(旧版)尿路結石症診療ガイドライン 2013年版
3 再発予防
CQ 35
サイアザイドによる再発予防効果はあるか?
また,投与期間はどのくらい必要か?
サイアザイドによる再発予防効果はあるか?
また,投与期間はどのくらい必要か?
推奨グレード B |
サイアザイドは尿中カルシウム排泄量を減少させることから,カルシウム結石の再発予防に有効である。 |
推奨グレード B |
サイアザイドは,高カルシウム尿症と正カルシウム尿症のカルシウム結石の再発予防に有効である。 |
推奨グレード B |
サイアザイドによるカルシウム結石の予防には,5 年程度の長期投与における有用性が高い。 |
解説
総じて尿中カルシウム排泄抑制機序は,まだ十分には明らかでない。サイアザイドによる直接作用は,遠位尿細管でナトリウム再吸収を阻害し,ナトリウム利尿を生じることである。これによって細胞外液量および糸球体濾過量が減少し,引き続き透過性の高い近位尿細管では,ナトリウムの再吸収が亢進し,同時にカルシウム再吸収も促されるものと考えられている。あるいは,遠位尿細管において通常は併行して動くナトリウムとカルシウムが解離して,サイアザイドは選択的にナトリウム再吸収を阻害するとの見解もある。
本剤の作用機序からみて,高カルシウム尿症を伴う結石患者,とりわけ腎漏出性高カルシウム尿症患者に適応があると考えられる。
現在のところ,実際の臨床の場でのサイアザイドの使用は,頻回に再発するカルシウム結石の患者に,良い適応とすれば高カルシウム尿症の患者を中心に,1 mg/day からの開始がよいと思われる。
しかし,どの程度の期間サイアザイドを投与すればよいのか,サイアザイドは結石再発の抑制に本当に有効なのか,はっきりした答えは少ない。
しかし,この考えに否定的な向きもある。Pak ら2)は,腎漏出性高カルシウム尿症では,サイアザイド投与により尿中カルシウム値は正常域に維持されたのに対して,腸管吸収型では一旦低下した尿中カルシウム値が数年後には再び高値になったことを報告している。さらにYendtら3)の報告によると,高カルシウム尿症の有無,そのタイプにかかわらず,結石再発率の減少効果が得られたとしている(N=346,観察期間5 年)。
総じて尿中カルシウム排泄抑制機序は,まだ十分には明らかでない。サイアザイドによる直接作用は,遠位尿細管でナトリウム再吸収を阻害し,ナトリウム利尿を生じることである。これによって細胞外液量および糸球体濾過量が減少し,引き続き透過性の高い近位尿細管では,ナトリウムの再吸収が亢進し,同時にカルシウム再吸収も促されるものと考えられている。あるいは,遠位尿細管において通常は併行して動くナトリウムとカルシウムが解離して,サイアザイドは選択的にナトリウム再吸収を阻害するとの見解もある。
本剤の作用機序からみて,高カルシウム尿症を伴う結石患者,とりわけ腎漏出性高カルシウム尿症患者に適応があると考えられる。
現在のところ,実際の臨床の場でのサイアザイドの使用は,頻回に再発するカルシウム結石の患者に,良い適応とすれば高カルシウム尿症の患者を中心に,1 mg/day からの開始がよいと思われる。
しかし,どの程度の期間サイアザイドを投与すればよいのか,サイアザイドは結石再発の抑制に本当に有効なのか,はっきりした答えは少ない。
再発予防効果の検討
サイアザイドによる結石の再発予防についてのRCT がある。この検討では,サイアザイドとプラセボが二重盲検法で用いられ,観察期間は1 年と比較的短く対象の数も24 と限られているが,両者の間で再発予防効果に有意差を認めなかったとしている1)。
しかし,この考えに否定的な向きもある。Pak ら2)は,腎漏出性高カルシウム尿症では,サイアザイド投与により尿中カルシウム値は正常域に維持されたのに対して,腸管吸収型では一旦低下した尿中カルシウム値が数年後には再び高値になったことを報告している。さらにYendtら3)の報告によると,高カルシウム尿症の有無,そのタイプにかかわらず,結石再発率の減少効果が得られたとしている(N=346,観察期間5 年)。
投与期間の検討
結局のところ,サイアザイドの投与期間については,一定の評価は困難であるが,副作用がなければ,最低でも3 年以上は続ける必要があると考えられる4,5)。というのも4〜5 年の観察期間の研究では,サイアザイド投与群に結石再発の抑制効果が認められているが,1 年程度の短期観察では,その効果を疑問とする報告が散見されるからである。
クエン酸製剤の併用
サイアザイド投与により結石促進物質であるカルシウムとシュウ酸の排泄量は減少したが,低カリウム血症により結石抑制物質のクエン酸の排泄量が低下することがある。これに対しては,サイアザイドにクエン酸製剤を併用することで,クエン酸の排泄低下を防ぐことができ,さらに有用であると考えられる。
参考文献 |
1) | Sholz D, Schwille PO, Sigel A. Double-blind study with thiazides in recurrent calcium lithiasis. J Urol. 1982;128:903-7. |
2) | Pak CY. Expert Opin Pharmacother. 2008;9(9):1509-18. |
3) | Yendt ER, Cohanim M. Prevention of calcium stones with thiazides. Kidney Intern. 1978;13: 397-409 |
4) | Ettinger B, Citron JT, Livermore B, et al. Chlorthalidone reduces calcium oxalate calculous recurrence but magnesium hydroxide does not. J Urol. 1988;139:679-84. |
5) | Scott R, Lewi H. Terapeutic management of upper urinary tract stone disease in 172 subjects. Urology. 1989;33:277-81. |