尿路結石症診療ガイドライン 2013年版

 
2 診断・治療
CQ 24
PNL で使用できる破砕機器は何か?
推奨グレード
A
PNL で使用できる破砕機器には,①電気水圧破砕装置,②超音波破砕装置,③圧縮空気式破砕装置,④レーザー破砕装置,⑤圧縮空気・超音波複合破砕装置(pneumaticsystems and ultrasound combination,2013 年8 月現在薬事法未承認)がある。
解説
① 電気水圧破砕装置(electrohydraulic systems)
水中で高電圧放電を起こすと,電極の周囲の水が瞬間的に気化し気泡を形成する。この体積の急激な膨張が衝撃波を発生させ,結石を破砕する。flexible electrohydraulic lithotripsy probeはsemi-rigid やflexible な腎盂鏡使用時に利用しやすい。もし④が利用できない場合には,電気水圧破砕装置はあらゆる種類の結石を破砕することができる。シスチンやシュウ酸カルシウム一水和物などの硬い結石をも破砕可能である。しかし,周囲組織へのダメージは増加するので,注意深い症例の選択が必要である。内視鏡の近くで放電すると内視鏡自体が損傷することもある。
② 超音波破砕装置(ultrasound systems)
超音波振動を発生させプローブにこれを伝え,この振動により砕石する。砕石を行いながら砕石片を吸引できる。プローブ自体が熱をもつため,組織に接触させないよう砕石する必要がある。硬性腎盂鏡使用時に利用できる。
③ 圧縮空気式破砕装置(pneumatic systems)
圧縮空気をハンドピース内に送り込み,これが金属の弾を押し出し,金属製の砕石プローブを前後に動かし砕石する。PNL の際に,②・④と並び頻繁に利用されている。硬性腎盂鏡使用時に利用できる。砕石力は強く,プローブ自体が熱をもたないので組織障害性は少ない。④に比較し手術時間が短い,コストが抑えられる利点があるが,術中合併症は多い傾向がある1)
④ レーザー破砕装置(laser systems)
あらゆる種類の結石の治療に最も効率的なレーザー破砕装置は,ホルミウム ・ヤグレーザーである。flexible な腎盂鏡使用が増加する現状において,ホルミウム ・ヤグレーザーの重要度は増している。flexible な腎盂鏡でしか観察できない腎杯結石にもレーザー破砕装置が適している。ホルミウム ・ヤグレーザーは,水中で吸収されやすく(3 mm)組織浸透が少ない(0.4 mm)ことにより,温度によるダメージが少なくより安全である。70W のhigh-power ホルミウム ・ヤグレーザーでは30W のlow-power に比較し,術中合併症を増やすことなく,また術後の腎機能回復を遅らせることなく有意に手術時間を短縮することができた2,3)。ホルミウム ・ヤグレーザーは組織の切開・止血も可能であり,尿管狭窄を伴う結石治療には特に有用性が高い。逆に,尿管に全周性に照射が行われると尿管狭窄を起こしうる。ガイドワイヤーに照射が行われると損傷することもある。他のレーザー破砕装置は現在評価中であるが,有用性・安全性がホルミウム ・ヤグレーザーよりも優れている段階にはない。
⑤ 圧縮空気・超音波複合破砕装置(pneumatic systems and ultrasound combination)
3.3 mm の超音波プローブの中央に1.0 mm の圧縮空気式のプローブが装着されている。圧縮空気式のプローブは約1 mm 突出している。硬性腎盂鏡使用時に利用できる。In vitroにおける②・③との比較では,first fragmentation までの時間は25〜200 倍早くなった。1 分間で砕石された結石量は1.5〜4 倍大きくなった。50%砕石までの時間は30〜50%短縮された4)。また,②との治療効果の比較では,手術時間,stone-free rate,complication rate も優れていた5)。②に比較しコストが高いが,砕石効果は同等であるとの報告もある6)。③との比較では,有意に手術時間を短縮することができた7)。2013 年8 月現在,日本では薬事法未承認である。
参考文献
1) Malik HA, Tipu SA, Mohayuddin N, et al. Comparison of holmium:Yag laser and pneumatic lithoclast in percutaneous nephrolithotomy. J Pak Med Assoc. 2007;57:385-7.
2) Chen S, Zhu L, Yang S, et al. High- vs low-power holmium laser lithotripsy:a prospective, randomized study in patients undergoing multitract minipercutaneous nephrolithotomy. Urology. 2012;79:293-7.
3) Sun Y, Gao X, Zhou T, et al. 70 W holmium:yttrium-aluminum-garnet laser in percutaneous nephrolithotomy for staghorn calculi. J Endourol. 2009;23:1687-91.
4) Hofmann R, Weber J, Heindenreich A, et al. Experimental studies and first clinical experience with a new Lithoclast and ultrasound combination for lithotripsy. Eur Urol. 2002;42:376-81.
5) Pietrow PK, Auge BK, Zhong P, et al. Clinical efficacy of a combination pneumatic and ultrasonic lithotrite. J Urol. 2003;169:1247-9.
6) Lehman DS, Hruby GW, Phillips C, et al. Prospective randomized comparison of a combined ultrasonic and pneumatic lithotrite with a standard ultrasonic lithotrite for percutaneous nephrolithotomy. J Endourol. 2008;22:285-9.
7) Zhu Z, Xi Q, Wang S, et al. Percutaneous nephrolithotomy for proximal ureteral calculi with severe hydronephrosis:assessment of different lithotriptors. J Endourol. 2010;24:201-5.

 


 

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