1,myoglobinは横紋筋に特異的なマーカーで,特にmyogeninは横紋筋肉腫で感度と特異性が高く診断に有用である(T2F12433,EV level IV).α-smooth muscle actinは平滑筋に特異的なマーカーであるが,グロムス腫瘍(TF00927,EV level V)でも陽性になることが多い.
血管内皮系マーカーではFactor VIII,CD34,CD31などが用いられる.血管腫,血管内皮腫,血管肉腫などで陽性になるものが多いが,CD34は隆起性皮膚線維肉腫(T2F12431,EV level V),孤在性線維性腫瘍などの線維性腫瘍(T2F12435,EV level V)や,類上皮肉腫,神経鞘腫,神経線維腫などでも陽性になることが多い.
神経系マーカーとしてはS-100 protein,synaptophysin,NSEなどが用いられるが,S-100 proteinは神経鞘腫,神経線維腫,悪性末梢神経鞘腫瘍などの神経原性腫瘍の他に淡明細胞肉腫,脂肪肉腫,横紋筋肉腫,滑膜肉腫などでも陽性となることがある.Synaptophysin,NSEは骨外性Ewing肉腫で陽性となる.
その他のマーカーとしては,HMB-45が淡明細胞肉腫で陽性になることが多い(TF00457,EV level V).MIC2(CD99)はEwing肉腫,横紋筋肉腫,滑膜肉腫で陽性になるものがある.Bcl-2は特異的ではないものの滑膜肉腫や孤在性線維性腫瘍,隆起性皮膚線維肉腫で陽性であることが多い[(T2F12435,EV level V),(T2F03174,EV level V)].滑膜肉腫では,近年TLE1がこれらのマーカーよりも感度,特異度が高いとの報告がなされている(T2F12437,EV level V).
表1 | 主な軟部肉腫と診断的意義の大きいマーカー |
![]() |
上皮性腫瘍と非上皮性の軟部腫瘍との鑑別にはvimentinやcytokeratin,EMAなどが用いられることが多い.Vimentinは多くの軟部腫瘍が陽性を呈し,上皮性腫瘍では陰性となる.CytokeratinとEMAは上皮性腫瘍で陽性になるが,軟部腫瘍では上皮様の性格をもつ滑膜肉腫,類上皮肉腫が陽性を呈しやすい.
筋原性組織のマーカーとしてはdesmin,myoglobin,myogenin,MyoD1,α-smooth muscle actin,HHF-35などが用いられる.Desmin,HHF-35は横紋筋,平滑筋の両者で陽性となり,平滑筋肉腫や横紋筋肉腫,良性の平滑筋腫,結節性筋膜炎などでも陽性となることが多い.myogenin,MyoD1,myoglobinは横紋筋に特異的なマーカーで,特にmyogeninは横紋筋肉腫で感度と特異性が高く診断に有用である(T2F12433,EV level IV).α-smooth muscle actinは平滑筋に特異的なマーカーであるが,グロムス腫瘍(TF00927,EV level V)でも陽性になることが多い.
血管内皮系マーカーではFactor VIII,CD34,CD31などが用いられる.血管腫,血管内皮腫,血管肉腫などで陽性になるものが多いが,CD34は隆起性皮膚線維肉腫(T2F12431,EV level V),孤在性線維性腫瘍などの線維性腫瘍(T2F12435,EV level V)や,類上皮肉腫,神経鞘腫,神経線維腫などでも陽性になることが多い.
神経系マーカーとしてはS-100 protein,synaptophysin,NSEなどが用いられるが,S-100 proteinは神経鞘腫,神経線維腫,悪性末梢神経鞘腫瘍などの神経原性腫瘍の他に淡明細胞肉腫,脂肪肉腫,横紋筋肉腫,滑膜肉腫などでも陽性となることがある.Synaptophysin,NSEは骨外性Ewing肉腫で陽性となる.
その他のマーカーとしては,HMB-45が淡明細胞肉腫で陽性になることが多い(TF00457,EV level V).MIC2(CD99)はEwing肉腫,横紋筋肉腫,滑膜肉腫で陽性になるものがある.Bcl-2は特異的ではないものの滑膜肉腫や孤在性線維性腫瘍,隆起性皮膚線維肉腫で陽性であることが多い[(T2F12435,EV level V),(T2F03174,EV level V)].滑膜肉腫では,近年TLE1がこれらのマーカーよりも感度,特異度が高いとの報告がなされている(T2F12437,EV level V).
文献