有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン
VI.考察 |
7.精密検査に関する問題点
わが国においては、すでに便潜血検査免疫法による大腸がん検診が広く行われている。ただし、その実施状況からは、いくつかの問題点が指摘できる。
第一は、他のがん検診に比べて、精検受診率が低いことである。平成14年度地域医療・老人保健事業報告によると、大腸がん検診の精検受診率は、集団検診67.3%、個別検診48.3%であり、胃がん検診の精検受診率(集団検診78.5%、個別検診69.5%)を下回る115)。同年の、日本消化器集団検診学会による全国集計でも、胃がんの精検受診率68.4%に比べ、大腸がん検診では60.7%にとどまっている116)。他のがん検診に比べ、大腸がん検診では、精密検査実施体制や、精密検査の受診勧奨などのシステムが未整備の状況にある。今後、がん医療の均てん化や医療計画の見直しなどを踏まえ、精検受診のための医療資源の確保と適正な配分が検討されるべきであろう。また、それに伴い、要精検者への情報提供も推進されなくてはならない。
第二は、大腸がん検診のなかでも、個別検診の精検受診率が特に低いことである。平成14年度地域医療・老人保健事業報告と同様に、日本消化器集団検診学会による全国集計でも、精検受診率は地域検診72.0%に対して、個別検診は59.0%にすぎない115,116)。また、地域検診に比べ、職域検診においても精検受診率は40.3%と低い。個別検診は、受診者の利便性に考慮し、かかりつけ医ベースでの受診機会の拡大を目的としたものだが、精検受診率は低い。また、職域において、がん検診は法定外検診であることから、事後指導が不十分な可能性が高い。かかりつけ医や産業医の立場や機能をいかし、1次検診受診後の指導を徹底することで、精検受診率を改善することが望まれる。このためには、がん検診における精密検査のあり方について理解を深めるため、かかりつけ医や産業医に対する啓発・教育とともに、受診者への情報提供のための支援対策も検討されなくてはならない。