(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン
第XIII章 特殊な胆道炎
2. 高齢者の胆道炎
Q112. 高齢者の急性胆嚢炎に対する手術治療のタイミングは?
高齢者の急性胆嚢炎に対する早期手術(推奨度B)
急性胆嚢炎に対する適切な手術時期に関しては,RCTにより早期手術(発症より3〜4日)が望ましい(「第X章/1./Q87.急性胆嚢炎における緊急あるいは早期の手術やドレナージの適応基準は?」参照)。 その一方で,高齢者の急性胆嚢炎の手術時期に関しては早期手術と待機手術の両論が存在し,retrospectiveに検討した論文が多い。 70歳以上の急性胆嚢炎で早期の胆嚢摘出術の方が成績が予後良好とされている(レベル3b)13)。 一方で,70歳以上で緊急手術として胆嚢摘出術を行った症例は,敗血症を合併しやすく死亡率が10% と高いことから(レベル4)14),緊急手術は避けるべきとしている。 70歳以上の急性胆嚢炎症例は,まず最初の治療としてPTGBDを施行し全身状態の改善をみてから手術を行うことが術後の死亡率や合併症発症率を低下させることや(レベル4)12),70歳以上の症例はまずPTGBDを施行し,総胆管結石などの併存疾患の精査・治療を先行させ,炎症の消退を待ってから待機的に胆嚢摘出術を推奨されている(レベル4)15)。 その一方で,PTGBD後の早期手術群は,PTGBD未施行群やPTGBD施行後の待機手術群と比較して,術中胆道造影の成功率が高く,開腹手術への移行率が低く,手術時間が短く最も優れているとされている(レベル3b)16)。 このように,高齢者の急性胆嚢炎の手術時期に関しては,いまだ結論が出ていない。若年者と比較して高齢者は全身状態不良や合併症が多く,総胆管結石合併例も多いことから,十分な全身検索を行ってから手術を施行すべきである。 緊急,早期,待機手術に関しては「第X章/1./Q87.急性胆嚢炎における緊急あるいは早期の手術やドレナージの適応基準は?」を参照。